現在、最新映画出演作の『金子差入店』が公開中の真木よう子さん(42歳)。刑務所や拘置所に収容された人々への差し入れを代行する「差入店」を営む一家を見つめた作品で、「差入店」を営む金子真司(丸山隆平)を支える妻・美和子を演じています。

 1999年に無名塾で舞台を踏んでから、キャリア25年を過ぎた女優の真木に話を聞くと、家族から「40歳って人生の折り返しだから頑張れよ」と言われた際のエピソードが。それをポジティブに捉えた真木さんは、「最近、女優だけじゃなくてもいいかな」と考えているといいます。

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「差入店」の存在は今回初めて聞いた

——「差入店」の存在はご存じでしたか?

真木よう子(以下、真木):
初めて聞きました。存在を知って、まずは「差し入れをお願いします」という家族の気持ちは届いていると思いましたが、本編にも出てくるように手紙の代読があったり、離婚届けを代わりに持っていったりと、いいことだけじゃないんですよね。あと、差し入れといっても持っていけないものが多くて、ご家族の方にはそうした知識がないので、そういう点でも必要な存在だなと感じました。

——美和子は、どんな人生を送ってきた女性なのだろうと思いを馳せたくなるキャラクターでした。根っこに強さを感じましたが、真司と出会ったり、子どもを出産したことで強くなっていったのか、それとも以前から強さを持った人物だったのか、真木さんはどう感じましたか?

真木:
彼女を作っている基盤には、おそらく子どもが生まれる前から強さがあったと思います。途中、真司に(お母さんとは)「生きているときにしか会えないよ」と言う場面がありました。そこで彼女はきっとお母さんを亡くしているんじゃないかと感じましたし、一層、いまこの時間を大切にという気持ちが強いのだろうと思いました。そこに加えて、母になって守るものができた。ただ彼女も決して完ぺきではない。今回の現場で、私は「ここでこう言うかな」と感じるところが結構ありました。

自分の感覚と美和子は異なるところがあった

「早く退場させてくれ」と思うドラマも…真木よう子(42)が明かす「若い頃の“苦悩の日々”」
(C) 2025「金子差入店」製作委員会
——たとえばどこですか。

真木:
息子が学校でいじめられていると聞いた真司に「お前知ってたんだろ」と言われたとき。
彼女は冷静さを保っているんです。もし自分だったら、彼女のようにはできないなと。

——もし真木さんだったら、真司のように学校に乗り込んでしまうかも?

真木:
私なら絶対、乗り込みますね(笑)。あと、真司がすごく追い詰められた様子を見せる台所のシーン。あそこで私はすごく心配だったから駆け寄っていったんですけど、監督から「駆け寄らないで静かに近寄って」と演出がありました。自分の感覚と美和子は異なるところがいくつもあったんです。

——そうなんですね。

真木:
でも完成した作品を観たら、完ぺきではない不器用な大人たちの支え合いにリアルさを感じて、「なるほど」と思いました。学校で真司に話をする場面で、彼女のセリフに「こんなこと」と出てくるんです。そこも個人としてはすごく引っかかったんですけど、でもああいう場で出てくる言葉って、完ぺきじゃないよなと納得しました。

若い頃は「早く退場させてくれ」と思うようなドラマも?

「早く退場させてくれ」と思うドラマも…真木よう子(42)が明かす「若い頃の“苦悩の日々”」
(C) 2025「金子差入店」製作委員会
——真木さんご自身のお話も聞かせてください。現在、成功されている真木さんですが、俳優業を辞めたいと感じるような瞬間や辛い時期はこれまでにありましたか?

真木:
しょっちゅう思ってます。全部が全部素晴らしい現場なわけではないし、素晴らしい脚本なわけではない。
特に若い頃は、自分で作品を選べるわけでもなく、「早く退場させてくれ」と思うようなドラマもありました。

——(苦笑)。

真木:
その中で何とか頑張ってました。だからまあ、辞めたいというほどのことではなくても、日々、「嫌だな、でも頑張る」といった気持ちはありましたね。

——「でも頑張る」と思えたのは。

真木:
やっぱり“演じる”という役者の部分は、自分が本当にやりたかったことなので。現場に行って、お芝居しているといろんな人になれるわけですから、そこを一生懸命やって続けていると、やりがいのある役が来たりする。その瞬間が幸せだから。それに過酷なことがあっても、いい作品を作ろうと思ってやっていたら、結局嫌な思い出にはならないんです。

これまで“女優さん”をずっとやってきたけれど

——キャリアを重ねてきて変化はありますか?

真木:
40歳を過ぎて、父から「40歳って人生の折り返しだから頑張れよ」と言われました。そのときに、「そっか、折り返しか」と思ったのと同時に、0歳からのスタートと比べると、「今はこれだけの知識やスキルを身に着けてのスタートなんだ」と。なんでもできるんじゃないかとポジティブに思えたんです。

——なるほど。
たしかにそうですね。

真木:
第二の人生のスタートだと考えたら、最近、女優だけじゃなくてもいいかなとも思っています。これまで“女優さん”をずっとやってきて、旬と呼ばれるときもあったし、美しいと呼ばれるときもありました。でも今はそういうことよりも、ちょっと違う道も歩いてみたいという欲が出てきました。せっかく折り返し地点で、しかもこれだけ大人になっているんだから、いろいろやれるんじゃないかなと。

——アドバンテージを持った上でのスタートだと。ステキな考えですね。具体的に女優業以外でもやりたいことがあるのでしょうか。

真木:
いろいろあって。周りにはナイショにしてるんですけど、自分でちょっとググったりとかはしています。

SNSでのファンの声はすごく力になっている

「早く退場させてくれ」と思うドラマも…真木よう子(42)が明かす「若い頃の“苦悩の日々”」
(C) 2025「金子差入店」製作委員会
——SNSをされていますが、そこも新しい挑戦になっていますか?

真木:
挑戦というか、私のことを好きで応援してくださる方というのが一定数いるので、繋がりたいんです。そこからいただく勇気って、すごい力になるんです。
なので、完全オープンにするよりも会員の方向けにインスタライブで素の私を見せるとか、信頼できる方との繋がりを深くできる場にしています。

——第二の人生で始めようとしていることも気になりますが、「女優だけじゃなくて」とのことですし、これからも女優としての真木さんにも期待しています。

真木:
はい。もちろん女優としても続けていきたいと思っていますし、年相応の役をやりたいと思っています。お母さんの役とかでも、いろんないい作品がありますし、海外作品のリメイクをやってみたいといった気持ちもあります。そこにプラスして、ちょっと違う扉も開けたらなと思っています。

<取材・文/望月ふみ>

【望月ふみ】
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi
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