話してくれるのは、吉野浩平さん(仮名・34歳)。それはコロナ禍だからこそ発生したトラブルだったという。
妹が自分の部屋によく遊びにきていた
「付き合っていた彼女と親族を巻き込んだトラブルで、妹は精神を病む寸前まで追い込まれてしまい……あの時は大変でした」4年ほど前のコロナ禍だった当時。一人暮らしをしている吉野さんの家には、妹の光さんがよく遊びに来ていた。
「妹は大学生になりたてなのに、講義はほとんどオンラインで、通学も滅多にない状況。わざわざ上京してきたというのに、友達を作ることもままならなかったようでした。そうした心細さからか、自分の部屋によく遊びにきていたんです」
といっても、浩平さんも年頃だ。交際相手がおり、彼女も頻繁に家に来ていたそうだ。
「相手は自分の会社の同僚で、コロナ禍が始まる少し前から恋人関係になっていました。その彼女もよくうちにやってきていて、こっそり同じ家からリモートワークをすることもしばしばでした。半ルームシェア状態というか、ほぼ四六時中3人で過ごしているような時期もありました」
楽しい日々から一転して、妹が突然音信不通に
彼女と光さんはまるで姉妹のような仲の良さを見せていた。「妹は彼女にとても懐いていました。ふたりで料理を作ったり、海外ドラマを一緒に観たりして、コロナ禍の生活を楽しんでいるようでした。
理想とかけ離れた大学生活にふさぎ込んだような妹を心配していたんですが、この共同生活で回復して見えて安心したほどです。
だが、そうした生活もあっけなく崩れる。ある日、光さんが「一回、家に帰る」と言ったきり、浩平さんの家にやってこなくなってしまう。
「最初のうちはあまり気にしていなかったんですが、一週間経っても戻らないし、連絡を入れても返信がなくて……。コロナ禍ということもあり心配が募りました」
家を訪ねてみるも、どうも話がかみ合わず…
彼女には「一人になりたいんじゃないの?」と言われながらも、浩平さんは用事ついでに光さんが一人暮らしをしている家に行ってみることにした。「インターホンを鳴らしてみても、出てこなくて……。部屋に灯りは点いていているので居るはずだと思い何度も鳴らしたところ、ようやくドアが開きました。妹は暗い顔をしていて、吐き捨てるように『何しに来たのよ』と言うんです」
家に来ていた頃とはまるで違う様子に驚きながら、心配していたことを光さんに伝えた。
「『来ないから心配してたんだぞ』と言ったところ、『お兄ちゃんが来るなって言ったんでしょ!?』と言われました。なんのことだと思って聞いてみると、彼女からそう聞いたとのことで」
彼女は「妹をパシリのように扱っていた」
浩平さんは光さんから彼女とのチャットを見せられた。「そこには『家が密になるから、光にはウチに来ないでほしいと思ってるって言ってたよ』と書かれていました。思わず絶句しましたね。さらに、彼女は妹をパシリのように扱っていたこともわかったんです。うちに来ていた頃から、料理の食材は全て妹に買いに行かせていたそようでしたね。自分は妹の学費を一部払っているんですが、彼女はそのことを盾に妹に買い物などの雑用をこっそり押し付けていたらしく」
浩平さんは彼女を問いただすことにした。
「彼女はシレッと『だって、あの部屋で3人で暮らすのは狭いでしょ』と言い、『あなたが思っていたことを代弁しただけ』と開き直りました。パシリのように扱った件については、『学生で時間もあるんだし、あなたは学費も出しているんだから、それぐらいはして当然でしょ』とまで切り捨てました」
真顔で「義理の姉になるんだから」と…
浩平さんは、「君が学費を出しているわけじゃないし、妹をパシリのように扱う権利はない」と一刀両断。しかし、驚くべき答えが返ってきた。「彼女に真顔で、『私たち結婚するんだよね? 私は義理の姉になるんだからそれぐらい言う権利がある』と言われました。でも、彼女と結婚する約束なんてしていませんでした。なのに、さも当然かのように言われ、もう一切合切ドン引きでしたよ。気持ちが瞬時に冷めてしまい、別れることにしました。縁が切れるまでかなり揉めましたが……」
=====
その別れから間も無くして、元カノは浩平さんとはまた別の同僚と交際・スピード結婚を果たす。だが案の定とでもいおうか、1年も待たずして離婚に至ったようだ。
<TEXT/和泉太郎>
【和泉太郎】
込み入った話や怖い体験談を収集しているサラリーマンライター。趣味はドキュメンタリー番組を観ることと仏像フィギュア集め