そして現役のセクシー女優として、妊娠・出産を経験したことをX(旧Twitter)上で発表したのが「IQ140の才女」の肩書でデビューした、水谷梨明日(みずたに りあす)さんです。
エンターテイメントとしての「性」と、人間が生きるうえでの営みとしての「性」、そのどちらも経験した水谷さん。
そんな彼女が、妊娠・出産を経験して実際に考えたことや、現役セクシー女優としての不安、さらに出産後の活動について、語ってくれました。
産む決心はすぐに固まった
――水谷さん、ご出産おめでとうございます。水谷 梨明日(以下、水谷):ありがとうございます!
――3月にご出産されたばかりで、さっそくインタビューを受けていただいて、ありがたい限りです。ちょっと気になる点として、妊娠は計画的に考えてのことだったのかを聞きたいのですが。
水谷:実は、計画的だったわけじゃないんです。自然に授かった、という形で。「あれ、生理が来ないな」って検査を受けて、妊娠3ヶ月くらいではっきりとしたんですけど、その頃には「産もう」との決心は固めていました。
「いつまで仕事できるのかな」なんて、のんきに考えていました

水谷:それはもちろんです。ただ、自分が妊娠するとは思っていなかったので、なにも調べていなかったんですよ。だから「お仕事はいつまで続けられるのかな」なんて、最初はのんきに考えていたんです。
でも、今はフリー女優連盟で活躍していて、お母さんの先輩でもある、かさいあみさんに「妊娠しました。お仕事ってどのくらいまでできるんですかね?」って相談したら「何言ってるの、すぐに事務所に言わないとダメだよ!」って。
「流産したらどうするの!」って言われて、急いで事務所に撮影のお仕事はストップしてもらいました。
――妊娠3ヶ月くらいだと、身体にそこまで大きな変化もないですし、そのあたりの感覚はわかりにくいかもしれないですね。
水谷:その時点で決まっていたイベントとか、動画配信とかのお仕事には、お腹が大きくない段階では参加していました。バレないかな、と思って。
実はファンの方のなかには、その時点で気付いていた方が何人かいたみたいで。でも何も言わずにいてくれていたんです。本当に「ありがとうございます」って思います。
現役セクシー女優の産休で生じる、収入の不安

水谷:やっぱり「どうしよう」とはなりましたね。妊娠がわかって、なくなってしまったお仕事もありますし、イベントだけじゃ収入は足りないですし。
困っていたときに、かさいあみさんが声をかけてくれて、オンラインでかさいさんのお仕事をサポートするって形で助けてもらったんです。本当、すごくお世話になっています。
――事務所に妊娠を伝えたときは、どうでした?
水谷:ちょうど撮影のお仕事が切れるタイミングだったので、急遽撮影をキャンセルする、なんてことがなかったのは、良かったです。別に妊娠に関して怒られるようなこともなかったですし。ただ、今はもう退所してしまったんですが(笑)。
――事務所を退所したきっかけは?
水谷:かさいあみさんのお手伝いをしているとき、自分も顔出しでサポートしたいと思ったんです。でもちょっと、顔出しでのサポートは、事務所的にNGで。
ちょうど自分でも、撮影会を企画したり、AV以外のお仕事をしたり、いろいろやってみたいと思っていたのもありました。でも、個人で何かしたいと思ったら、毎回事務所の許可が必要ですし、大変かな、と。それでタイミングもいいし、退所を決めました。
――円満退所だったわけですか。
水谷:はい、円満退所です。「赤ちゃんが生まれたあとも、お仕事を続けるなら、所属したままでもいいんですよ」とも言ってもらえたんですが、やっぱり個人でいろいろやってみたい、という思いが強くて、退所させてもらいました。
育休は短めに。撮影も復帰予定

水谷:そうですね、産休が長かったので、育休は短めに、と思っていて。
ホラー映画の監督さんがアメリカから来ていて、女優さんの知り合いから「一緒に行かない?」って誘われて、参加しました。ちょっとお色気要素がある作品で、それが復帰後初の撮影ですね。
――本格的な撮影は?
水谷:実はそれも決まっていて、もうすぐ撮影があります。
――フリーになって、さっそくいろいろなお仕事ができるようになったわけですね。
水谷:はい、自分でお仕事に責任を持つようになりました。楽しいですけど、全部自分でやらなくちゃなりませんし、誰かが守ってくれるわけでもないので。そこは頑張っていきたいです。
子どもにいつか自分の仕事について伝える覚悟はしている

水谷:多くはなかったんですが、コメントで「将来子どもが、お母さんはセクシー女優だって言われたらどうするの?」という意見はありました。私も、そのあたりはすごく考えましたね。
でも、いつかは子どもに話さなければならないときが来るわけですから、その覚悟も含めて皆さんに妊娠・出産を報告した、という部分もあるんです。
ただ、あくまで私がしてることだし、子供は子供で別の人間だという感覚もあります。
――自分のお仕事にも、お子さんにもしっかり向き合う覚悟を決めた、ということですね。
水谷:あと、性行為は日常生活のうえで「神聖なもの」と同時に「触れてはいけないもの」と考えられがちですよね。そういう考え方はもちろん理解できますし、否定するつもりもないです。
ただ、セクシー女優の私が妊娠・出産を発表することで「女優としての性行為と、人間が子どもを産み育てていく性行為はつながっている」と伝えられると考えています。
出産後の性生活についての日本語の文献がない

水谷:まず身体にすごくダメージがあったんです。狭いところから、あんなに大きな赤ちゃんが出てくるんですから、当然ですけど。
――……想像するだけで、痛いです。
水谷:実際、裂けましたからね(笑)。出産直後は、脳内にオキシトシンとかアドレナリンが出ているためか、それほど痛みを感じないんですよ。なんだか頭がぽやぽやっとしていて。それで「産まれました」っていう幸せムードのなかで、お医者さんがチクチク縫っているんです(笑)。
――いや、凄まじいですね……。
水谷:それで「出産後の性生活を再開するときって、どうすればいいんだろう」って疑問を持ったんですが、調べようとしても日本語の文献があまり見つからなかったんです。
でも実際は、出産したあとの性生活について、悩んでいる方は多いと思います。そういったお悩みを持つ女性の方に、性の世界に触れているセクシー女優で、同じく妊娠・出産を経験した私が情報を発信していけるのではないか、とも考えています。簡単ではないでしょうが……。
性の世界を日常のものと考えることで、生活の豊かさにつながる
――でも、大切なことですよね。水谷:そういう情報に関しては、アメリカの文献のほうが探しやすいのはたしかですね。あとアメリカは、出産後の女性を対象にした医学療法士さんや、性生活のセラピストさんも多いので、調べていけばサポートが受けやすい環境なんです。
日本だと、産後の骨盤矯正、みたいなケアは調べるとけっこう見つかるんですけど、性生活そのもののお悩みを相談できる場所はかなり限られてしまっているのかな、とは感じました。
――性に関する話題をあまり特別視しすぎていると、見なくてはならないものまで見えなくなってしまう、と。
水谷:そうですね。性を特別視しすぎないほうが、いろいろな方の健康とか、生活の豊かさにつながっていくのではないかと思います。
だから私は妊娠・出産を経験したセクシー女優として「性の世界はそんなに特別視しないでいいんだよ、みんなの身近にあるものなんだよ」という部分を伝えていけたらいいな、と考えていますね。
<取材・文/蒼樹リュウスケ、撮影/山川修一>
【蒼樹リュウスケ】
単純に「本が好きだから」との理由で出版社に入社。雑誌制作をメインに仕事を続け、なんとなくフリーライターとして独立。「なんか面白ければ、それで良し」をモットーに、興味を持ったことを取材して記事にしながら人生を楽しむタイプのおじさんライター