「ワンオーダー制」を無視する外国人観光客
小鳥遊みどりさん(仮名)は、東京都内のカフェで働いている。そこは有名な神社の近くにあるため、連日多くの外国人観光客が訪れるという。ある外国人観光客の家族が来店したときのことだ。
「はじめは母親と思われる女性とその2人の子どもの合計3人で来店されました。そしてしばらくメニューを眺めたあと、レジでジェラートを1つだけ注文しました。ここまでは通常通りでしたが、問題はここからです……」
このカフェでは店内利用の場合、1人につき1品の注文が必要な「ワンオーダー制」を採用している。レジカウンターには日本語と英語で注意書きも掲示してあった。
「その旨をレジにいたスタッフが説明したところ、『こっちはすでに代金を払っているのに、子どもの分まで注文させる気か!』と声を荒げて、明らかに不機嫌な表情になったんです」
子どもたちが店内で暴走
そんなやり取りをしている最中、さらに子どもたちが店内を暴走し始めたのだ。「店内をバタバタと走りまわり、お店に置いてあるものを勝手にいろいろと物色して。しまいには椅子の上に土足で乗ったり、お客様のために設置してある木のマドラーを大量につかんではボキボキと折って……ありえないです」
スタッフたちは必死に注意したが、子どもたちはまったく聞く耳をもたなかった。そして事態は悪化する。
「そうこうしているうちに、父親と思しき人物が、外で購入したと思われるペットボトルの飲料水を持って合流。レジでは何も注文せず、何事もなかったかのようにそのペットボトルを飲み始めたのです」
改めて注意をすると、今度は父親から高圧的な態度で責められることに。
「父親から『さっきから客に向かってその態度はなんなんだ! 頭にきたからお前らのことを口コミに書いてやる!』と言われて。英語が堪能ではないので、その父親がスマホで悪質なレビューを書く様子を黙って見ているしかなかったんです」
書き終わった途端、この父親は飲みかけのペットボトルをスタッフに突き付け、「これを捨てておけ」と言い放った。そして男性用のトイレに入っていったという。
最後の“置き土産”にウンザリ

「トイレに行くと、なんと床がびしょびしょに濡れていたんです。先ほどの父親が、故意に汚していったとしか考えられません」
小鳥遊さんたちスタッフは、怒りと悲しみを抱いたという。
「ひとまず口コミの件に関しては、すぐに該当のレビューサイトに申し立てをしました。ただ、今回の出来事を通じて、外国人観光客のマナーについて深く考えさせられましたね」
インバウンドが盛り上がる一方で、現場では対応に苦慮するケースも少なくないようだ。
<文/藤山ムツキ>
【藤山ムツキ】
編集者・ライター・旅行作家。取材や執筆、原稿整理、コンビニへの買い出しから芸能人のゴーストライターまで、メディアまわりの超“何でも屋”です。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』『10ドルの夜景』など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ』シリーズほか多数。