50代くらいから誰しも意識し始めるのが、「人生の後半戦をどう生きるか」。そんなライフプランを描くなか、誰もが最も気になるのがお金の心配だ。

 限られた資産を上手に使い切りつつも、どのように自分の楽しみを増やし、老後の安心を築いていくべきなのか。

 ファイナンシャルプランナーの井戸美枝氏の新著『ゼロ活 ~お金を使い切り、豊かに生きる!~』(扶桑社)から、「人生のお金を使い切り、人生を充実させるヒント」をお届けする。

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(本記事は『ゼロ活 ~お金を使い切り、豊かに生きる!~』より一部を抜粋し、再編集したものです)

人生後半は「楽しいこと」を増やせばいい

「自分が嫌なことはやらない」50代からは我慢せずに生きる!お金の専門家が教える老後資産の“賢い使い切り方”
※画像はイメージです(以下同)
 これまでの人生を我慢して生きてきた人ほど、50代、60代になったら、「できるだけ我慢はしない」「自分が嫌なことはやらない」ように意識してほしいです。

 人生とは「パズルのピースのようなもの」だと考えています。

 1枚の大きなパズルを想像してみてください。そのパズルは、あなたの人生そのもの。そして、人生を通じて、そのパズルのピースの一つひとつを埋めていくのです。

 このパズルには、「白いピース」と「黒いピース」があります。白いピースは楽しいこと、一方の「黒いピース」は自分にとって嫌なこと、苦しい経験を意味しています。

 しかし、パズル全体が完成してみると、「嫌だ」と思っていた黒いピースが、実はパズルの絵を形づくる重要な部分だったり、絵に深みを与えていたりと案外意味のあるものだったと気づくことがあります。

 若い頃なら、そんな黒いピースを入れる経験も仕方ありません。それが、人生に必要な試練だったり、学びだったりするからです。

 でも、50代以降、人生の7割か8割のピースを埋め終わった頃になったらどうでしょう? もう黒いピースは十分経験してきたのだから、これ以上、無理に入れなくてもいいんじゃないかと思うのです。


 だから、50歳を超えてからは、「黒いピース」をできるだけ入れず、「白いピース」を積極的に入れるように心がけています。

 皆さんにも、ぜひ50代に差し掛かったら、自分の人生のパズルをイメージしながら、「嫌なことは無理にしない」「積極的に楽しいことをする」という意識を持っていただければと思います。

老後にお金で失敗する人と成功する人

「自分が嫌なことはやらない」50代からは我慢せずに生きる!お金の専門家が教える老後資産の“賢い使い切り方”
通帳を手にガッツポーズする夫妻
 老後にお金で失敗する人と成功する人の違いはどこにあるのでしょうか?

 これまでに多くの方のご相談にのってきたなかで強く思うのは、「他人と自分を比較する」のではなく、「自分の身の丈に合った生活を見つけられるか」が、老後のお金の失敗と成功を分ける大きな境目だということです。

 たとえば、会社員を経験した方であれば、人生で一度くらいは雑誌やネットで見かける「給料の高い企業ランキング」や「ボーナスが高い会社ランキング」を見ては、「この会社はこんなにお給料がもらえていいなぁ」「うちの会社はなんでこんなにボーナスが低いんだろう」などと落ち込んだり羨ましくなったりしたことがあるかもしれません。

 SNSで知りたくない情報を見たり、ほかの人と比較してしまうこともストレスですね。

 でも、他人と自分を比較して一喜一憂することに、いったいどれだけの意味があるのでしょうか。

 給料の高さでは、自分の幸せは決まりません。本当に大事なのは、自分の収支を正しく把握し、「安心して暮らせる生活」を選ぶことです。

 自分の老後に必要な資産を逆算し、毎月の収入から、家賃や食費、保険料、趣味や交際費、医療費などを差し引き、最後に残る金額を見れば、自分が本当に無理なく続けられる生活が見えてきます。

 老後のお金の問題は、突然訪れるものではありません。若いときから身の丈に合った生活をしていれば、老後に慌てる必要もなくなります。

 他人と比較して見栄を張るような消費をするのではなく、自分が満足できる範囲の暮らしを守ること。
それこそが、老後の安心につながるのです。

 人生に必要なお金の逆算を通じて、「自分らしい幸せ」とは何かを考え、他人の価値観に振り回されず、自分自身が心から安心できる生活を見つけていきましょう。

〈文/井戸美枝〉

【井戸美枝】
CFP、社会保険労務士など。神戸市生まれ。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。社会保障審議会企業年金部会委員。経済エッセイストとして活動。『100歳までお金に苦労しない 定年夫婦になる!』(集英社)、『大図解 届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)、また自身の介護体験を元に執筆した『身近な人が元気なうちに話しておきたい お金のこと 介護のこと』(東洋経済新報社)など著書多数
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