素敵なインテリアをつくるために、もっとも効率のいいアイテムはなんでしょうか? 色々な考え方があると思いますが、僕はまっ先に照明を挙げます。
インテリアの世界では、天井のシーリングライト一灯でお部屋全体の明かりをまかなうことを一室一灯といいます。これに対して、複数の照明を組み合わせることを多灯と呼びます。どちらも人気がありますが、おしゃれな部屋といえばなんといっても多灯です。
多種多様な照明を使ってお部屋をデコレーションしましょう。フロアランプ、テーブルランプ、ペンダントランプ、お気に入りの照明を選ぶだけでもう楽しい。無難な天井一灯はもうやめて、何はなくともまず多灯、ポジショントークではなく本気でおすすめだと思っております。
だけど悲しいかな、僕は知っています。わりとけっこう、多灯照明が疑問視されていることを。「インテリア情報はすぐに多灯多灯って言うよね」「結局それのどこがいいの?」「そもそも多灯って暗くない?」……ステイステイ、そんなに責めないで。とくにインテリアビギナー様の多灯照明アレルギーはなかなか根強い印象があります。
ご指摘自体はおかしくないけれど、とても大事な部分を見落としてしまっています。
だいたい多灯なんて意味あるの?
まずはメリットから。多灯照明のどこがいいのでしょうか?そもそもインテリアでは、「リラックスできる雰囲気」と「特別な非日常感」を両立させるのがセオリーです。想像してもらえればおおむねイメージできると思うのですが、薄暗い照明は、まさにそんなシチュエーションをつくるのにぴったりです。


コスパも忘れてはいけません。家具だけでおしゃれをつくるのはホネが折れますが、照明であればお部屋のムードを一気に激変させることが可能です。椅子を一つ置いたとしても、その椅子一つ分だけしかお部屋のビジュアルは変化しないけど、照明は器具本体のデザインを超えて、明かりが立体空間に広く影響を与えます。
同じ予算をかけるなら、高級な家具よりも高級な照明のほうが部屋に大きなインパクトを与えられるのです。部屋の雰囲気を変化させるのに、照明ほどコスパがいいものはありません。
これが多灯照明のメリットです。見た目にせよコスパにせよ、インテリアの視点で考えれば多灯には明確な利点があるのです。
多灯が暗くて不便というのは本当なのか

冒頭でも触れましたね、たとえおしゃれだとしても……「暗くて不便じゃない?」。あえて言いましょう、逆です。多灯だから暗いのではくて、明るくするために多灯にしているのです。
まずお部屋って、照明を配置しなければ真っ暗です。食事をしたいなら、食卓を照らすペンダントライトが必要です。ソファで読書がしたいなら、近くにフロアランプが必要です。ちゃぶ台で勉強がしたいならデスクランプも必要です。
自分の生活を見直したとき、お部屋で行動することが食事、読書、勉強だけなら、今挙げた3つの照明があれば暗くて困ることはありません。いざ食事をするときに、部屋の隅っこが暗くても問題ないからです。
多灯というのは、明るい部屋から照明を引き算したものではなく、暗い部屋に照明を足し算したものなのです。これによって何が起きるのかというと、余計な部分まで明るく照らさなくて済むのです。今言ったばかりですが、食事をするときに部屋の隅っこが暗くても困りません。
部屋は薄暗かったらオシャレだけど不便。明るかったら便利だけどダサい。この問題に対して、多灯を活用することで、生活に必要な場所だけを明るくして、生活に不要な場所だけを暗くすることができるようになるのです。おしゃれと便利のいいとこ取りですね。
多灯の魅力を知って正しく付き合いましょう

もちろん、シーリングライトのように天井照明が部屋の隅々まで照らすのが一番便利です。食事も読書も勉強も一灯で済むのならそりゃ助かるってもんです。
インテリアは生活と密接につながっています。おしゃれだけが正義ではないし、便利だけが正義でもない。暮らしのなかで何を優先するかは、自分自身の価値観で選ぶものです。便利な一灯を選ぶこともできるし、多灯を選んでおしゃれと便利の両立を模索することもできる。一灯の良さも多灯の良さも、誤解なくフラットに付き合って頂けたら嬉しいなと思います。
【カジキ】
暮らし、住まいの世界を長年見てきた経験を元に、インテリアの法則を各コンテンツで言語化して発信中。YouTube「ゆっくりインテリア」、ブログ「様子のおかしいインテリア店」、Xアカウント@kajikissa