プロ野球の世界では、各時代に才能の集合体=「〇〇世代」が存在してきた。イチローや松中信彦、小笠原道大らの「イチロー世代」、松坂大輔を中心とした「松坂世代」、斎藤佑樹や田中将大、坂本勇人、前田健太らの「ハンカチ世代」、そして大谷翔平・鈴木誠也らの「大谷世代」などなど、枚挙にいとまがない。

彼らは一時代を築き、球史に名を刻んできたが、時間は残酷なまでに流れ、当然ながらやがて主役は交代していく。

現在、瀬戸際といえるのが「ハンカチ世代」(1988年度生まれ)ではないか。ご存じの通り、高校時代から大きな注目を集め、一時代を築いた。しかし、その多くはキャリアの晩年に差し掛かり、厳しい現実に直面している。

もはや「ハンカチ世代」は風前の灯火に。今がピークの「大谷世代...の画像はこちら >>

衰えと再起を懸ける「ハンカチ世代」

「ハンカチ王子」こと斎藤佑樹(元・北海道日本ハムファイターズ)が2021年に引退したことを皮切りに、堂上直倫(元・中日ドラゴンズ)や増田達至(元・埼玉西武ライオンズ)などもすでに引退。世代全体がキャリア終盤に差し掛かっている。巨人の田中将大は球威が明らかに落ちていることもあり、不安定なピッチングが続く。坂本勇人もキャプテンシーは健在なものの、全盛期と比べるといささか寂しい数字である。前田健太(現・シカゴカブス傘下)は、35歳前後から苦しい状況が続いており、復活を印象づけるほどの成績は残せていない。

柳田悠岐(現・福岡ソフトバンクホークス)も昨年から怪我しがちになり、今シーズンも離脱中。広島東洋カープの秋山翔吾、會澤翼や宮崎敏郎(現・横浜DeNAベイスターズ)といった同世代の名手たちも、それぞれのチームで重要な役割は担うものの、成績や出場機会には陰りが見えてきている。

黄金世代と称された「ハンカチ世代」が、今や世代交代の波に飲まれつつある。

躍動する「大谷世代」──今がピーク

その一方で、現在最も存在感を放っているのが1994年生まれの選手たちだ。大谷翔平と鈴木誠也というメジャー組は言うまでもなく、国内組も粒ぞろい。
西川龍馬(現・オリックスバファローズ)はパ・リーグ打率ランキングで上位に入り、近本光司(現・阪神タイガース)はルーキーイヤーから走攻守そろって安定した活躍を見せている。床田寛樹(現・広島東洋カープ)や田中正義(現・北海道日本ハムファイターズ)も近年安定した投球を見せており、チームのローテーションやブルペンを支える存在だ。

また、巨人の吉川尚輝は攻守で欠かせない中軸となっており、阪神の大山悠輔やDeNAの佐野恵太も波はあるもののチームの顔として定着している。

この「大谷世代」は今、間違いなくキャリアのピークにある。年齢的に心身ともに成熟し、プレーに脂が乗る時期だ。

「大谷世代」の次は「佐々木世代」が…

実力がものをいうプロ野球の世界で、選手は常に“世代の入れ替わり”と“ピークの重なり”という交差点に立っている。

「ハンカチ世代」は、今まさにキャリアの晩年を迎え、次の世代へとバトンを渡しつつある。一方で、「大谷世代」はまさに今が主役。数字でも存在感でも、リーグを牽引する選手たちが集まっている。

もちろん、いずれ「大谷世代」にも世代交代の波が訪れるわけだが、それまでにどれだけ鮮烈な記憶を刻めるかが楽しみで仕方がない。

佐々木朗希(現・ロサンゼルスドジャース)や宮城大弥(現・オリックスバファローズ)、武内夏暉(現・埼玉西武ライオンズ)らが活躍している2001年組をはじめとした若手から中堅の台頭も進行中。いわば「佐々木世代」の彼らと「大谷世代」が共闘する2026年開催のWBCは、大いに期待できる。
日の丸を背負って金メダルに導き、なにかと暗い話題の多い日本列島を沸かせてほしいところだ。

<TEXT/ゴジキ>

【ゴジキ】
野球評論家・著作家。これまでに 『巨人軍解体新書』(光文社新書)・『アンチデータベースボール』(カンゼン)・『戦略で読む高校野球』(集英社新書)などを出版。「ゴジキの巨人軍解体新書」や「データで読む高校野球 2022」、「ゴジキの新・野球論」を過去に連載。週刊プレイボーイやスポーツ報知、女性セブンなどメディアの取材も多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターにも選出。日刊SPA!にて寄稿に携わる。Instagram:godziki_55 X:godziki_55 TikTok:@godziki_55 Facebook:godziki55
編集部おすすめ