順風満帆に見える吉高寧々さんのセクシー女優人生ですが、実は現在に至るまで、さまざまな紆余曲折が存在していました。
これまでの人生や、賛否両論があった死体役でのNHK大河ドラマ「べらぼう」出演、今後の活動などについて語ってもらいました。
目立たない泣き虫な女の子だった
――吉高さんは兵庫県出身、育ったのはクマが出るほど田舎だったそうですね。吉高寧々(以下 吉高):はい、メチャクチャ田舎で、クマだけじゃなくて鹿やイタチも出るような田舎で育ちました。
――小さい頃は、どんな子どもでしたか?
吉高:すごく泣き虫でしたね。気は強いんですけど、とにかく泣いちゃうんです。悲しくても泣くし、うれしくても泣くし。
――感受性が豊かなんですかね。学校では目立つほうでしたか?
吉高:いえ、全然。目立つのは苦手だったので、ひっそりと過ごしてました。高校、短大の頃は、あがり症で人前でしゃべれないくらいだったんです。
一念発起してグラドルデビュー。そしてセクシー女優に転身

吉高:短大を卒業した20歳で、大阪に出ました。
「このままの人生はイヤだな」って、職を転々としながら鬱々としていました。
――そんななか、2017年にはグラドルデビュー。まさに一念発起ですか。
吉高:はい。ありがたいことに、かなり反響があって。グラビアだけじゃなく、写真集の発売やイベント出演などのお仕事もいただきました。
――そのままグラドルを続けるのではなく、セクシー女優への転身を発表。大胆な決断ですが、なぜセクシー女優を選んだんですか?
吉高:もともと、恵比寿マスカッツさんを見たり、短大時代にたくさん作品を見たりして、セクシー女優さんに勇気をもらった人生だな、と思っていて。自分が勇気をもらったから、自分もこの仕事をしたいと思ったんです。
――「勇気をもらった」とは?
吉高:ちょっと話しましたが、人前でしゃべれないほどのあがり症で。
そのときに、セクシー女優さんが作品で、全身全霊で相手に向き合ってプレイしている姿を見て、感動したんですよ。
過去はすべてリセットする覚悟で

吉高:そのときは「有名になりたい」って意味が強かったと思います。子どもの頃からずっと目立たず、静かに生きてきたから「なにかやりたい」って気持ちが強かったんです。
――でもAVの仕事には偏見もあります。不安はなかったですか?
吉高:「AV堕ち」なんて言葉もありますしね。でも、不安はまったくなかったです。自分が「いい」と思っているから、他人が何を言おうと関係ない、と。
――地元の知り合いには、相談やお話はしたんですか?
吉高:本当に親しい友人、ひとりだけに伝えました。でも、家族を含めてほかの人には誰にも言いませんでした。それまでの人生で構築したものはすべてリセットしたい、新しい自分で生きていきたいって思いがあったので。
活動方針に悩み、体調不良を発症

吉高:すごくうれしかったですね。それまで賞を取ったことも、そこまで必死に頑張ったこともなかったので。「何者かになれた」って気持ちでした。
――ただ、その後の「DMMアワード2018」「FANZAアワード2019」では、ノミネートはされたものの受賞ならず。そこで活動に迷いが生じてしまった、と。
吉高:応援してくれたファンへの申し訳なさと、これからどう活動するべきかがわからなくなってしまって。ずっと「どうしたらいいんだろう」って悩んでいました。
――その結果、メニエール病と突発性難聴、パニック障害も発症されたそうで。でもお仕事は休まなかったのはなぜですか?
吉高:仕事はやっぱり楽しかったので、無理しても続けたかったんです。むしろ、仕事を休んでしまったら、もっと悪くなっていたと思います。仕事していたからこそ、踏ん張れたんですよ。
写真展をきっかけにプレッシャーから解放された

吉高:はい。もうほとんど良くなりました。
――活動に対して感じていた、プレッシャーがなくなったためですかね。
吉高:それはあるかもしれません。
このとき、写真を買ってくれたファンの方に、私を撮影してもらう時間がありました。すごく好評で、撮影中も、SNSでも「楽しかった」って感想が多くて。
そもそもこの「#寧々密会」って、自分の素の姿を撮ってもらうのがコンセプトで、普通のグラビアでは見られない写真が多いんですよ。
――メイクや衣裳をバッチリ決めた写真じゃないんですよね。
吉高:はい。衣裳は私服だし、メイクも自分で。すっぴんの写真、パジャマの写真もあるんです。ファンの方がそんな素の私を楽しんでいるのを見て「ありのまま自分を見せてもいいんじゃないか」って思えたんですよ。
それまでは「変わらなきゃ」とばかり思っていたのに、そうじゃなくていいんだって気付けたんです。
――なるほど、素の自分を見せるようになって、プレッシャーから解放されたと。
大河ドラマ「べらぼう」への出演が大きな話題に

吉高:はい、でも、あんなに話題になるなんて思っていなくて。
――一緒に出演したセクシー女優の藤かんなさんは、現場はとてもハードだったとおっしゃっていました。
吉高:朝の4時に現場入りして、撮影終了は午後1時くらいでした。
インティマシーコーディネーターの方の指示で、私たちが少し起き上がるとすぐにスタッフの方が身体を隠しに来てくれて。そういう配慮もしていただいたので、時間がかかったのは仕方がないかな、とは思います。
――ほかに印象に残った点はありますか?
吉高:インティマシーコーディネーターの方が、撮影シーンに関係ないスタッフは現場を見られないようにしてくれるんですよ。そのあたりは安心感があって、演技に集中することができました。
――なるほど、無関係なスタッフも集まってきそうですもんね。いつもの撮影と違った経験だったと思いますが、吉高さんとしてはいかがでした?
吉高:この出演で、私たちのことを知ってくれた方も多いので、良いお仕事をいただいたと思います。ぜひ次は、セリフのある役をいただけたらうれしいんですけど(笑)。
京都のお寺で異色のイベントを開催

吉高:そうなんです。
さまざまなリターンのあるクラウドファンディングも実施していますので、興味がありましたらぜひご覧ください!

吉高:もうデビューして8周年を過ぎて…後輩がかなり増えてきたので、先輩として事務所を盛り上げられる存在になりたいです。
それが良いプレッシャーにもなって、今後のやる気にもつながっているので。
これからは、お話をいただいた仕事は「とりあえず全部受ける!」って気持ちで活動していきますので、今後の吉高寧々も応援してください!
<取材・文/蒼樹リュウスケ、写真/山田耕司>
【蒼樹リュウスケ】
単純に「本が好きだから」との理由で出版社に入社。雑誌制作をメインに仕事を続け、なんとなくフリーライターとして独立。「なんか面白ければ、それで良し」をモットーに、興味を持ったことを取材して記事にしながら人生を楽しむタイプのおじさんライター