この異常事態に対する緊急策として備蓄米の大量放出がはじまると、X上は大荒れ。さらに連日ニュースで飛び交うのは、備蓄米が5キロ83円だの、飼料用のエサ米だの、欲しい銘柄米はどこかの悪徳業者が隠してるだの……国民をさらに不安にさせるようなトピックスばかり。もはや何が正義なのか? 誰を信じていいのかわからなくなってしまいそうです。
さらに、新たなトピックスとして浮上したのが、“外国産米”。輸入拡大するかの議論はさておき、6月6日に小売大手のイオンがアメリカ・カルフォルニア産のカルローズ米を都市部の店舗を中心に販売をはじめたのです。このニュースを知って買おうかどうか悩んでいる人も少なくないでしょう。そこで今回は、多くの人々が未体験であろうカルローズ米を実食して、素直な感想をレポートしたいと考えました。
国産米と明らかに形状が違うカルローズ米

炊飯時に注意すべきは水分量です。
炊き上がりを見てみると、米の粒立ちはしっかりしていて粒の形状はやはり縦長感があります。炊飯中や炊き上がりの香りについては気になる問題点はありませんでした。あえて弱点を探すのであれば、新米の季節に感動するようなお米が炊けた時のいいにおいを強く感じなかったというのが正直なところです。
食べ心地、味わいは?

米の品評会のようなケースと家庭の食卓とは状況が違いますから、日常に食べるお米として考えた場合、私は肯定的な感想を抱きました。結論、普通においしかったです。また冷めた状態でおにぎりを作ってみましたが、問題なく握ることができました。

米国産米は悪くない。問題は…
実食してみてわかったのは、米国産米の食べ心地は個人的には悪くなく、おいしく味わうことができたということです。つまり問題や課題は別の話で、要するに日本における健全かつ持続可能な農業運営の観点です。日本の稲作農家一戸あたりの平均作付面積は、1.5ヘクタール。これに対してアメリカは210ヘクタールにもなるといいます。もし外国産米の輸入制限を緩和すれば、生産能力や価格競争において日本産が一気に脅かされるのは誰もが想像できてしまいます。小泉進次郎大臣の“輸入米発言”の目的が、現状の混乱を正すためだとしても、多くの米農家や関係者にとってはどう受け取られるかは、考えただけでも心が痛みます(※個人的には小泉大臣の政治活動に対して中立的な立場を持っています)。
銘柄米3000円台の理屈はどこに?
6月9日に明らかになったのは、民間が保有している米の在庫量を政府が把握していないこと。そうなると、石破総理が5月21日の党首討論で明言した“5キロ3000円台”という数字をどう理解すればいいのか、ますます謎は深まるばかりです。今後の日本において、消費者が安心して米を買えること、生産者が中長期的に事業継承や農地維持ができることが大切なのは明らか。ですが、米の流通構造が複雑かつブラックボックスであることが明るみになった今、早急かつ正確に米の適正価格を提示できる人物は誰なのでしょうか。
なんにせよ、いかなる時でも選択肢を持っておきたいもの。
<TEXT/スギアカツキ>
【スギアカツキ】
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。世界中の健やかな食文化を追求。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)が好評発売中。Twitterは@sugiakatsuki12。