実は、数々の食にまつわる資格を持ち、メディア出演だけでなく、商品プロデュースやライターとしても幅広く活動している人物なのだ。激辛料理専門家になったきっかけや、今の地位を確立するまでのキャリアなどなど、気になるところを深掘りして聞いてみた。
辛さの「英才教育」を受けていたのかも
ーー「激辛料理専門家」って、そもそも何をする人ですか?金成姫:謎ですよね(笑)。激辛料理専門家と名乗ると、YouTubeで盛り上がっているように、毎日激辛チャレンジしてる人だと思われがち。でも私の場合は違うんです。私が一番大切にしているのは「美味しい辛さ」を伝えること。なので、美味しい激辛料理を出すお店をメディアやSNSを通じてご紹介したり、激辛のお店や商品をプロデュースするのが主な仕事です。
――なるほど。激辛料理専門家になるまでを教えてください。そもそも、なぜ激辛料理にハマったんですか?
金成姫:親が作ってくれる家庭料理が唐辛子たっぷりの辛い料理だったんです。冷蔵庫にはキムチと、コチュジャンは常備されていてましたし。なので、小さい頃から当たり前のように唐辛子中心の食事を食べてました。
子供の頃、友達の家に遊びに行ったとき、食卓にオムライスが出てきて驚きました。
――実際にどのくらい激辛料理を食べているんですか?
金成姫:年300食くらいは食べています。お店では辛い料理を注文しますし、自炊もします。旅行先など、どうしても辛いものが見つからないシチュエーション以外は、毎日必ず食べていますね。仕事柄激辛食材や調味料をいただくことも多いので、キッチンは真っ赤です(笑)。
フードアナリストから“激辛の道”に進んだワケ
――お仕事として激辛に関わるようになったきっかけは?金成姫:辛いものには子どものころから馴染みがありましたが、激辛を仕事にするなんて全く考えてはいませんでした。もともとは、企業で秘書として働いていたんです。
食べることが大好きだったので、食に携われたらとは思っていて、最初は調理師学校に通いながら、フードアナリストの資格を取りました。
――そこからどうやって激辛料理専門家に?
金成姫:資格を取ったあと、たまたまフードアナリスト協会の求人を見つけて、協会で働き始めました。最初はいろんな専門家の方に仕事をお願いする立場でしたね。ご依頼に合わせてスイーツだったらこの方、カレーについて詳しいのはこの人、みたいに。スケジュールが合わない方の代打として、私自身が専門家としてお仕事をすることもありました。
食の専門家って、多ジャンルだしたくさんいらっしゃって、皆さん個性的。私はかき氷もワインもチーズも好きですが、自分の個性を活かせるジャンルって何かと考え、「激辛」にたどり着きました。専門にしている方が少ない上に、本当に毎日食べられるほど好きだから、これだと思ったんです。
「激辛料理専門家」の懐事情は…?

金成姫:駆け出しの頃は、他の仕事もしながら、激辛専門家としても活動していましたね。他の食の専門家とユニットを組み、共同でお仕事を受けていた時期もありました。いろんな仕事を掛け持ちしながら、徐々に激辛専門家として独り立ちしていったという感じです。
本業にできたとはいえ、激辛の仕事って波があるんですよ。激辛料理の盛り上がりって夏と冬なんです。暑いとか、寒いからこそ辛いものを食べたくなるんですよね。
だからお店紹介などのメディア仕事も、夏と冬に集中しています。シーズン中はたくさんのオファーをいただくけれど、それ以外の時期は仕事がないことも多く「もう本当にもう自分は終わったな」と思うこともありますよ(笑)。
――季節に左右されるお仕事なんですね。今や各種メディアで大活躍ですが、どのくらいで軌道に乗ったんですか?
金成姫:独立して10年目以上経ちますかね。商品開発のお仕事が入るようになった時期です。辛い商品を作るのはオフシーズンである秋冬。新商品のプロデュースなど、仕込みの仕事をすることで年間を通じて安定したように思います。
激辛料理専門家がプロデュースしたというと、「旨辛」ではなくひたすら「激辛」な料理だと誤解されることもあるので、「旨さ」を伝えるためにあえて名前を出さない仕事も増えています。
激辛チャレンジ企画は受けない
――美味しい辛さを伝えることを大事にされているのですね。昨今の激辛ブームをどう見ていますか?金成姫:安全性には十分注意してほしいというのが正直なところです。海外で、激辛チップスを食べた方が死亡してしまった事故が発生しました。激辛はお酒と似ていて、美味しさも楽しさもあるんですが、知識がないまま過剰摂取すると危険が伴います。
私は「辛い美味しさ」を知って欲しいのであって、「辛い」=「危険」というイメージはついてほしくない。だから、激辛チャレンジのような企画は、基本的にはお受けしないようにしているんです。
体調不良になったことはない
――ご自身の体調管理はどうされていますか?金成姫:幸運なことに胃腸が強いようで、今のところ体調不良になったことはないですね。
ただ、ギネスクラスの唐辛子が入っている料理を食べるときは、牛乳を飲んで胃に膜を張ることを意識しています。また、毎日ヨーグルトを食べて腸活もしていますね。
――激辛初心者へのアドバイスはありますか?
金成姫:いきなり激辛レベルに行かずに、小辛ぐらいから慣らしていってください。辛さを選べるお店も多いので、徐々にレベルを上げて行くのがコツです。辛さって、真っ赤な唐辛子をイメージする人が多いですよね。ですが山椒のしびれ系や、わさびのシャープな辛さなど幅が広いんです。自分に合った辛さを見つけて、美味しく楽しんでもらえればと思います。
<取材・文/井澤 梓>