10代で起業し、現在は実業家・投資家・映画プロデューサーとして多方面で活躍する嶋村吉洋氏。著書に「読者が選ぶビジネス書グランプリ2025」経済・マネー部門賞の第1位と総合グランプリ2位を受賞した『となりの億万長者が17時になったらやっていること』(PHP研究所)がある。

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本書で描かれるのは、幸せな億万長者たちに共通する45の習慣。なかでもキーワードとなっているのが「17時からの過ごし方」だ。

会社や家族に縛られず、人生を変えるためのヒントを、本人に聞いた。

17時からの「自分の時間」で新しい出会いを持つ

「17時からの過ごし方で人生が変わる」億万長者が明かす、成功と幸せの近道とは
※写真はイメージです。以下同
——なぜ17時という時間帯に注目されたのでしょうか?

嶋村吉洋(以下、同):会社員って、基本的に仕事中は「誰かの都合で働いている」じゃないですか。

たとえば上司に言われたことをこなす、クライアントのために残業する。だからこそ、自分の人生を変えたければ、定時後の「自分の時間」をどう使うかが大事になるんです。

——でも、仕事終わりって疲れていて、何もしたくないです……。

「何もしたくない」人は、まずは「何かしたいこと」を見つけようと思うだけでも、だいぶ変わります。

僕は最近車を買ったんですが、ガソリンスタンドを探していたら、自宅のすぐ近くにあったんです。今の家に10年近く住んでいるのに、ガソリンスタンドがあることに全然気づかなかった。

アンテナを張れば、必要なものは見えてくるんです。

——SNSでの出会いや交流でもいいのでしょうか?

もちろんです。リアルでもオンラインでも、「自分の当たり前」を変える出会いを持つ。
それが、17時以降のゴールデンタイムの活用法です。

——新しい出会いの先にある、コミュニティの話も本にたくさん出てきますね。

人との繋がりは、お金以上に価値があります。これからの時代、自分がどのコミュニティに所属しているか、誰と時間を過ごしているかで、人生がまったく変わるから。

だから、やたら誰かの悪口を言うとか、「自分たちだけが正しい」みたいな空気があるところは、やめた方がいい。風邪が他人から移るように、言葉や、その元となる価値観や考え方も他人から移りますからね。

上司に「できない」と言えない空気は、自分で変えられる

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仕事中
——初めて会う人と、緊張してあまり話せない人も多いと思います。

そういうときは「子犬になる」ことを意識すればいい。「困っています」「教えてください」って素直に言える人は、みんなからかわいがられますよ。

これは仕事でも同じです。一人でできないのに「できないって言えない」人って、謙虚に見えて、実は傲慢なんですよ。成果物に責任をとらないんだから。

——「できない」と言えない職場では、どうしたらいいですか?

上司が「言える空気をどう作るか」が大事。
これは「場の設計」ともいいます。

例えば「大ホールでコーラを売ってこい」って言われたら、普通は味を語ったり、ポスターを貼ったりしようとする。でも、僕ならホールの温度を40度にします(笑)。そうすれば誰だって飲みたくなる。

言葉やスキルよりも、環境を変えちゃう方が早い。

——部下など「場の設計」をできる立場でない時は、どうすればいいのでしょうか。

自分の前提を変えることだと思います。

「僕はプロの料理人だ」と考えてみてください。あなたは、腐りかけの食材、つまり嫌な上司でも、美味しい料理を作るんです。それがプロの料理人です。

「新鮮な食材じゃないと美味しい料理を作れない」というのはプロではなく、アマチュアです。あなたはプロの「部下」なので、楽しみながら上司を料理してくださいね。


これを具体的に言うと、上司に話しかけるタイミングを見計らうのもひとつです。

忙しそうだったり、機嫌が悪そうにしてるときより、ランチ後に美味しいコーヒーを飲んでいるときを狙うとか。

——上司が常にピリピリしてるような人だと、話しかけるのも勇気がいります。

僕は、明るい歌を歌いながらスキップして上司に近づくとか、わざとチャック全開で上司に近づくとか、いろいろやりましたね(笑)。

もちろん冗談半分だけど、要は相手の緊張の壁を壊す方法を、自分なりに見つければいいってこと。

あとは、その上司の上司の前で「〇〇部長って、いつも親身になってくれるんですよね」って言うのもアリ。そうすれば、その人も「ちゃんと聞かなきゃ」って空気になる(笑)。

ちょっとした仕掛けで、空気って変わりますよ。しかも自分が子犬のようにふるまっていると、教える側の人も自然に優しくなるんです。

嫌いな上司に話しかけるのは、筋トレやマラソンと同じで、「やるまで」が腰が重いだけ。いざ話しかけられて頼られると、ほとんどの人は嬉しくて、ちゃんと教えてくれます。

トイレを磨き、「意思決定の残高」を仕事のためにキープ

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トイレ
——著書ではトイレ掃除を「手でやる」と書かれていました。これはなぜですか?

昔、こんな話を素敵な成功者に教えてもらったからです。


引っ越しをすると、色々な神様たちが新居に来てくれる。その神様たちが担当する新居内の場所を取っていくんです。リビングや寝室など快適な場所は先に来た神様たちが取り、最後に来た神様は残されたトイレに住むことになる。

で、トイレに住むことになった神様がなぜ最後に来たのかというと、金銀財宝や運をどっさり持っていて荷物が重いからなんです。いわゆる福の神ですね。

でも、せっかく福の神が来てくれたのに、トイレを見て、「あ、ここ汚いわ」ってなると、金銀財宝を持って他の家に行っちゃう(笑)。

こういう話を聞いてから僕は、毎回トイレを手で掃除しています。

やってみると意外と気持ちいいんです。洗面所やキッチンって物が多いから手では掃除しにくいけど、便器はシンプルだからサッと終わる。1分もかかりません。

しかも、掃除してる最中って「あのとき、あんなこと言っちゃったな……」って思い出したりするんですよ。ひざまずいて、汚れを手で取ってると、謙虚になれます。
スキップしながら鬱になれないのと同じです。行動とメンタルは連動している。

家がきれいだと、集中力も全然違います。僕は家で仕事をすることが多いのですが、「あそこが汚れているな」と思ったり、「あれどこにあったっけ?」と探し物をすると、集中力が一気に削がれる。

——掃除や片づけが「仕事の生産性」にも直結するんですね。

僕は、家にモノをなるべく置かないようにしてます。声が反響するくらい、空間に余白がある状態が理想。

あと「一日一捨て運動」をしています。毎日1個捨てる。1個新しいものを買ったら、2個捨てる。ホチキスが2つあったら、どっちか捨てる。服も一定期間着なかったものは仲間にあげます。


意思決定の力って、残高があるんですよ。

今日はどのシャツにしようか、朝に何を食べようか、という小さな選択で、それを消耗してる人は、仕事の大事な場面で決断力が鈍る。だから、どうでもいい意思決定の回数を徹底的に省く。

自分のエネルギーを使うべきところに、きちんと意思決定の力を残しておくべきなんです。

——たしかに、朝からいろんな選択を繰り返してると、夕方にはヘトヘトになってます。

一般的には成功していくと「持つモノ」が多くなると考えられているようです。ですが、実際には成功していくと「持つモノ」を減らす人が多いと思います。モノっていうのは物理的な物だけじゃなく、人間関係や情報なども含みます。

成功している人の家って、物が少ない。映画を撮るときは、貧しい家庭を描こうと思ったら物を多くして部屋を散らかすし、逆に成功者の家は必要なものだけを整然と並べるんです。家が整然としていると、怒りとか嫉妬とか、不要な感情にも流されにくくなる。

僕も昔は復讐リストとか作ってましたから(笑)。

——復讐リストですか?

高校を中退して貧しかった頃に、いろんな人に馬鹿にされたので、「いつか見返してやる!」と。

でも、自分が豊かになり、かつて僕を馬鹿にしていた人が満員電車で疲れていたり、お小遣い500円で頑張ってるのを見たら、「ま、いいか」って思えるようになった。 その感覚は、自分が成長し達成することでしか手に入らないんです。

大人になったら「血縁よりも価値観で繋がる人を選べ」

「17時からの過ごし方で人生が変わる」億万長者が明かす、成功と幸せの近道とは
夕焼け
——高校を中退されたとのことですが、どんなご家庭だったんでしょうか。

いわゆる「複雑な家庭」でした。父は酒を呑んでは暴れるタイプで、幼いときから両親が別居して、小1のときに離婚。父方に引き取られたのですが、再婚相手は連れ子である僕のことに完全に無関心で、家事育児をまったくしませんでした。

やらざるをえない僕は、冷蔵庫のもので自分でごはんを作って、体操着のゼッケンも自分で縫うなど、自分のことは自分でやっていました。

今でいうネグレクトですが、僕にとってはよかった。「あれしなさい、これしなさい」って言われない分、自由だったんですよね。自分で考えて動く力が自然とついたから、 今の成功があると思う。

——いわゆる「成功者」って、元々お金持ちだった人が多いと思ってました。

地方はそうかもしれないけど、東京は自力で成り上がった人も多いと思います。ゼロからイチを作ったことがある人は、やっぱり強いです。

火事場の馬鹿力が出せる人って、だいたい貧しかったり、親から放っておかれたタイプが多いような気がします。親がお金を出してくれてると、いざってときに踏ん張れないんです。

僕は24歳の時に、父親が6,000万円以上の借金を抱えたまま寝たきりになりました。その時に「これで飯食え。死ぬほど働け、がんばれよ」って助けてくれたのは、仕事関係の人。親族は「人生お金じゃない」「勉強くらいしておけ」って口は出すけど、いざという時にはお金は出してくれませんでした。

ただ血が繋がっているだけで、助け合ったり、高め合ったりするわけじゃない。僕にとっては、そんな人たちよりも、価値観で繋がっているコミュニティこそ、本物の仲間なんです。

——日本は「家族を大事にしなくてはならない」という風潮が強いですよね。

「早く結婚しろ」「そんな仕事をして親族の恥」などと言われて、意思決定を鈍らせている人を見るけど、そこまでして迎合しなきゃいけない理由がわからない。大人になったら血縁に執着しなくていいと思います。

冠婚葬祭で会って、気を遣って、お金使って、疲れて……ってことにエネルギーを割くよりも、「今までありがとうございました。これでさようなら」って線を引いていい。もちろん、血縁に関係なくお世話になった人や価値観が合う人とは関係を続ければいい。

親族が自分の人生に口出ししてきたとき、「この人は責任取ってくれるのか?」って考えてみてください。答えはたいてい「NO」です。だったら、自分の責任で、自分の価値観で繋がった人たちと、生きていく方が絶対いい。

縛られず、逃げ道を持つことで人生は自由になる

——「お金に困らない人生」を目指すために、今からできることってなんでしょうか?

まずは、「所属先を増やす」こと。会社や家族、どれかひとつだけに人生を預けていると、何かあったとき一気に崩れます。

でも、仲間や、信頼できるコミュニティがもうひとつあれば、そっちに逃げられる。それって「逃げ」じゃなくて、「余裕」なんです。

——そこに合わない人がいたらどうすればいいですか?

離れればいいだけ(笑)。分かり合おうと「話す」じゃなくて、「離す」。嫌な気持ちを引きずってまで、その場に居続ける必要はない。人生には限られた時間しかないんだから、「今この人といたい」と思える関係に時間とエネルギーを使うべきです。

もし、そういう人と出会えていないなら、今までと違うことをしてみてください。SNSで気になる人にコメントしてみるでもいいし、ジムの体験に行ってみるでもいい。新しいコミュニティが見つかりますよ。

大事なのは、「誰かに決められた人生」から一歩でも外に出ること。

その小さな一歩が、思いもよらない未来への扉になるかもしれませんから。

<取材・文/綾部まと>

【嶋村吉洋】
10代で起業し、実業や不動産、映画ビジネスなど、ビジネス領域は多岐にわたる。
現在は投資家として、サイバーエージェント、テレビ東京、朝日放送、オリコンなど数社の大株主であり、保有している株式の評価額は数百億円に達する。著書に『となりの億万長者が17時になったらやっていること』(PHP研究所)など。
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