大人向けのメニューなのだから当然といえば当然なのだが、とてつもなく罪悪感を感じていた。「次こそは食べ切ろう」と決意し、半分残しから三分の一残しへと、徐々に残す量を減らしていき、10歳くらいの頃にはついに完食できるようになった。その結果、見事な肥満児となった。
30代に突入してから食欲が止まらない
それから20年。「30歳を過ぎると食欲が落ちて少食になる」とよく言われるが、筆者の食欲は止まることを知らない。いまだにご飯の量が選べるなら大盛りにし、ラーメンも替え玉をする。回転寿司に行けば20皿以上は平気で平らげてしまうため、ひとりで会計が1万円を超えたこともある。このままでは食費で破綻してしまう……。自炊すればよいのだが、この国の外食チェーンはどこも美味しい。それに比べると自分で作った食事なんてカスだ。おまけに、時間と労力とお金をかけた割に、ほんの少ししか作れない。
そのため外食という選択肢を選んでいるが、さすがに毎日際限なく食べていると、食後に大きな不安が襲ってくる。
そこで最近は「2000円まで」というルールを設けた。
ただ、値段の上限を設けることで、組み合わせに創意工夫が生まれ、ひとりの食事でも食欲も楽しみも満たされる。そんなわけで、2000円という縛りを設けて、さまざまな外食チェーンで欲望のままに飯を食らいたい。
2000円で大満足の組み合わせ
筆者が住む吉祥寺は、意外と夜に空いている店が少ない。ちなみに、ここでいう「夜」とは22時過ぎを指す。

「日高屋で一番美味しいメニュー」を実食


濃い味付けの肉料理が2つもあると、もう1杯ご飯をお代わりしたくなるところだが、せっかくならさまざまな食感を味わいたい。そこで汁なしラーメンが活きてくる。
“外食時ならでは”のラーメンを選ぶべき

近い値段で「野菜たっぷりタンメン」という選択肢もある。しかし、わざわざ外食で野菜を食べたいわけではない。そこで汁なしラーメンを選ぶのだ。
量が多く、味付けはシンプルなため、米だけでは吸収できなかった生姜焼き、やきとり、そして濃すぎるスープとザーサイをつまみに麺をすする。
そもそも米と麺の両方を一気に食べる罪悪感はあるが、平らげたときには「よく食べたな」という多幸感で満たされる。
ダメ押しのポテトフライがキく

通常、ポテトフライは前菜として機能するが、揚げ物のため、ほかのメニューを食べている途中で提供されることが多い。しかし、それがいいのだ。
これは誰しも経験があると思うが、定食とラーメンを平らげたあと、「もうちょっとだけ食べたいな」と思うこともあるだろう。その欲を皮付きポテトフライが満たしてくれる。
提供された直後は揚げたてで熱すぎて食べにくいが、少し冷ませば食べごろになる。また、ケチャップも考えられないほど濃い味なので、箸が止まらない。
ここまで生姜焼きと汁なしラーメンを食べてきたため、口は和食と中華の状態になっている。それを一気に変えてくれるのが、このポテトフライ。「バリエーション豊かな食事だ」と脳が判断し、満足感と残りの食欲を満たしてくれるのだ。
2000円分注文するときの注意点は…

もし昼に食べるのであれば、汁なしラーメンはやめて、そら豆(220円)とイワシフライ(280円)という選択肢もありだ。
日高屋のそら豆は笑ってしまうほど味が濃いため、おかずになるし、イワシフライはとにかく大きい。正直、ご飯1杯では足りないくらいだ。
注意点としては、カウンター席や2人がけのテーブル席だと、これだけ頼むとテーブルからはみ出してしまうことだ。できれば入店の際に「たくさん食べます」と事前に伝えて、広めの席に通してもらおう。
そんな筆者は現在172センチの93キロ。健康診断には4年ほど行っていない……。次は、どのお店に行こうか。
<TEXT/千駄木雄大>
【千駄木雄大】
編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。出版社に勤務する傍ら、「ARBAN」や「ギター・マガジン」(リットーミュージック)などで執筆活動中。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)がある