テレビ番組『ここがヘンだよ日本人』(TBS)に出演、“ちょっと変なアフリカ人”として人気者になったゾマホン・ルフィンさん(60歳)のインタビュー。前編では母国・ベナンでの生活ぶり、日本に来た頃の極貧生活、『ここヘン』出演の経緯などについて語ってもらった。

 今回の後編は、ちょっとシリアスにいきたいと思う。2019年と2023年にはベナンで行われた選挙に出馬したゾマホンさん。国のために尽力し、国民から絶大な支持を受ける彼だけに、政府側からは影響力のある存在とみなされているらしい。なんと、命を狙われたこともあるそうだ。

 そんな状況のなか、「殺されてもいいよ」とまで口にした彼の覚悟を感じてほしい。

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私の近くで日本の悪口を言ったらボコボコにする

「私の前で日本の悪口を言ったらボコボコにする」『ここがヘンだよ日本人』ゾマホン(60)が語る“日本愛”と危険視されたベナンでの政治活動
2ヶ月前に開校した令和小学校
――ゾマホンさんはベナンで小学校をつくったじゃないですか?

ゾマホン:本の印税で、祖国ベナンで学校を4つつくり、日本の方に支援いただき、5つ学校をつくりました。今年、9校目の小学校、令和小学校が開校しました。

井戸も10ヶ所以上掘り、綺麗な水を飲めるようになり、国民が長距離水をくみにいかなくてよくなりました。

人的教育によりいまでは、112人のベナン人が、東大をはじめ、全国の大学で農業や医学、様々な技術を日本に学びに来ています。

――ベナンでつくった学校の名前に、日本の元号「令和」が使われているんですね。ゾマホンさんとって、日本のいいところはどういうところですか?

ゾマホン:日本のいいところは、安心して暮らせること。アメリカ、スイス、フランス、イギリス、ドイツ、イタリア、ロシア、オーストラリア……全部と比較しても安心して暮らせる国は日本しかない。G8の中で1番安心して暮らせる国。
黒人でも、白人でも、誰でも。日本ははっきり言うと天国ですよ。

私は日本に住んで32年目です。21歳のときにベナンを出たから、自分の国よりも一番長く生活した国です。だから、私の近くで日本の悪口を言うとボコボコにします。

――ハハハハ! 殴りますか(笑)。

ゾマホン:なぜかというと、お世話になってるからね。それは冗談ではない。

日本ではアフリカの正しい情報が伝えられていない

――逆に、日本の良くないところはありますか?

ゾマホン:世界を正しく日本国民に教えてもらいたい。日本の教科書を読むと、欧米のことは細かく紹介している。アジアはまあまあ紹介されています。でも、アフリカのことは1~2ページしか紹介していない。で、どういうことが書いてあるかというと「キリンが綺麗」「南アフリカの国は白人と黒人の戦争ばかり」ということしか書いてない。
否定的なことしか紹介されてないから、一般の日本人は絶対アフリカに行かないよ! それはいけない。

日本はジャーナリストが無知で、欧米が報道した情報をそのまま日本語に訳して日本国民に報道するですよ。欧米が報道してるアフリカの情報は、自分の利益と都合に基づいて報道してるですよ。それを日本語に訳して「あ、コンゴで内戦起きた」「チャドでまた内戦だ」って、馬鹿馬鹿しい報道をしている。なぜ、紛争が起きたか? なぜ、アフリカという国が病気、戦争、飢餓ばかりなのか? その原因を調べないで、とんでもない情報ばかり。それは恥ずかしい。日本国民は北朝鮮国民とまったく同じだよ。

私があなた方にお願いしたいのは、自分の目でちゃんと世界を見てください。欧米の目を借りて世界を見るんじゃなくて、自分で現地調査してください。あなた方が変えないといけない。

日本の未来は暗い。私は本当に心が苦しい。
日本人はみんな、寝ないで一生懸命に税金を払ってるけど、政府は国民の心の痛みがわからないまま税金を使ってます。アメリカの軍隊が「我々が日本を守る」と言いながら、実際は日本のお金で生きてるですね。アメリカの軍隊は日本の税金で動いてるです。

そして、北海道から沖縄まで中国のお金持ちが日本のマンションをじゃんじゃん買ってます。銀座の多くの建物を中国人が買ってるですよ。これから、日本は中国にも絶対負ける! 非常に残念。どうすれば、この国がちゃんと守れるか。

ベナンの国政選挙に出馬

「私の前で日本の悪口を言ったらボコボコにする」『ここがヘンだよ日本人』ゾマホン(60)が語る“日本愛”と危険視されたベナンでの政治活動
母国の現状を紹介する冊子を名刺代わりに配っている
――『ここがヘンだよ日本人』以降の活動ついても教えてください。

ゾマホン:番組終了後、2012年からはベナン駐日大使を4年間やりました。

――2019年には、ベナンの国政選挙に出馬されましたね。

ゾマホン:ベナンは表面的には独立したと言われてるけど、実際はまだまだフランスの植民地ですよ。日本は世界中に支援しているけど、あまり見返りを求めない。本当に支援してくれる素晴らしい数少ない国なんですよ。
私が大使の時には、ベナンにもたくさん支援していただきました。

ベナンのパトリス・タロン大統領は、「ゾマホンが国会議員になって大統領選に出たら国民に絶対選ばれるから、危ないと思っている。

学校に100人の軍人が…

――あと、ゾマホンさんがつくった学校に軍人が来たという話もあったそうで……。

ゾマホン:大統領が「ゾマホンはやばい」と考えて、玄関のところの細い道に100人ぐらいの軍人が来た。俺のことを危ないと思ったから、私の活動をチェックしに来た。与党は、「ゾマホンが担ぎ出されたら国民が信じてしまう」と心配だった。

私とヤイ・ボニ前大統領は野党としてベナンですごく人気があるから、今の大統領はすごい困ってる。

――2023年には国会議員の選挙にも出馬されたそうですね。その選挙はどうなったんですか?

ゾマホン:俺が圧倒的に選ばれたよ。でも、大統領が困った。内閣をめっちゃくちゃ批判しているから。そしたら、外国のメディアに絶対報じられる。だから、「ゾマホンは危ない」と。
それで、誰が議員になるかを大統領が勝手に決めたわけ。

――ゾマホンさんは選挙に勝ったのに、大統領が勝手に外したから議員になれなかったんですか?

ゾマホン:そうです、不正選挙だったね。あと、2019年には大統領が「選挙に出てはいけない」という命令を出した。法律ではなくて命令。だから、野党は誰も選挙に出れなかったです。2019年から2023年はベナン国会は与党しか無かった、北朝鮮と同じで自分の利益と都合のために国を運営してきた。国民の苦しみは全然無視して。

国民のためなら殺されてもかまわない

「私の前で日本の悪口を言ったらボコボコにする」『ここがヘンだよ日本人』ゾマホン(60)が語る“日本愛”と危険視されたベナンでの政治活動
「フランスが悪いよ」とはっきり言う
――お話を聞いていると、ゾマホンさんの命も心配です。

ゾマホン:(目に涙を溜めながら)でも、私は自信があるからね。心配することははないですよ(笑)。私は泥棒とかをしているのではなく、人のために60歳になるまでずっとやってきたから全然心配してません。殺されても、国民のためにだったらいいよ。


私は「フランスが悪いよ」と、はっきり言うからね。フランスの植民地だったニジェールという国があるんです。あの国はウランを持っています。そのウランをフランスは何百年も持っていった。

1960年にニジェールがフランスから独立してから、フランスの「アレバ」という会社は現地民の利益を全然考えずに安い値段でウランを買ってる。国民の生活は苦しくて1日に1ドルも使えないのに、アレバはそのウランを日本やアメリカ合衆国、イギリスに安く売っています。もう、本当に怒るよ!

――国民は潤っていないのに、ウランを安価で他国に売っているということですか?

ゾマホン:そうそう。ニジェールの政府に出すお金が少ないから、国民はいい生活がまったくできないです。

――全然、知らなかったです。

ゾマホン:今年の夏に第9回目の、TICAD9(第9回アフリカ開発会議)が開催されます。

日本の政治家とマスコミが人間の発祥の地であるアフリカを見て欲しい、アフリカでおきている様々の問題の原因をしらべてほしい、歴史を調べて欲しい。そう願っています。

<取材・文/寺西ジャジューカ 撮影/スギゾー>

【寺西ジャジューカ】
1978年、東京都生まれ。2008年よりフリーライターとして活動中。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレス、ドラマ評。『証言UWF 最後の真実』『証言UWF 完全崩壊の真実』『証言「橋本真也34歳 小川直也に負けたら即引退!」の真実』『証言1・4 橋本vs.小川 20年目の真実 』『証言 長州力 「革命戦士」の虚と実』(すべて宝島社)で執筆。
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