クルマを買うためには多額のお金が必要ですが、全員が「現金一括払い」できるとは限りません。多くの人がローンを組んで支払うことになるでしょう。

筆者が国内自動車ディーラー勤務時代に出会ったお客様の中には、ローンが組めない人もいました。その原因について、今回はご紹介します。

なぜか他県から来店した客

カーディーラーに「なぜか他県から」来店した客…商談の最終段階...の画像はこちら >>
基本的にディーラーを訪れるお客様は「一番近かったから」という利便性を重視することがほとんどです。

ある日、ふらっとやってきた一見のお客様に応対しました。「このクルマを見たい、見積もりも欲しい」とのことだったので、手始めにアンケートをいただくことに。

記入いただいたアンケートには隣の県に住んでいるとありました。筆者が勤める店舗は、県境ではないので、なぜこの店舗に来たのか不思議に思いました。「たまたま見かけたから」とのことですが、お客様のメリットを考えて「地元のお店で買うのが良いのでは?」と提案しました。それでも「ここの近くに来ることがよくあるし、見積もりの内容次第では今日買いますよ」と言われたので、契約が欲しかった私は商談に入ることに。

話を進めていく中で、「このクルマのこのグレード、オプションはこれが良いな」と下調べを入念にやっていることがわかりました。今となってはネットで簡単な見積もりができますが、当時(10年以上前)はそこまで利用する人がいなかったので、その場で仕様を決めていくことが大半でした。

この時に違和感に気づけば、この後起こる事件に巻き込まれなかったのですが……。

商談の最終段階で起こったトラブル

お客様のご希望の見積書を作り、ある程度の金額が確定したところで商談も大詰めに。

お客様から「○○万円だったらこの場で契約します。
あ、支払いは頭金無しのローンでお願いしますね」と具体的な指示がありました。

そうと決まれば上司に状況を報告し、値引き額も店長の決裁範囲だったため、その場で決めにかかることに。私は意気揚々としてお客様に「条件は大丈夫なので、契約前にローンの仮審査をお願いします」とディーラーローンの審査用紙に必要事項を記入いただきました。

その後、事務所に戻りPC上で審査情報を入力し、データを飛ばしたところ、返事が全く来ません。通常の商談であれば、審査送信から10分もかからないうちに承諾の連絡があるのですが……。

「間を繋いで来い」と店長に言われ、ショールームで応対をしていると「宇野くん、宇野くん、事務所まで来てください」と無線が入りました。

ローンが通らない


事務所に戻ると店長から「いま、審査が通らないとローン会社から連絡があった。別の会社でも審査してみよう」と指示があったので、お客様には正直にそのことを話して、提携している信販系のローン会社の審査を進めることに。

信販系ローン会社からの回答も同じくらいの時間がかかり、答えはNG。詳細を聞くにも「総合的判断で融資できない」の一点張りでした。

仕方なくお客様に事情を聞いたところ「あ、やっぱりダメでした?そうだと思ったんすよ。じゃあ、クルマいらないっす」とあっさりとした様子。
「何かお心当たりでも?」と軽く聞いたら「いやー、携帯料金を何回か滞納しているんですよ。多分それじゃないかなって。地元のお店でも断られちゃって……」とバツの悪い様子でした。

携帯料金(端末のローン)を滞納していると、信用情報に傷がついて別のローンが組めなくなることをご存知でしたか?今回のケースがまさにそれでした。携帯代以外にもクレジットカードの引き落としができなかった場合など、信用情報に履歴が残ることがありますので、支払い関係はしっかりと注意することをおすすめします。

<文/宇野源一>

【宇野源一】
埼玉県在住の兼業ライター。大学卒業後、大手日系自動車ディーラーに就職。その後、金融業界の業務・教育支援を行う会社に転職し、法人営業に従事しながら、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格を取得。X(旧Twitter):@gengen801
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