’25年7月に行われた参議院議員選挙では、自民党・公明党が過半数割れで敗北。なかでも「日本人ファースト」を標榜、多くの有権者の“違和感”に火をつけた参政党が躍進した。
同党に共鳴し、政治への“目覚め”を語り出した人々の素顔に迫る。

有権者の心を摑んだ「反緊縮」「さや」候補

参政党・さや氏が40〜50代の男性の票を集めたワケは「“捨て...の画像はこちら >>
 “目覚めた”人々が参政党に共鳴した背景には、移民やジェンダー問題だけでなく、経済的救済への渇望もある。

 政治経済評論家の池戸万作氏は、同党の躍進を「反緊縮の明快な訴えと、それを体現する候補者の存在」と分析。中でも神谷宗幣代表の国債発行を堂々と主張する姿勢は、政治家として異例だと語る。

「日本の国債残高は1000兆円を超えているといわれますが、これは国際的に見ても突出しているわけではありません。30年間、まともに財政出動してこなかったツケが今、インフラの老朽化や貧困の拡大という形で表れているんです」

 そして、こうした反緊縮の訴えが特に響いたのが「就職氷河期世代」を中心とした生活困窮層や中高年層だったと分析する。

「“国がお金を出して助ける”というメッセージは、それこそ彼らに届いた“愛情”だったのではないでしょうか」

さや氏擁立の東京選挙区は「全国的な知名度」にも影響大

参政党・さや氏が40〜50代の男性の票を集めたワケは「“捨てられた世代”を代弁できる候補」だったから?
政治経済評論家・池戸万作氏
 もう一つ、戦略で極めて成功したと見るのが、東京選挙区に擁立されたさや氏の存在だ。

「彼女も就職氷河期世代。そして東京選挙区は全国から注目を集めやすい特別な舞台です。そこに“捨てられた世代”を代弁できる候補を送り込んだことで、感情的共感の獲得と全国的な認知度の引き上げに成功した。結果的に、40~50代の男性の票を一番取ったんです」

 たとえ議席を得ても、財政政策の主導権は財務省にあるため変革は容易ではないが……。

「財政法や財務省設置法を変えるには、相当な政治的意思と戦略が必要です。ただ、声を上げる勢力が増えれば、霞が関も無視できなくなるでしょう」

 参政党の台頭は、一過性のブームなどではなく、数十年かけて蓄積された“怨念”や“閉塞感”の結実と見られるのかもしれない。

辛酸を舐め続けた氷河期世代の鬱憤が“覚醒”に昇華!

参政党・さや氏が40〜50代の男性の票を集めたワケは「“捨てられた世代”を代弁できる候補」だったから?
※画像はイメージです
 参政党を筆頭に右派系議員が躍進を遂げた今回の選挙だが、SNSや街頭では“右派的な共感”を語る人の姿が、目に見えて増えはじめている。

 北関東の自治体で非常勤職員として働く深山俊さん(仮名・48歳)、もその一人だ。


 現在の職を得るまで、20年以上にわたり非正規雇用の不安定な立場に甘んじてきた。就職氷河期に大学を卒業し、最初に就いたのは自動車工場での期間工。

 そこでブラジル人労働者と同じ待遇を受け、「なぜ外国人と同じ条件で扱われなければならないのか」と、怒りを覚えたという。

「特に、小泉政権下で派遣法改正を進めた竹中平蔵への怨念は今も深いです。一時はその怒りから左派政党に傾倒しましたが、共産党の無力さに落胆し、再び寄る辺を失ってて……。平均月収は15万~20万円。職がない時期も珍しくなかった。信用もないから部屋も借りられず、車のローンも通らない。唯一の楽しみはAKB48のコンサート」

 永遠に続くかのような「死んだような毎日」に終止符を打ったのは、ある晩、スマホに映った参政党代表・神谷宗幣氏の演説だった。

「僕と同世代の男が、こんなに熱い思いを持って日本を変えようとしている。全身に電流が走ったかのようでした」

 気づけば、“陰キャ”だった深山さんは、1万人以上が集まる党の集会で、見知らぬ人たちと肩を組んで声を上げていた。それ以降、性格も明るくなり、何事にも積極的に臨めるようになったという。


「いまさら結婚も、世俗的な幸せも望みません。ただ、忌まわしい自公を倒して新たな国をつくりたい。それだけです」

ショート動画が「とにかくわかりやすかった」

参政党・さや氏が40〜50代の男性の票を集めたワケは「“捨てられた世代”を代弁できる候補」だったから?
参政党の動画は「これだ!」という感覚をくれると、高橋さん
 参政党を支持するのは“報われなかった男性”ばかりではない。

 高橋美桜さん(仮名・48歳)は、高校卒業後に複雑な家庭環境から逃げるようにキャバクラで働きはじめ、30代半ばまで月収100万円を稼ぎ続けた。転機は、コロナ禍が明けた頃。参政党のショート動画が目に飛び込んだ。

 そこでは、外国人による土地買収や、留学生への過剰な優遇策が明快に語られていた。

「とにかくわかりやすくて、日本の敵とその原因を繰り返し教えてくれました」

 彼女もまた就職氷河期世代だが、「つらいと思ったことはない」と口にする。その裏には、女性ひとりで社会を渡ってきた自負が滲む。その誇りが、「自国民に冷たく、外国人に優しい」現政権への怒りに火をつけたのだろうか。

「フリーでずっとやってきたから、社会の空気には敏感。日本人の暮らしが苦しくなる中で、外国人を優遇するのはどう考えてもおかしいでしょ」

 高橋さんはまた、「陰謀論者と言われるのはわかってて見ている」ともこぼした。
参政党の生み出した熱狂の引力の強大さは、外側からでは計り知れないものがあるのかもしれない。

【政治経済評論家・池戸万作氏】
「消費税増税のリスクに関する有識者会議」の最年少出席者。財務省前で反緊縮デモのほか、全国各地で講演活動も行っている

取材・文・撮影/週刊SPA!編集部、写真/産経新聞社

―[急増![右派2.0]の肖像]―
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