三上さんを擁護する人、ポスト投稿者の意見に賛同する人、中立的な意見を述べる人など、SNS上では様々な意見が飛び交い、数日間にわたって問題提起され続けたのである。
炎上騒動に対する元セクシー女優の本音
元セクシー女優である私は、世間一般から見ると“アチラ側”の人間であり、立場上演者の気持ちを多少なりとも理解できるせいで、女優の肩を持ってしまう部分は否めない。オファーをしたのは紛れもなくドレスブランドであり、彼女は依頼を引き受けただけなのだ。嫌がらせのために、ポスト投稿者と同じ衣装を被せたわけでもない。ハッキリ言ってしまうと、演者本人にはまったく罪がないと言えよう。
とはいえ「セクシー女優とお揃いなんて着たくもない」という意見が飛び出すのも、理解はできる。もちろん私は何も気にならないけれど、それは元セクシー女優だからであって、日陰の商売に対してあまり良い印象を抱かない人間が「彼女らと私達を一緒にしないでくれ」と思うのも仕方がないからだ。
女優は性産業で、本来であれば人前にバンバン登場する仕事ではなかったからこそ、余計に嫌悪感を抱かれやすいのだろう。
では、今回のトラブルをどう見るか。筆者個人の意見としてはセクシー女優も、ポスト投稿者もどちらも悪くないと思う。前者は仕事を引き受けただけに過ぎず、後者は自分なりの意見を主張しただけなのだ。これを「元セクシー女優が表舞台に出る方が悪い」だの、「職業差別」だの、「どっちかが悪い」と真っ二つにするのは少し違うように感じた。
疑問が残る「ドレスブランドの方向性」
どちらかというと私は、ドレスブランドの方向性が気になった。大人気でファンが多い元・セクシー女優に依頼すれば見栄えも良く、話題にもなるが、変わった経歴のタレントを起用すれば何かしらのデメリットが出てくるだろう。結婚式のドレスという一生に一度しかない特別な衣装だからこそ、女性は特にデリケートになる。「もっと多方面から物事を考える時間が必要だったのでは?」と、企業に対して難しい疑問を抱いてしまった。
セクシー女優のメディア進出は悪いこと?
ビデオの外を飛び出して活躍するセクシー女優は、以前より存在した。平成後期~令和にかけて母数が増え、SNSの普及で活動の幅が広がったからこそ、人目に触れる機会が多くなっている。そのおかげで職業に対する偏見が減ってきたのは確かだが、あくまで減っただけ。仕事内容が内容なのだから、偏見がゼロになる日はくるわけもなく、基本的には差別的な目を向けられるのが普通だ。最近は批判が減りつつあるから「市民権を得た!」と勘違いする女優も山ほどいるが、あぐらをかいてはならない。偏見の目を向けるのも世間の人だが、“市民権”を与えてくれたのもまた世間の人である。もともと立場が有利ではない仕事なのだ。
現在の状態に感謝しつつ批判を受け入れながら活動するべきで、世の中に「職業を認めろ」とせがんだり、噛みつくのはお門違いだと私は考えている。
かといって、怒り心頭の人々が言う「セクシー女優のメディア進出を完全廃止」という意見もあまり納得がいっていない。ずいぶん前から引退後にテレビに登場する元・女優はいたし、多様性が重視されるこの時代で勢いを止めることなどはできないだろう。
セクシー女優の需要が高まっている理由
近頃は変わった経歴の人間や、マイナスからプラスのギャップが生まれるタレントが注目される傾向が強いのも、彼女らが活発になる理由の一つ。需要があるからメディア進出が可能なため、双方がうまく共存するほかない時代へと突入したのかもしれない。ああだこうだと議論をしても答えが明確に出ない問題だからこそ、毎回SNSが燃え上がってしまうのだが、何をもっていいこと・悪いことをジャッジするのかは個人に委ねられている。
おそらく今後も似たようなトラブルが起きるたびに様々な議論が交わされるが、結局のところ大切なのは「あなたがどう思うか」。批判するも良し、受け入れるも良し。悲しいかな、立場が弱い人は世間が「A」と叫び、その声が強いのなら大多数に従うほかない。私は常に、この考えだ。
文/たかなし亜妖
―[元セクシー女優のよもやま話]―
【たかなし亜妖】
元セクシー女優のフリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ソーシャルゲームのシナリオライターを経て、フリーランスへと独立。WEBコラムから作品レビュー、同人作品やセクシービデオの脚本などあらゆる方面で活躍中。