アルバムだけ予習しておけばいいと思ってたら……
5月31日、声優アイドルユニットi☆Risの10回目の全国ツアー初日公演が、越谷サンシティ大ホールで開催。「i☆Ris 10th Live Tour 2025 ~ViVa i☆Ris~」と銘打ち開幕した1曲目は5年ぶり5枚目のアルバムとして発売した「ViVa i☆DOL」の表題曲「ビバ☆アイドル!」だった。昨年の11月にぴあアリーナMMで開催したライブから約半年間、このツアーを待ちわびていたファンたちの、会場外まで聞こえる大きな声援に包まれるなかで新曲を披露。
その後のMCではリーダーの山北早紀が「(初日のチケットが)完売しましたー!」と大声で喜び、地元に戻ってきた久保田未夢が「一応、凱旋ということで全力で」と気合を入れる。

「『ビバ☆アイドル!』を予習しておけばいいと思ってたら……」(若井友希)「(この曲は)知らん!ってなったでしょ?」(久保田)といたずらっぽく笑いつつ、そのレアな選曲に言及。今後のツアー参加者も楽しみにしてほしいところだ。
サプライズ演出をもアドリブで乗りこなす13年目の対応力
後半戦ではいわゆる“大人っぽい曲”のゾーンが続くなか、劇場版アニメ『i☆Ris the Movie – Full Energy!! -』の挿入歌「希望の花を」が始まる前に突如、透明の紗幕が舞台に降りてきたことで、メンバーたちも動揺し、会場がざわつく事態に。そこに投影されたのは、昨年にぴあアリーナMMで開催したライブの映像。「え?」(芹澤優&山北)「なにこれ」(若井)「え、知らないなにこれ」(久保田)「聞いてない」(茜屋日海夏)ときょろきょろ周りを見渡すメンバーたち。
ぴあアリーナMMという、i☆Risの歴史のなかで最大規模の会場にたどり着いた気持ちを、それぞれが語るMCの映像が流れていき、イントロが流れた瞬間、無言で(あ、歌うんだ…)と笑った歌い出しの茜屋を筆頭に、パフォーマンスを開始した。
さらに間奏を迎えると、また紗幕に映像が投影される。それは、ぴあアリーナMMが100%埋まらなかったことを悔しがるメンバーたちの言葉だった。
そして、曲とかぶるかたちで映像が続いていくので、「……歌うところじゃない……?」(若井)ととまどいつつ、映像を観客と一緒に見るメンバーたち。
映像のなかでメンバー全員のコメントが終わったあと、突如、パーン!!とキャノン砲が鳴り響く。銀テープが会場に舞い散るなか、スクリーンにサプライズのライブ告知が表示され、会場からは悲鳴が上がった。

ステージ上で驚きながらも、また曲が再開すると、すぐにメンバーたちが歌い出す。このサプライズ演出をもアドリブで乗りこなす対応力は、13年目のキャリアの賜物といえるだろう。
不測の事態で生まれた“アドリブ解禁パフォーマンス”

曲が終わり山北が、「幕が下りてきた瞬間、踊る場所がないと焦りました」と状況を説明しつつ、改めてライブの詳細を語る。
メンバーたちにサプライズなだけでなく、まさかのライブ本編、曲中の情報解禁とあって、会場内は異様な空気に。スタッフからのカンペを山北が読み、もともとはアンコール後に情報解禁をするはずが、メンバーの提案でセットリストが更新されたことで、本編中の解禁となってしまったというのだ。

これはi☆Risの経験値と、彼女たちを信じたスタッフの信頼がなし得た奇跡に近い“アドリブ解禁パフォーマンス“だった。アイドルの生の現場の良さを体感できた瞬間だった。
「めっちゃうれしいんだけど……埋めたすぎて涙が出てくる」と泣きながら、「これで100%達成できたら、うちらめっちゃアイドルしてるよね」という若井の言葉に、会場から歓声が上がる。
「今年こそはぴあアリーナMM埋めましょう! 今からなら有給取れるでしょう」と山北が煽り、「土曜日だから、次の日休めるから」(芹澤)「いい日にとってくれてありがとうございます。きっと相当前からおさえてくれたんでしょう」(若井)とコメントしていく。

紗幕が降りてきたときに抱いた違和感「もしかして……」
ちなみに終演後、山北と久保田にこの裏側を聞いたところ、このように語ってくれた。
でもスタッフさんたちがアンコールでやるのにすごくこだわってたのは、こういうことだったんですよね。
紗幕が降りてきたとき、おや……? と思って、少し考えたあとで、もしかして、そういうことだったかーって。
久保田:少し前に、そういえば、今年の周年ライブの予定が、カレンダーに入ってないな……って違和感があったんですよ。メンバーによっては、先々の予定なんか見てないかもしれないけど、私はけっこう先まで確認したいタイプなので。
それがあったので、紗幕が降りてきたときに、もしかして……って思いましたね。

【i☆Ris】
‘12年、結成。リーダーの山北早紀、芹澤優、茜屋日海夏、若井友希、久保田未夢からなる5人組声優アイドルユニット。4月30日発売の5thアルバム「ViVa i☆DOL」の表題曲「ビバ☆アイドル!」は、=LOVE「絶対アイドルやめないで」の作曲を手がけたGENICの小池竜暉が作詞作曲編曲を担当したほか、僕が見たかった青空の早﨑すずきもピアノで楽曲制作に参加。11月15日には、「i☆Ris 13th Anniversary Live」が2年連続ぴあアリーナMMで開催されることが決定した
<取材・文/森ユースケ>