現地23日(日本時間24日)に行われたツインズとの3連戦最終戦。
ところが8回にツインズ打線がカービー・イェイツを攻略。この試合初めて主導権を奪った。そして迎えた9回裏、2アウト走者なしからムーキー・ベッツが懸命の走りを見せ、内野安打で出塁。さらに連続四球で満塁の好機をつくると、最後は4番フレディ・フリーマンが逆転サヨナラの一打をレフト前へ運んだ。
負けていればオールスター後の成績を1勝5敗としていたドジャース。投打がかみ合わない現状を打破するにはこれ以上ない勝利だったといえるだろう。
打者・大谷は好調なのか
サヨナラのホームを踏んだ大谷は、9回裏の2死一塁の場面でまさかの申告敬遠。次打者が途中から出場していた控え選手のエステリー・ルイーズだったとはいえ、逆転の走者を出塁させるツインズの奇策は失敗に終わった。この日は本塁打と2得点でチームの勝利の貢献した大谷。初回に飛び出した一発は、チーム記録に並ぶ5試合連続本塁打だった。
ただ、大谷の打撃自体は決して好調というわけではない。オールスター後の成績を見ると、6試合で25打数6安打(打率.240)、10三振に対して四球は2つだけと、本塁打を除けば“扇風機”状態だ。
今月は2試合しか複数安打をマークしておらず、3安打の猛打賞は現地時間6月15日まで1か月以上もさかのぼらなければいけない。6月15日といえば、今季初登板を果たした前日。つまり、投手復帰後の大谷は、一度も猛打賞がないということになる。
進化を遂げた「投手・大谷」
それでも大谷はイニング制限がある中、投手として着実に結果を残している。これまで6試合、計12イニングを投げ、許したのは2点だけ。2度目のトミー・ジョン手術を経て、さらに進化した印象すらある。マイナーで調整中であってもおかしくない時期にもかかわらずだ。2年ぶりの二刀流がやや打撃に悪影響を与える部分もありそうだが、今後予想されるパドレスやジャイアンツとの熾烈な地区優勝争いに向けて、打者としてそろそろエンジンをかけ直したいところでもあるだろう。
数字に表れている「打棒爆発の予兆」とは
ここ数週間は“一発頼み”になっている大谷だが、実は打棒爆発の予兆を垣間見せている。もちろん目下継続中の連続本塁打記録もその一つだが、別の“サイン”がBABIPという指標にも表れている。BABIPとは、「Batting Average on Balls In Play」の略で、本塁打を除くインプレーの打球のうち安打となった割合を表す指標のこと。痛烈なライナーが野手の好捕に遭いアウトになることもあれば、ボテボテの当たりが内野安打になることもある。つまりフィールド内に飛んだ打球がどうなるかは運の要素が大きいというわけだ。
このBABIPの数値は高ければ高いほど運がいいとされるが、長いスパンで見ると、どの打者もおおむね.300前後に落ち着く。
大谷に話を戻すと、今季はBABIPが.295と3割を割り込んでいる。これまでの大谷はシーズン打率.190と大不振に陥った2020年を除けば、メジャーで毎年3割を超えるBABIPを記録してきた。
大谷のBAIBIPは高い傾向
なお、もっとも“打球運”が良かったのがメジャー2年目の2019年で、BAIBIPは.354だった。その後も20年を除けば毎年3割以上をマーク。逆にもっとも“打球運”が悪かった年の21年でも.303である。大谷は運も味方につけつつ、安打になりやすいライナー性の当たりが多いのも特長。さらに俊足を生かした内野安打が多いため、BABIPはやや高めに出ており、今季を含めたメジャー通算BABIPは.324をマークしている。
ところが先述した通り、大谷の今季BABIPは3割に届いていない。これは7月に入ってから大きく下げた影響で、実際月間BABIPはわずか.154。これは、2020年7月にマークした.125に次いで自己ワースト2位である。
昨年終盤のような活躍に期待できるワケ
ただし、BABIPの低下は何も悪いことばかりではない。7月以降の大谷は単に運に恵まれていないだけともいえるだろう。すでに本塁打量産態勢に入った大谷が、“幸運”も手にすることになれば、歴史的快挙を遂げた昨年終盤のような活躍にも期待できそうだ。
チームは7月末に迎えるトレード期限を前に、補強に動く可能性が高い。それと同時に現有戦力の底上げと、こぞって不調に落ちっている野手陣の巻き返しは必要不可欠。なかでも大谷が1年前の再現を果たすことができれば、ドジャースは2年連続世界一に大きく前進するだろう。
文/八木遊
【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。