賞与の時期に浮かぶのは笑顔ばかりではない。大量リストラ、納得のいかない査定、不祥事のしわ寄せ……。
今年も「夏のボーナス」は企業の本音をあぶり出す。話題になった企業に勤める社員たちはいくらもらい、何を思ったのか。その“実額”を調査した──。

米卸業者のボーナス事情は?

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「ある大手米卸は営業利益が前年比500%になっている」

米価格が高騰するなか、小泉進次郎農水相の発言で注目を浴びた米卸業者。そんな話題の業界のボーナス事情はどうなのか、調べてみた。

「ボーナスアップなんてとんでもない。中小の米卸業者には厳しい夏です」とため息を漏らすのは、新潟県の米卸問屋で取締役を務める滝川航さん(仮名・41歳)。役員報酬のため夏のボーナスはないが、今年3月の決算賞与が6年ぶりに支払われなかった。

「相場価格がすぐに反映されにくいギフト用の卸し先が多いので、価格の急騰に対応できず、赤字が続いてました。途中で取引を中断できたおかげで給料1か月分の定期賞与はどうにか支給できましたが、全員一律25万円の決算賞与までは無理だった。社長も他社に人材が流出しては困ると、基本給を一律3万~5万円アップさせるという苦渋の決断をしていましたが……」

価格高騰についていけないと…

価格高騰についていけない中小卸業者では倒産するケースも出てきているという。

「ウチは商品の粗利率が40%ほどあったので余剰資金で耐えられました。が、10%ほどの薄利多売でやってきた会社が倒産していってます」

一方で「米騒動に便乗して儲けている企業もある」と話す。農家から米を集めて卸業者に販売する「集荷業者」だ。


「昨秋に60㎏を3万円とかで買い付けたものを、今は5万円で販売して時間差で儲けているんですよ。本来利益が大きい業態ではないですが、接待場所が高級料亭とキャバクラに、社長の車が高級外車に替わっていましたから」

新潟のコメ卸問屋の決算賞与
滝川 航さん(仮名・41歳)
取締役
年収:700万円
月収:58万円

昨春の決算賞与
25万万円

今春の決算賞与
0円

ボーナスが多い卸業者は「米の扱いが少ないから」

「ある大手米卸の営業利益が前年比500%」と話題も…中小の米卸業者から聞こえた“ため息”「6年ぶりに決算賞与が支払われなかった」
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他方で、「売り上げも堅調で満足してます」と話すのは、大手食品メーカーの子会社で卸売業を営む橋本太郎社長(仮名・59歳)だ。夏のボーナスは驚きの912万円で、年収は約4000万円だとか。

「ウチのボーナスは営業利益から必要経費を引いた額の約50%を全社員に分配するというシステム。ですから、年2回の賞与で給料12か月分になる社員もいる。例えば、40歳の課長でも年2回のボーナスで総額500万円ほどはもらえていますよ」

橋本社長は「米の卸は儲からない」とバッサリ切る。

米卸が儲からないカラクリ

「米は全国農業協同組合連合会(JA全農)が流通経路の大半を占めていたり、前払いが仕入れ条件だったり、キャッシュフローに余裕がないと新規参入が厳しい。ウチで取り扱い始めたのはここ数年ですし、全体からすれば微々たる量。だから今夏のボーナス額にも影響がなかったんです」

ただ、一部報道にもある通り、取引先である大手米卸の今年の業績は好調だとか。

「それでも暴利をむさぼっているわけではない。もともと営業利益が少なすぎたのが適正になった印象です」

槍玉に挙がった米卸業界だが、米価格高騰の恩恵は想像以上に限定的のようだ。

大手食品メーカーの子会社の夏ボーナス
橋本太郎さん(仮名・59歳)
代表取締役社長
年収:4000万円
月収:160万円

昨夏のボーナス
952万円

今夏のボーナス
912万円

取材・文/週刊SPA!編集部

―[不祥事&リストラ企業[夏のボーナス]大調査]―
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