移動に欠かせない交通手段のひとつである電車。しかし、通勤や通学の時間帯は混雑するため、殺伐とした雰囲気がある。
車内では譲り合いの精神を持って、お互い気持ちよく過ごしたいものだ。
 今回は、電車という公共の場で“自分ルール”を押し通す迷惑客に遭遇した2人のエピソードを紹介する。

「ここ、友だちの席なんで」通勤電車で見た“堂々すぎる席取り”


「ここ、友だちの席なんで」満員電車で“席取り”をする女子高生...の画像はこちら >>
 高梨唯さん(仮名・30代)は、いつものように混雑した通勤電車に乗り込んだ。

「吊り革をつかむのもやっとの状態でした」

 そんななか、奇跡的に空いている席を発見したという。

「満員電車で空席があるなんてめったにないので、内心“ガッツポーズ”を決めつつ席に向かいました」

 ところが、座ろうとしたその瞬間……。隣に座っていた制服姿の女子高生が、膝の上に置いていた大きなリュックをスッとその席に滑り込ませたのだ。

 高梨さんは一瞬混乱しながらも、「すみません、ここ空いてますか?」と声をかけようとした。しかし、それよりも早く彼女が放った一言に、思考が停止した。

「ここ、友だちの席なんで。あっち行ってください」

 あまりに堂々とした口調に、高梨さんは結局そのまま立ち尽くすしかなかったようだ。

翌日も同じ車両で…


 次の駅でさらに乗客が乗ってくると、もう1人の女子高生がその“空席”に向かってやってきた。

 先にいた女子高生は、「席、ちゃんと取っておいたよー!」と満面の笑み。後からきた友だちも、「マジで取ってくれるとは思わなかったわ。明日からもよろしく!」と笑いながら座っていたという。


「堂々と公共の場で“席取り”をするなんて、すごい度胸だなと思いました」

 高梨さんは翌日、気になって再び同じ車両に乗ってみたという。しかし、その日は彼女たちの“席取り”は失敗していたそうだ。女子高生の隣には、いかにも強面のおじさんが座っていたからだ。

 その後も、何度か彼女たちを見かけたのだが、日によって席を確保したりできなかったりする様子もあったという。

「今でも通勤中にあの一件を思い出すと、公共の場であんな“マイルール”が通るのかって、ムカつくんですよね」

電車のドアを塞ぎ続けた女性


「ここ、友だちの席なんで」満員電車で“席取り”をする女子高生にア然。翌日、席取りに失敗していた納得のワケ
満員電車
 大学生だった加藤美咲さん(仮名・20代)は、ある日の通学中、とんでもない場面に遭遇した。

 乗換駅で急行電車を待っていた加藤さん。急行は1つのホームに2路線が交互に乗り入れる仕様で、うっかり間違えるとまったく違う方向へ行ってしまうという、少しややこしい駅だった。

「ホームには多くの人がいましたが、そのなかで、明らかに挙動不審な50代くらいの女性が目に入りました。路線図を見ては首をかしげたり、発車標を見ながらホームをうろうろしたり。焦っている様子が伝わってきました」

 ほどなくして急行電車が到着。加藤さんはその電車に乗り込んだ。先ほどの女性も同じ車両に乗ってきたものの、車内の液晶画面を見てから「違う」と言わんばかりに降りてしまった。

「乗り間違えたのかな?と思いました」

 しかし、驚いたのはその直後だったという。


発車時刻を過ぎても動かない電車


 しばらくすると、先ほどの女性が再び戻ってきた。ただし、乗り込んできたのは片足だけ。もう片方はホームに残したまま、電車のドアの真ん中に立ち塞がったままの状態だったのだ。

「液晶の行き先表示とスマホを交互に見ながら、なにかブツブツつぶやいていて……。当然ドアは閉まりません。車内は一気にざわつきました」

 ホームのスピーカーからは駅員の注意の声が響くが、女性は聞く耳をもたない様子だった。そして、とうとう若い駅員が駆け寄ってきて……。

「乗るんですか? 乗らないなら離れてください」と必死に促す駅員に対し、女性は「X駅に行きたいんですけど、止まります?」と質問を始めた。

「駅員さんが『この電車は止まりません』と答えると、今度は『じゃあ次のいつ来るの?』『どうやって乗り換えたらいいの?』と詰め寄っていたんです」

 見るからに新米の駅員は、ドアを塞いだままの女性に、乗り換え方法をていねいに説明し始めてしまったという。

「もう発車予定時刻は過ぎていました、車内の乗客はみんなイライラ。舌打ちする人もいましたね」

 そこへ、ベテランらしき中年駅員が駆けつけ、女性と新米駅員を駅のホームへ引っ張り出すかたちで決着。ドアは閉まり、ようやく電車は動き出した。


「大きく遅れたわけではありませんでしたが、まさか“片足だけ乗ってる人”のせいで足止めを食らうとは。あの光景は今でも忘れられません」

 電車では個人のマナーが大いに問われる。だが、不快に感じても声をあげにくい空気があるのは事実だ。自分の何気ない行動が周囲の迷惑になっていないか、あらためて意識する必要があるだろう。

<取材・文/chimi86>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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