今回はきちんと指定席を取ったにもかかわらず、新幹線の車内でとんでもない目にあってしまった人に話を聞いた。
混雑する新幹線の車内で…



「旦那と息子は男だけで旅行に行き、お盆は私ひとりで実家に帰省することになったのです。 新幹線は指定席を買っておかないと座れないので、当たり前に買っておきました。ビールと豪華な駅弁を用意して、『さぁ飲むぞ!』とウキウキしていました」
まわりには、指定席が取れずに立っている人がチラホラ。その中で、まだ小学生にもならない男の子が「座りたいぃぃ!」と号泣したようだ。
「小さい子だから座りたいよね、可哀想に……とは思いましたが、『なんで親は先に指定席を買わなかったんだろう』って不思議でした。ぎりぎりに決まったとか、事情があるのかもしれませんが。結構なボリュームで泣き続けていました」
まさかの「席を譲っていただけませんか?」

「びっくりしました。『すみません、すごくこの子が泣いているんで……席を譲っていただけませんか?』って。
だって、山手線とかの普通の優先席ならまだしも、ここは新幹線の有料の指定席ですよ? 確かに可哀想だけど、譲らなきゃいけない理由はないじゃないですか」
倉田さんが困惑していると、母親は「たぶん着くまで泣いてしまうので……お願いします!」と頭を下げてきたのだ。
「今からビールと駅弁食べて、ひと眠りしようと思っていたのに、どうしよう。本当に困ってしまって黙っていたら、横のおじさんが助けてくれたんです。
『お母さん、それはおかしいでしょう?』って。おじさんは『デッキであやすとか、お菓子を食べさせるとか、そうするしかないじゃない。この人(倉田さん)は先に指定席を取っている、子どもが泣いているからって関係ないでしょう』と」
すると、その母親は顔を真っ赤にして、子どもを連れて逃げるようにデッキに向かって行ったそうだ。
「私も子どもがいるので気持ちがわからないわけではないけど、譲りたくはなかったのでハッキリ言ってくれたおじさんに感謝です」
混雑期の移動は、誰にとってもストレスがかかるもの。だからこそ、事前の準備やマナーが一層求められる。
もちろん、事前に指定席を確保するのも、安心して移動するための大切な努力のひとつだ。お互いの事情がある中でも、相手への配慮と節度ある行動が、快適な旅をするための第一歩なのだろう。
<取材・文/吉沢さりぃ>
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【吉沢さりぃ】
ライター兼底辺グラドルの二足のわらじ。