藤井の本棋戦成績は10勝4敗、7年連続7回目の出場となる。優勝2回で準優勝は1回。対する佐々木は本棋戦に初出場。対局の前々日8月7日に行われた第38期竜王戦挑戦者決定戦で石田直裕六段に勝ち、2期連続2回目となる竜王挑戦を決めた。8年前、藤井がデビュー後、公式戦29連勝を飾りメディアを賑わせたが、その30連勝目を阻止したたのが、当時五段だった佐々木だ。その後、数々の大舞台で顔を合わせる両者の対決。2回戦にして屈指の好カードとなった。
対局の合間の両者のメンタル管理術は?
対局場所は静岡県静岡市「ツインメッセ静岡」。1万平方メートルを超す巨大展示施設で、将棋日本シリーズ静岡大会ではおなじみの会場。観戦応募に当選した1000人を超える観戦者が当日の会場に訪れた。両者に限らず、本棋戦に出場するトップ棋士は皆、過密スケジュールの中、日々の対局に備え、調整している。
「棋士はみんなそうだと思うんですけど、勝ってる時は、どんなに対局が詰まっていて忙しくても、勢いでなんとか乗り切れるものです。が、調子が悪い時とか、負けが込んでいるスランプの時をどう脱出するかっていうのが課題で、その人それぞれの克服の仕方があると思います。私の場合はやはり食事ですかね。旬の果物が好きなので、今だと桃を食べたりして、パワーをもらいます」(佐々木八段)
「対局に負けてしまうということは常にあるので、それ自体を意識しすぎない方が良いのかなと考えています。ですので結果そのものよりも、内容をしっかりと振り返った上で、結果自体は忘れてしまうというのが理想だと考えています。対局を続けていくうえでしっかりと体力をつけておくというのは、長期的に見て大事なことだなという風に思っていまして、なかなか本格的にという感じではないんですけど、家で少し運動することは意識しています」(藤井竜王・名人)

こども時代に得意にしていた右四間飛車

両者の過去の対局での戦型は、角換わり7曲、相掛かり3局、矢倉1局、雁木1局、角交換振り飛車1局となっている。昨年の竜王戦で佐々木八段が毎局作戦を変えて臨んだことは記憶に新しいが、本局の戦型は右四間飛車に。解説を務めた鈴木大介九段によると、「佐々木さんがテーブルマークのこども大会(JTプロ公式戦と同日に行われるこども将棋大会)に出ていた頃は右四間飛車を得意にしていた気がします」とのことだ。
「なんですかこれは」佐々木の攻めの一手に驚きの声
33手目に佐々木が仕掛けたところから戦端が開き、佐々木の独創的な攻めの手に対して、藤井がどう受けるかといったやり取りが続く。解説の鈴木九段が「すごすぎないですか。
その後も解説者、そして観戦者をうならせる玄妙なやりとりが続き、手つかずで鉄壁に見えた先手陣を、持ち駒が桂と歩だけの藤井が急所を突いた攻めを続けて、106手△8五銀で見事に寄せきった。解説の鈴木九段は局後の感想で「最後はいつもながら美しい寄せだったと思います」と称賛した。
投了図 106手目△8五銀まで

