2023年6月15日、乃木坂46の公式ライバルグループとして結成した「僕が見たかった青空(通称:僕青)」。
同年8月30日に「青空について考える」でデビューすると、第65回日本レコード大賞新人賞を獲得。
8月6日に発売する6thシングル「視線のラブレター」では、青空組のメインメンバー(センター)に雲組で頭角を現した杉浦英恋が抜擢される。その一方で、涙を飲んだ雲組メンバーがいる。この連載では、雲組単独公演のライブとともに雲組で切磋琢磨するメンバーに注目していく。
雲組に入って感じた温度差とメンバーの自信
デビューシングルから青空組で活動し、6thシングル「視線のラブレター」で雲組に初めて移動になったのが、塩釜菜那だ。僕青のリーダーを務める塩釜が選抜を外れたことはファンにも激震が走った。塩釜本人は、選抜発表後はしばらく椅子に座ったまま涙をこらえて下を向いていた。「ずっと選抜発表が怖かったんです。『リーダーだから青空組に入れてるんだろ』って思われてるんじゃないかって。周りでどんどん活躍していく青空のメンバーがいるなかで、私は自分が成長する事に目を向けられていなかったと悔しさがこみ上げました」
リーダーとして、誰よりもグループのことを考えてきた。塞ぎ込む塩釜に対してスタッフは、「雲組のパフォーマンス力は向上しているが、まだ気持ちの面でついていけていない部分がある。だから、その部分を引っ張り上げてほしい」とその思いを彼女に託した。

「雲組に入って感じたことは、どこか自分に自信がないメンバーが多いなと感じたんです。私は雲組の単独公演の映像を毎回チェックしていたので、決して実力が足りないわけじゃないんです。まだ雲組に移動して少ししかたってないけど、初めて雲組のライブを観た人が、『この子たちは頑張ってる、また観たい!』と感じてもらわないといけないんです。だから、はっきり言わないとと思ったんです」
「ここで腹をくくらないと一生私は変わらない」
2025年7月11日、雲組単独公演#20・東京公演が迫っていた。7月7日に23歳の誕生日を迎えた塩釜は、仲間にかけたプレッシャー以上のものを課して挑もうと誓っていた。「今までの私は失敗するのが怖いからできることしかやらない、それ以上は踏み出さない。そんな自分が嫌で、だからこそ自分のプライドを捨てて、たくさん失敗しようと思ったんです。青空組から雲組に環境が変わって、自分自身も変わるチャンスですし、ここで腹をくくらないと一生私は変わらないと思いました」

「雲組の新曲『虹を架けよう』の初披露をはじめ、私が初めて披露する曲が結構あったので、私自身が話している余裕がなくて。緊張しやすい性格だから、自分ができるところまでやったって自信を持ってステージに立ちたかったから」
雲組公演で強くなった「私を見て!」という想い

デビュー曲「青空について考える」から公演はスタート。ユニットで披露したダンスナンバー「臆病なカラス」では、気迫あふれるパフォーマンスで観客の目線を釘付けにした。
「私が雲組になったときに、『臆病なカラス』を踊りきることを目標にしていたんです。この曲は青空組メンバー5人のユニット曲なんですが、私がポジションに入った(吉本)此那に負けないぐらい、自分の色を交えながら最高のものを届けたいと思ってパフォーマンスしました」

「『炭酸のせいじゃない』の2番のところは私の歌パートがサビまでないから、会場を見渡すんです。ペンライトを振っている方もいれば、指揮してる人もいて、本当にライブを楽しんでくれてるんだなって(笑)。それから雲組に入って『空色の水しぶき』でソロパートを初めてもらって、“ななちゃん”コールを聞けたときは本当に嬉しかった。雲組に入って12人になったからこそ、ステージで1番輝いていたいし、『私を見て!』っていう想いが強くなりました」
6人兄弟、二度の警察官試験、保育士も目指した“泣き虫リーダー”
鹿児島県生まれ。6人兄弟の3番目として生まれた。
アイドルへの思いは抱きつつも、警察官の試験を2度受けたり、保育士を目指すために福岡の短大に進学した経験もある。
「中学生ぐらいから『他人から強く見られたい』という気持ちが出てきて、警察官に憧れるようになったんです。警察官にはなれなかったですが、警察試験の勉強のときにニュースで、子供を保育施設に預けられない現状があるということを知って、『妹や弟の面倒を見てきたから、誰かのために役に立てるかもしれない』という想いで保育士を目指していました」

「私、人一倍、愛が強いと思うんですよ。メンバーのことを思ったり、人への感謝だったり、そういうことを考えると幸せだなと思って涙が出てくるんですよ。でも最近は、自分のことで悔しくて涙を流すことが多かったです」
僕青の成長を信じているし、いつだって前向きでいたい

「これまでの2年の活動で厳しい現実を感じているなかで、3年目になって気持ちが停滞しやすい時期に入ってきていると思うんです。でも私はそういう状況でも僕青の成長を信じているし、いつだって前向きでいたい。だからこそ、メンバーは僕青を知ってもらえる活動に全力で取り組むことが必要ですし、その覚悟を雲組から広げることが僕青の底上げにも繋がると思っています」
その姿勢は雲組の流れをいい方向に変えつつあるが、大きな課題もある。

僕青キャプテン・塩釜菜那の雲組での挑戦はまだ始まったばかりだ。
【塩釜菜那(しおがまなな)】

<取材・文/吉岡 俊 撮影/林 鉱輝(扶桑社)>
―[あの日夢見た雲組]―