―[佐藤優のインテリジェンス人生相談]―

“外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報・外交のプロ・佐藤優が、その経験をもとに、読者の悩みに答える!

社内の嫌な先輩を抹殺したいです

社会人10年目の男性が「無能な先輩を抹殺したい」と相談。怒り...の画像はこちら >>
★相談者★サウナが癒やし(ペンネーム) 会社員 34歳 男性

 中小企業の営業職で働く素人童貞です。大して仕事をしていないのに偉そうに振る舞う2つ上の先輩(男)を会社から抹殺したいです。

 その男は日中は外回りと言いつつ、マッチングアプリで女漁り。
SNSにどんな女性と会ったか書き込んでおり、女性に点数をつけています。

 仕事では既存顧客ばかりを担当し、接待なのか飲み歩いています。自分は返信が遅いくせに、私を含めた後輩が即レスしないと、「忙しいフリするな」と嫌みを言います。

 タチが悪いのは、会社の役員には妙に気に入られていることです。そのため、上司に相談するのも難しい。できれば、呪いでもかけたいぐらいです。

 こうした男を会社や社会から抹殺する方法はないでしょうか?

佐藤優の回答

 一番簡単な方法は、あなたが素手でその先輩をぶん殴って再起不能にすることです。包丁のような刃物やハンマーのような鈍器は使ってはいけません。あなたが刑務所で長期間服役することになるからです。

 酒の席かなんかで、口げんかになって、ついカーッとして衝動的になり、気づいたら相手がダウンしていたという話にすれば、逮捕、起訴されても執行猶予になり、刑務所には行かないで済みます。

 もちろん、あなたは会社を懲戒免職(退職金は出ません)になりますし、その先輩に数十万、場合によっては100万円以上の慰謝料を支払わなくてはなりません。そんなことをしても意味がないと思いませんか?

 この先輩に対して、あなたは無能であるという評価をしていますが、本当にそうなのでしょうか。
会社は小学校や中学校の「仲良しグループ」とは異なります。数字に表れる成果を出さないと、この先輩が会社の役員から高く評価されることはないと思います。狡くて嫌な人間でも仕事で成果を上げる人は、どこにでもいます(私が勤めていた外務省にもそういう人が大勢いました)。

 むしろ仕事で成果を出すように、あなたの発想を転換してみたらどうでしょうか。脳科学者の茂木健一郎氏がこんなことを述べています。

〈「やる気」とは、「やる気がないからできない」という、「やらない」ことの言い訳のためにあるような言葉である。(中略)人間の脳は、行動に「意味」を与えようとするストーリーテラーである。脳は前頭葉を中心に、目的や価値観を形成する。

 しかし実際には、目的や価値観が常に行動の原動力になっているわけではない。多くの行動は無意識的に行われており、「なぜこれをしたのか」と説明するときに「やる気」や「目標」といった概念が後から持ち出されるのである。

「やる気がないからできない」とは、実際には「行動していないからやる気が生まれない」なのである。つまり「やる気があるから行動する」のではなく、「行動するからやる気が出る」という順序が正しい。
〉(『生きがいの見つけ方 生きる手ごたえをつかむ脳科学』37~38頁)

 私も茂木氏の意見に同意します。あなたは34歳なのですから、社会人として10年以上のキャリアを積んでいるはずです。このあたりで、仕事に対する姿勢を見直して、成果を出すことにエネルギーを傾けてみませんか。

 そうなると、嫌な先輩が視界から外れていきます。仕事で成果を出すとともに日常的に付き合う異性も出てきて素人童貞を脱出することができる可能性も高まります。

★今週の教訓…… 仕事に集中すれば嫌な先輩は視界から外れる

社会人10年目の男性が「無能な先輩を抹殺したい」と相談。怒りを鎮める現実的な方法は一つしかない/佐藤優
「自由意志は幻想かもしれない」という脳科学の視点から、どうすれば生きがいを感じられるのかを考えた一冊。著者は、その答えは「行動」にあると説く。’25年刊
※今週の参考文献 『生きがいの見つけ方 生きる手ごたえをつかむ脳科学』(茂木健一郎 PHP新書)

―[佐藤優のインテリジェンス人生相談]―

【佐藤優】
’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数
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