―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―

東京23区の中古ワンルームマンション中心に不動産投資を展開。現在、38戸の物件を所有し、時価資産額約10億円、年間家賃収入約4000万円の個人投資家・村野博基氏。
世の中では「誰が言ったかよりも何を言ったかが大事」とは建前ではなっていながらも、実際には「誰が言ったか」を重視する人が多いと村野氏は言います。「自己責任の原則に反し、自身の投資判断を磨くことに繋がらない」とも。投資でよく言われる「自己責任」の本質について村野氏が語ります。
資産10億円の不動産投資家が警鐘する「投資で絶対に勝てない人...の画像はこちら >>

「投資は自己責任」を理解はしていても…

投資においては「さまざまなリスクを十分に調べて理解し、自らの責任の上で投資は行う」という「自己責任の原則」があります。投資判断をするのは自分自身でその判断を他者に委ねてはいけません。金融機関も、口座開設や金融商品を購入する前に「投資は自己責任で」と説明を行うので耳にしたこともある方も多いはずです。しかし、この「自己責任の原則」を頭では理解していても、実行できていない方は私自身も含めて案外多いと思います。

こうやって記事で情報発信をするなかで一つ気がついたことがありました。それは、人は「何を言ったか」よりも「誰が言ったか」を重要視し、中身に対する理解をおざなりにする方が多いことです。

ビジネスの世界でも「上長が言っているので……」という理由で物事が進むケースが往々にして見受けられます。本来であれば、何を言っているかの「中身」が大事。例え権威のある人が言うことでも、「間違った内容」であれば否定されてしかるべきですし、末端の人が言うことでも「正しい内容」であれば認められて良いはずです。その方がより良い社会になるはずなのですが⋯⋯。
残念ながら中身の正誤の判断は脳に負荷がかかるため、「誰が言ったか」に判断を委ねてしまうのかもしれません。

誰が言ったかを重視してはいけない

これまでの記事でも、再三「借り入れはいくらあるのか?」、「家賃がそれだけあっても手元に残るお金は少ないのでは?」など私自身の状況に関するコメントを頂きました。

確かに「借金ばかりの不動産投資家の言うコトは信用できない」「大して儲かってもいないのに、資産額で虚勢を張っているのではないか?」と感じるのも一つの考え方でしょう。なかには「そろそろ都心のマンション価格も下がるし、物件を売り抜けたいから、利益誘導のために提灯記事を書いているのだろう」や「不動産はお金を刷る輪転機、と言い切るなんて詐欺の勧誘なのでは?」といった考えを持つ方も少なくないかもしれません。

しかし、そんなコメントを寄せる方にはあえて厳しいことをいうのですが……。もしこれまでの投資で利益を得られたならば、今すぐ神さまに感謝したほうが良いでしょう。今までが単に「運が良かった」に過ぎず、自身の投資能力の成果ではありません。なぜなら、上記のようなコメントは「文章から中身を判断する能力が私にはありません」と声高に主張しているようなものだからです。自身で文章から中身を判断ができない。だからこそ「この人はどれぐらいの資産を持っているのか?」「どのぐらい儲かっているのか?」という「誰が言っているのか?」で文章の正誤を判断しようとしているのです。中身を判断する能力がない人が、投資で恩恵を受けられたならば、それは幸運以外の何物でもないでしょう。

さらに、中身で「判断できない」または「判断しようとしない人」は、中身がよく分からないにも関わらず「有名人が推薦していたから」「専門家が問題ないと言っている」「みんなが投資しているから」などの理由で投資を始めてしまいます。

自分で判断できなければ容易に騙される

ひと頃、SNS広告でも「著名人の顔写真」を用いて「投資で儲かる方法・優良銘柄を教えます」という投資詐欺が横行していました。少し古いデータですが、警視庁によると2023年におけるSNS勧誘の詐欺被害額は277億9000万円になったそう。
これだけ詐欺についても啓蒙活動がなされていても、騙される人は後を絶ちません。

そもそも、「著名人が推している投資先ならば大丈夫だ」という判断は、「誰が言うのか」によって、その投資先の良し悪しを見極めています。「中身」で判断しているわけではありません。これは中身をきちんと自身で判断する責任を放棄し、全て著名人という他者に「丸投げ」した状態です。逆にもし自身で投資先の中身を判断しているのであれば、誰が推していようが関係ないはず。たとえ借金まみれの人が推していたとしても、良いものと判断できれば投資はできるでしょう。

「投資は自己責任」というのは、「どのような結果になっても自分で責任を取る」という意味以上に、「投資の中身について自分の責任において判断をすること」こそが本意だと考えています。「決断すること」と「判断すること」とは別物です。ただ決める「決断」と、きちんと中身を理解してくだす「判断」を同一視しないよう注意が必要です。

価値を判別することの重要性

投資はアンテナを高くし、自分自身の見る目を、聞く耳を磨くことが大事です。物事の真贋や本質を見極めて判断できなければ、よほどの豪運でない限り投資で継続的に成果を得ることはできません。逆に物事の真贋や本質を見極めることさえできれば……。
当然に価値が判別できるので、投資で負けることは少なくなるはずです。

投資を行う以上は、その結果が上手くいくのも失敗するのも全て自分自身に責任があります。ただし結果は「出すもの」ではなく、「出るもの」「出てしまうもの」。結果とは常に未来に発生するものであり、自分で「出す」ことは往々にしてできません。

例えば、不動産の価格が上がっても、購入してくれる相手がいない限り、その金額は絵にかいた餅でしかありません。株価であったとしても、個人でつり上げることは一般人にはほぼ不可能です。となれば、結果が出るまでの「過程」の部分において“のみ”、自身が関与できる余地があるのではないでしょうか。

つまり「投資は自己責任」という原則において、自身が責任を果たすことができるのは結果に対してではなく、そこに至る過程においてのみ、です。そして、投資においては「中身を理解し見極める」という過程の部分でしか責任を果たすことができないのです。そこの責任を果たさず、自身が理解できないことを社会や他者のせいにし、自身以外に理由を求めているようでは、残念ながらいつまでたっても、単に社会や他者に賭ける博打にしかなり得ないのです。

「誰が」言ったか、よりも「何を」言ったか、が大事であること。これは覚えておいて損はない本質だと思っています。
私自身も自戒を込めてこの言葉をみなさんに贈らせて頂きます。

構成/上野 智(まてい社)

―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―

【村野博基】
1976年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手通信会社に勤務。社会人になると同時期に投資に目覚め、外国債・新規上場株式など金融投資を始める。その投資の担保として不動産に着目し、やがて不動産が投資商品として有効であることに気づき、以後、積極的に不動産投資を始める。東京23区のワンルーム中古市場で不動産投資を展開し、2019年に20年間勤めた会社をアーリーリタイア。現在、自身の所有する会社を経営しつつ、東京23区のうち19区に計38戸の物件を所有。さらにマンション管理組合事業など不動産投資に関連して多方面で活躍する。著書に『43歳で「FIRE」を実現したボクの“無敵"不動産投資法』(アーク出版)
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