だが、わずかな座席指定料をケチってしまうと、両側から人に挟まれる3列シートの真ん中になってしまう可能性が高くなる。短時間ならまだしも国際線のような長時間のフライトの場合、それだけでも大きなストレスだ。
真ん中席との交換を求められ…
さらに困るのは、追加料金を払って座席指定をしていたのに「席を変わってほしい」と頼みにくる乗客がいること。エネルギー関係の会社に勤める野村雄彦さん(仮名・43歳)は、昨年休暇を利用して東南アジアへのひとり旅に出かけた際、不運にもそんなトラブルに巻き込まれてしまった。「高給取りではないですが独身で無駄遣いもしないため、時々こうやって旅行をしているんです。でも、旅行会社のパッケージプランだと飛行機の座席を事前に選べないことが多く、3列シートの真ん中に座らされたことがありました。それが嫌で、それ以降は直接航空会社のサイトから申し込むようにしていましたが、このときは機内搭乗後に座席の交換を求められたんです」
関西空港から中国・上海の浦東国際空港に向かうときの出来事で、利用したのは中国系の航空会社。この日は日中のフライトで窓からの景色を見たかったこともあり、エコノミークラスの窓側席を予約段階で抑えていた。
ところが、交換を頼みにきた20代後半くらいの中国人男性の座席は真ん中席。
断っても引き下がらない中国人男性
野村さんは、当然その要求に応じられるわけもなく、その場で断った。「座席指定をしなかったのかできなかったのかはわかりませんが、連れの友人が私の隣だったらしく、離れ離れの座席になってしまったようです。事情は理解できましたが真ん中席って正直“ハズレ”じゃないですか。ひじ掛けだって奪い合いだし、両肩をすぼめて座らなければならなくなる。これが通路側の席ならまだ検討の余地はありましたが、私にとって何のメリットもありませんでしたから」
だが、この中国人男性は簡単には引き下がらず、「彼は友人なんだ」と情に訴えかけてきたそうだ。
「相手が親子で片方が子供なら私も考えたかもしれませんが、いい大人なわけだし、1人で座っても話し相手がいないだけで別に困るわけではないですよね。国内線よりはフライト時間が長いですが、だとしても3時間もかかりません。そのくらい我慢してほしいですよ」
中国人男性がブチギレて機内は騒然…
当然ながら野村さんは一貫して交換拒否の姿勢。「あなたと席を交換する気はない」とハッキリと言ったが、中国人男性は「変わってくれたっていいだろ!」と次第に怒りを露わに。すでに隣に座っていた彼の連れの男性は必死になだめようとしていたが、さすがに相手の態度に恐怖を覚え、客室乗務員を呼ぶボタンを迷わず押したとか。すぐに女性乗務員が来てくれたため、事情を説明。すると、今度は彼女に対して必死に訴えかけていたが、毅然とした態度で席に戻るように促されていたという。
「偏見かもしれないですが、正直中国の航空会社なので不安はありました。でも、そのときはしっかり対応してくれたので良かったです」
隣席の中国人は友人の非礼を謝罪
ちなみに当日はほぼ満席。真ん中席に空席が少しある程度で、窓側・通路側いずれの席も埋まっていた。問題の中国人男性は、しばらくすると再びこちらにやってきて、今度は通路側に座る同じ中国人と思われる男性に話しかけたが、彼からも断られていたという。「せっかくの旅行がいきなり水を差される形になってしまいましたが、隣に座っていた彼の連れだという人は謝ってくれて、そこに少し救われたかな。おかげでフライト中に気まずい思いをしたまま過ごさなくてすみました(笑)」
野村さんは中国人とのトラブルに遭遇したが、国籍にかかわらず誰でも起こり得るトラブルだ。
そもそも航空会社の場合、乗客同士の座席交換を禁止しているところもある。今回のケースと違って両者が納得している場合でも規則上認められない場合もあるため、注意が必要だ。断りたい場合も含め、やはり客室乗務員に相談することがベストな対応なのかもしれない。
<TEXT/トシタカマサ>
【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。