―[貧困東大生・布施川天馬]―

 2025年7月7日。世間が七夕で浮かれている頃、私(布施川天馬)は一人、大阪本町のホテルに宿泊していた。

 目的はただ一つ、大阪・関西万博訪問である。

 知り合いの映像作家の方から「万博がすごく良い!」と勧められ(彼は年間パスポートを既に購入したらしい)、彼の案内で万博がどのようなものか見てくることにしたのだ。

 だが、私は意気込みむなしく朝から乗り込んだにもかかわらず、昼過ぎにはホテルへ帰っていた。ここで学んだ「大阪・関西万博を楽しむために注意すべきこと」をお伝えしたい。

大阪万博に朝イチで行ったら、昼前に帰るハメになった“予想外の...の画像はこちら >>

10万人を余裕で収容する大阪万博

 結論から言えば、当日は昼から回るべきだ。「ものすごく多くのパビリオンがあり、会場面積も広大なため、とても一日では回り切れない」と聞いたので、私は早朝から楽しむつもりで前のりしたが、あまりお勧めはできない。

 当日は朝8時前に集まり、夢洲へ向かった。到着時刻は8時15分頃だったが、私のチケットに記された入場時刻は9時。

 ディズニーランドに遊びに行くようなスケジュールだが、「入場まで数十分はかかる」と聞いたため、かなり早くから準備をした形。結局入場できたのは、9時20分頃だったから、前情報は正しかったといえる。

 異常に混みあった入り口付近の印象に反して、会場内は快適も快適。あちらこちらにベンチが設置されており、自動販売機やコンビニ、休憩所も常に徒歩5分圏内のどこかを探せば見つかった。

大阪万博に朝イチで行ったら、昼前に帰るハメになった“予想外のワケ”「内容が非常に良かっただけに、本当に残念」
会場内のベンチ
 トイレの設置個所数や、設置便器の数はもちろん、清潔さは群を抜いており、一日に数千~数万人が利用するとは思えないほどだった。


 汚れ一つ、チリ一つ落ちておらず、もちろん嫌な臭いなんてみじんもしない。さらに、ゴミ箱の設置も十分行き届いており、手に空のペットボトルなどゴミを持ち歩いた記憶がない。

 博覧会協会によれば、私の訪れた7月8日の来場者数は、関係者含めて10万8000人。

 ディズニーランドならば大混雑で息もできないほどだろうが、ディズニー・USJの3倍もの面積を誇るだけあって、全く混雑は感じなかった。むしろガラガラすぎて「万博、大丈夫?」と心配になるほど。

会場に凝らされた意匠と展示物に大満足

大阪万博に朝イチで行ったら、昼前に帰るハメになった“予想外のワケ”「内容が非常に良かっただけに、本当に残念」
大屋根リング内部
 ネット上で物議をかもした「大屋根リング」は、伝え聞いていた印象とは真逆の「オシャレ和風スポット」だった。

 木組みがむき出しになっている構造は、「張りぼて」とは全く感じられず、それ自体がしっかりとしたデザイン建築として成立している。

 また、隙間がある構造のおかげで風通しがよく、日差しのキツい真夏の日本をどのように過ごしてきたか、日本人の知恵が伝わるようだった。

 階段やエスカレーター、エレベーターを使えばリング上部へ上がることも可能で、一望できる景色は「絶景」の一言。

大阪万博に朝イチで行ったら、昼前に帰るハメになった“予想外のワケ”「内容が非常に良かっただけに、本当に残念」
大屋根リングからの景色
 適度に緑が植えられているおかげで、人工物くさい印象が緩和され、自然との共生をイメージさせる仕上がりになっていた。夜になると、リング上からドローンショーなどを見ることもできるとか。

 私は昼過ぎに帰ってしまった関係で3か所しかパビリオンを回れなかったが、どれも非常に力の入った作品を鑑賞できて、全く不満はない。

 特に、人気作品『機動戦士ガンダム』がテーマの『GUNDUM NEXT FUTURE PAVILION』では、戦争が終わり、モビルスーツが平和利用されるようになった未来の日常風景が見られた。


 もちろん、ガンダム(RX-78F00/E)も活躍するので、ファンの方はぜひ観に行ってほしい。私は今年に入ってからファーストシリーズをすべて見通したようなにわかファンだが、それでも胸が熱くなる体験ができた。

大阪万博に朝イチで行ったら、昼前に帰るハメになった“予想外のワケ”「内容が非常に良かっただけに、本当に残念」
ガンダム


子供の知的好奇心を刺激する場所として最適

大阪万博に朝イチで行ったら、昼前に帰るハメになった“予想外のワケ”「内容が非常に良かっただけに、本当に残念」
落合陽一監修「null²」
 もしも夏休みに行くべき場所で迷っているようならば、ぜひ万博に足を運んでほしい。

 特に、子どもたちの知的好奇心を刺激するような体験をしてほしい、国際社会を体感してほしいと願うならば、なおさらだ。

 国や企業が協力しつつ、共通するテーマについて、それぞれの答えを出す。そこに至るまでに、どのような考えが繰り広げられたのか、なぜタイトルがそうなったのかなど、すべてのもの・ことに意味がある空間に案内することは、「どうして勉強しなければいけないのか」の答えにもなると私は感じる。

 もちろん、子どもたちだけでは、閃けない部分もあるだろうから、保護者の下調べと勉強が必須になる。

 例えば、落合陽一氏の手掛ける人気パビリオン「null²(ヌルヌル)」だが、「ぬるぬるだって」と笑うだけでなく、「なぜ『ヌルヌル』と名付けられたのか?」「そもそも『null』とはどんな意味か?」「仏教の『空』と『null』の共通点・違いは何か?」など、適切な問いかけを投げかけることができれば、学校や塾では決して学べないような、幅広く奥深い知の世界の一端を、子どもの目に映すことができるだろう。

朝イチでの来場はオススメできないワケ

大阪万博に朝イチで行ったら、昼前に帰るハメになった“予想外のワケ”「内容が非常に良かっただけに、本当に残念」
総長の会場前は人混みが避けられない
 ただし、私のように昼前に帰りたくなければ、朝イチで会場に乗り込むのはお勧めできない。なぜならば、私はそのせいで熱中症になってしまい、都合3日間寝込む羽目になってしまったからだ。

 来場人数に対して、確かに会場面積は十分すぎるほどだった。入場後は、全く不平不満を感じることはない。だが、入場ゲート前は別だ。
見渡せる程度の面積に、数千、数万という人が「これでもか」と押しかけ、さながら平日朝の満員電車の様相を呈する。

 問題は、電車のようにクーラーが効いておらず、頭上からは日光がさんさんと降り注いでいることだ。

 照射される熱光線は確実に私たちを温め続け、さらに来場者同士の距離が10センチにも満たないゲート前は、サウナを思わせる保温効果を誇る。

 私は熱さに弱く、温泉にも5分と浸かっていられないほどなのだが、そんな人間が1時間も熱されてしまえば当然グロッキーになってしまう。

 これは万博運営側の不手際ではない。運営は東と西に来場者ゲートを分けて、チケットごとに入場時刻を区分けするなど、最大限の努力はしていた。

 だが、どうしても来場ゲート手前の荷物検査には時間がかかる。X線検査と金属探知機による二重検査という徹底具合で、安全管理上ここの手間は省けないだろう。

 だからこそ、熱に弱い自認があるならば、混雑しやすい午前中は避けるべきだ。私が帰った14時頃には、来場・退場ゲートともにスカスカだったので、少し時間を空けて昼頃に来場することを強くお勧めする。

 内容が非常に良かっただけに、自己管理の甘さから楽しみきれなかったことが、心から悔やまれる。涼しくなってきた9月末~10月頃ならば、この悲劇は起こりにくいだろう。


 既に筆者は10月の来場を誓い、チケットも予約済みだ。行ってみると意外と楽しめる大阪・関西万博は、10月13日まで。気になっているならば、ぜひ予約してみてはいかがだろうか。

<文/布施川天馬>

―[貧困東大生・布施川天馬]―

【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa)
編集部おすすめ