―[メンズファッションバイヤーMB]―

 メンズファッションバイヤー&ブロガーのMBです。洋服の買いつけの傍ら、「男のおしゃれ」についても執筆しています。
連載第544回をよろしくお願いします。
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 今回はファッションに関する質問をchat GPTで5つ出してもらい、それに回答する形で進めていきます。

Q1.「レギュラーカラー」と「ワイドカラー」の使い分けは?

「ファッションで失敗している人」は知らない“身だしなみに関する5つの常識”
シャツ
 ユニクロのビジネスシャツでもレギュラーカラー、ワイドカラー、ボタンダウンカラーと様々な襟のバリエーションがありますが……おそらくほとんどの方が「なんとなく」で選んでいるのではないでしょうか?

 レギュラーカラーはご存じの通り通常の襟の形。名前の通り最もスタンダードです。ボタンダウンは襟先にボタンがついたスポーティなモデル。元々はイギリスの馬上競技であるポロを行う際に襟がバタつかないように開発されました。

華やかな印象になるがワイドカラー

 アイロンをかけずともある程度襟が綺麗に見えるので合理主義のアメリカ人に好まれ普及しました。合理的な反面フォーマルには不向きとされています。そして、ワイドカラーとは襟が左右に広がったように見える形のこと。しかし、これだけでは何を以てワイドカラーを選ぶべきかよくわからない人も多いでしょう。

 ワイドカラーはその形状からネクタイを締めた時に真価が発揮されます。通常の襟よりも横に開いた状態になっているため、ネクタイが目立ちやすく、華やかな印象になるがワイドカラーです。ビジネススーツはダークトーンが多く地味なものですが、ネクタイだけは柄や色が許されています。そのネクタイがより強調されるのがワイドカラー。


シーンに合わせて向いているほうを選ぶ

 それだけにパーティシーンや印象を大事にする営業マンの方などに好まれます。確かにこの襟の開きだけで印象はかなり華やかに、悪く言えば少し「遊び人」っぽくも見えるのがワイドカラー。夜の街に行く、成功している営業マンに見られたい、おしゃれだと思われたいなどにはうってつけでしょう。一方で公務員、銀行マンなどお堅いお仕事には不向きとも言われています。

 また、ネクタイを締めずともワイドカラーは開いた形状から胸筋が発達しているように見えるため逆三角形体型を演出できます。しかし、基本ビジネスシーンで好まれる形状だけに「ややオジサンっぽく」見られることも。このようにどれも一長一短なのでシーンに合わせて選べるようにしたいですね。

Q2.Tシャツの首元がヨレやすいのは素材のせい? 縫製のせい?

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Tシャツ
 夏は1度着ただけで汗だくになるため、どうしても洗濯回数が増えてしまいます。すると気になるのが「Tシャツの首元」、洗うたびにダメージが蓄積され伸びてしまうもの。伸びた襟を見て「これは生地が悪いのかな……」と誰しも考えてしまったことがあるでしょう。

 系の細い上質な薄手コットンなどの場合、比較的首元は伸びやすい。反面ポリエステルやスパンデックスなどを混紡した生地の場合は伸長性だけでなく回復性も高いので伸びてもしっかり元に戻る力があるのです。

しかしながら、コットンなどの伸びやすくナイーブな生地の方が風合いは美しく見える傾向があるので、耐久性が高ければ良いというワケでもありません。

本当に伸びにくいものがほしいなら格安のヘインズ

 また、縫製や始末によっても異なります。バインダーと呼ばれる別布を首元につければその分丈夫になりますが、代償にややアンダーウェアぽい印象がつくことも忘れてはなりません。
バインダーをつけずにシングルステッチで仕上げるとミニマルでスマートな印象を作れますが、その分伸びやすくなったりします。

「ファッションで失敗している人」は知らない“身だしなみに関する5つの常識”
一枚1000円ほどで買えるヘインズのTシャツ
 さらに、ケア方法によっても変わります。柔軟剤を使って洗濯をしている人は比較的ですが首元が伸びやすくなるでしょう。生地縫製ケア方法と複数の要素があるのでどれが悪いとはなかなか言えませんが、本当に伸びにくいものがほしいなら格安のヘインズなどがおすすめ。

 安いTシャツほど耐久性は高く、エルメスやヴィトンなどの高級生地ほど伸びやすいので目的に応じて選びたいですね。

Q3.古着屋によって価格差が大きいのは何が理由?

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古着屋
 同じノースフェイスなのに、中目黒では2万円、地方店では5000円……そんな価格差が起こることが度々あります。この価格差はどこからくるのか?実は仕入れ方法に秘密があります。

 古着屋さんの多くは何らかのルートで海外から仕入れてくるのですが、最も安い仕入れ方が「ベール仕入れ」です。百枚以上の服を巨大な四角状に圧縮して「ひとかたまりいくら」で販売する方法。驚くほど安くTシャツのベール買いなどの場合1枚単価は10円程度のことも少なくありません。

 ただし、中に何が入っているかは売る側も分かってない(テキトーに古着を詰めてるだけな)ので、ほとんどアタリが少ない。99枚は買う人が想像つかないような酷いデザインのものでも、1枚だけノースフェイスが入っていたりします。当然この場合仕入れ値が安いので単価は極めて安くなります。


「売れる」と思って仕入れているわけじゃない

 古着屋さんに行くと誰が買うのかわからないような民族衣装だったりベティちゃんがプリントされたボロボロのスウェットとかあるでしょ? あれは「売れる」と思って仕入れているのではなく、「ベールに入っていた」というだけなのです。

 逆に単価の高い古着屋さんは、中目黒など多いですが、1点1点ピックして良品だけを目で見て仕入れてします。すると1日かけて10枚しか仕入れられないなどが往々にして起こるので単価は当然その分、高くなるのです。

 同じノースフェイスなどでも価格差が店によって異なるのはそのため。中目黒などのピック買い古着屋さんは単価が高い分どれもこれもおしゃれなものばかり。しかし、大量買い付けの店舗などは玉石混交であり、我々お客さんが審美眼を持って探すアタリを必要があるのです。その分のコスト、と考えれば価格差も納得できるのではないでしょうか。

Q4.ダウンと中綿、どちらが暖かいの?

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ダウン
 高級品であるダウンは軽くて暖かいのが特徴です。ポリエステルなどの合成繊維でできた中綿はダウンと比べるとやや保温性が劣り、同じ暖かさを求めるなら重くなる傾向があります。ただし、その分単価は安いわけです。

 ……上記のように思ってる人が大半だと思いますが、実は他にもメリットデメリットがあります。ダウンは湿度の高いところや水に濡れたりすると著しく保温性が落ちるため、湿度の高い地域では不向きとも言われているのです。

 極寒の寒冷地などの場合はダウンに頼らざるを得ませんが、実は日本の都市生活程度の温暖な気候であれば、中綿で十分。さらに日本は湿度も高いためダウンよりも中綿の方が適しているのです。


「脱ダウン」の流れが著しいユニクロ

 実際、機能性を重視する米軍などでも中綿はダウン一択ではありません。寒冷地用の装備でもクライマシールドやプリマロフトなどの機能性中綿を採用することが多く、湿度や気候に応じて使い分けるのが普通です。日本の都市生活では湿度や温暖な気候から一般的には中綿で十分と考えられています。

 しかし、それでも日本でここまでダウン神話が普及しているのは間違いなくマーケティング戦略によるもの。モンクレールなどプレミアムダウンが日本進出した際、商社が上手に伝えたのでしょう。中綿は濡れても機能が落ちない上に値段も安いので、最近では高機能中綿を採用するブランドも増えてきています。

 ユニクロも「脱ダウン」の流れが著しく、パフテックなどの独自開発中綿を使っていますね。無論中綿も劣化があるため完璧ではないですが……少なくともダウン一択とこだわりすぎる必要もなさそうです。

Q5.モード系とストリート系の違いは?

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モード
 モードとは流行を意味する言葉であり、本来「最先端のファッション」を指すものでした。パリやミラノのランウェイで見られる今のトレンド服のことをモードと呼ぶのが普通です。ストリートはその名の通り日常着を示す言葉であり、主にルーズで動きやすくスポーティーなアイテムを好む傾向できちんと定義が存在します。

 以前まで「モード」と言えばギャルソンやヨウジヤマモトのように「黒白のシックな世界観」が頭に浮かびましたが、現在の「モード」はバレンシアガなどをはじめストリートテイストも多く取り入れています。

さまざまな服やテイストを取り入れるのが普通

 よって今ではモード、ストリートなどの区分けが機能しておらずあまり正しいカテゴライズが存在しないのです。「~系」というのはひと昔前の話であり、今のZ世代はさまざまな服やテイストを取り入れるのが普通です。


「~系」と区切りたがるのは今の多様性が理解できないおじさんのはじまりかもしれませんよ。

 以上、今回はファッションの質問集でした。

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【MB】
ファッションバイヤー。最新刊『ロードマップ』のほか、『MBの偏愛ブランド図鑑』『最速でおしゃれに見せる方法 』『最速でおしゃれに見せる方法』『幸服論――人生は服で簡単に変えられる』など関連書籍が累計200万部を突破。ブログ「Knower Mag現役メンズバイヤーが伝えるオシャレになる方法」、ユーチューブ「MBチャンネル」も話題に。年間の被服費は1000万円超! (Xアカウント:@MBKnowerMag)
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