それからおよそ10年。当時ほどTVで姿を見かけることは減ったものの、現在は漫才協会に入会し、老舗の演芸場でネタを披露し続けている。ブレイク当時のことや、再ブレイクに向けた意気込みを語ってもらった。
ブレイク当時の最高月収は800万円!
ーー約10年前になりますが、ブレイクした当時、一番驚いたことは何でしたか?長谷川:やっぱり収入がめちゃくちゃ増えたことですね。月収は一番多かった月で800万円でした。CDシングル『あったかいんだからぁ~♪』の印税と重なったタイミングで、口座を見てびっくりしました。
佐藤:当時はアルバイトしかしていない状況だったので、突然大金が手に入って僕も怖くて使えませんでした。
長谷川:今思えば、後々番組でエピソードになる使い方をすればよかったと思いますが、実際にできたことと言えば、ちょっといい家電を買ったくらいです。
佐藤:あとは忙しさにも驚きました。テレビ出演と営業が一気に入って、一年くらいは丸一日の休日はなかったと思います。営業のオファーが全国各地から入ったので、移動で飛び回っていました。
長谷川:僕らの場合はそれに加えてレコーディングとか、新曲の打ち合わせとかもあったんで、お笑いだけでブレイクした芸人よりも忙しかったかもしれないですね。
ーー「あったかいんだからぁ~」ブームが落ち着いてきたと感じたのはいつ頃でしたか?
長谷川:’15年の秋頃ですね。当時、とにかく明るい安村さんが「安心してください。履いてますよ」で一気に売れて、安村さんと入れ替わる形で僕らのテレビや営業のオファーが激減しました。一発屋の宿命といえばそうなんですけど、わかりやすいなぁと思いました。
佐藤:需要がなくなってきたのもありましたが、’15年の夏が当時の観測史上最大の猛暑だったこともあって、「あったかい」どころじゃなかったのも影響したかもしれません。
長谷川:夏に聞けるように盆踊りバージョンの「あったかいんだからぁ~♪」とかも作ったんですけど、猛暑には勝てなかったですね(笑)。
故・志村けん氏の言葉「全力でやり続けなさい」

佐藤:いまも活動を続けるシンガーソングライターの女性に、「印象に残るフレーズは大事だと思うよ」って偉そうにアドバイスしたのはとんでもなく調子に乗っていたなと思いますね。
長谷川:そもそもほとんど歌わない方なのにな(笑)。
佐藤:室内なのになぜかサングラスまでかけてましたから(笑)。あれは完全に天狗でした。
長谷川:僕は「あったかいんだからぁ~♪」を毎回全力でやっておけば、もう少しブレイク期間が伸ばせたのではないかと思います。自分でこのネタに飽きてしまって、雑にやることもありましたし。
佐藤:冗談抜きで毎日100回くらい言っていたから、飽きてしまうのもしょうがないけどね。
長谷川:志村けんさんに一度だけお会いしたときに、「君たちはお客さんにウケるフレーズを見つけたんだから、全力でやり続けなさい」と言っていただいて、絶対に手を抜いたらダメだなと痛感しました。なので、今でも漫才で「あったかいんだからぁ~♪」をやるときは全力で挑んでいます。
地方でレギュラーが始まるも終了……漫才協会に入会

佐藤:富山出身の有名人だと立川志の輔さん、柴田理恵さんがいるんですが、久しぶりに富山出身で売れた芸能人として歓迎されて嬉しかったですね。
長谷川:僕は埼玉出身ですが、その頃は毎週富山の居酒屋で飲んでました。北陸のレギュラー番組は2023年に終わりましたが、その後もちょこちょこ行ってます(笑)。
佐藤:なんで出身の俺より馴染んでるんだよ(笑)。

長谷川:漫才協会の会長であるナイツの塙(宣之)さんから声をかけていただいたんです。北陸のレギュラー番組が終わって、改めてネタを頑張りたいと思っていたタイミングだったので入会しようと思いました。
佐藤:やっぱり漫才は好きなんですよね、二人とも。
――現在は、ビートたけし氏が若手時代に芸を磨いた場所として知られる浅草の「東洋館」で開かれる、漫才協会の定席寄席にも定期的に出演しています。
佐藤:舞台に頻繁に立つようになって、やっぱりネタをやってないと芸人って腐っちゃうなと感じましたね。
長谷川:昭和26年に開業した歴史ある演芸場ですが、今も「あったかいんだからぁ~♪」がウケるんで頑張らないとなぁと身に沁みます。

長谷川:漫才で頑張っていきたいので、何か賞は取りたいなと思っています。「クマムシ」の結成が2010年、M-1グランプリの出場資格が結成15年以内なので、2010年結成のクマムシはM-1グランプリの出場資格が「結成15年以内」なので実はまだM-1グランプリにギリギリあと2年出られるんですけど、出てる芸人のレベルが高すぎてM-1は出場をビビっています。
佐藤:お前がネタ書いてるんだから、頑張ってくれよ(笑)。
長谷川:’23年から始まった出場資格が結成16年以上の「THE SECOND~漫才トーナメント~」(フジテレビ系列放映)という大会があり、代わりにこちらは出てみたいなと。老若男女を笑わせられる芸人になるのが目標ですね。
佐藤:僕は長谷川に捨てられないように頑張るだけです!
長谷川:前に富山の居酒屋で日本酒を飲みながら「俺も頑張ってるんだよぉ」って号泣してたけど、お前も頑張ってるのは知ってるから。
佐藤:あれはお前が馴染みすぎて肩身が狭かったんだって!
世間からは「一発屋芸人」の認識が強いものの、現在も演芸場に立って新たなネタを披露するなど、クマムシは芸を磨き続けている。第二のブレイクを果たす日が来るか、二人の今後に注目したい。
【松嶋三郎】
浅く広くがモットーのフリーライター。紙・web問わず、ジャンルも問わず、記事のためならインタビュー・潜入・執筆・写真撮影・撮影モデル役など、できることは何でもやるタイプ。