中地区はブルワーズ独走もカブスが必死に食らいつく展開
一方で、ナ・リーグの中地区は、ブルワーズが8月に入り14連勝を飾るなど、今月中旬には2位カブスに9ゲーム差をつけていた。しかし大型連勝が止まった後はブルワーズの勢いも、やや影を潜めている。そのブルワーズに必死に食らいついているのが、日本人選手2人が所属するカブスである。カブスは今季、開幕ダッシュに成功し、4月上旬に地区首位に立つと、7月中旬までその座を維持。
その後は7月末まではブルワーズと一進一退の攻防を繰り広げていたが、ライバルの大型連勝で一気に突き放されていた。ところが、先週行われたブルワーズとの直接対決5連戦を3勝2敗と勝ち越すと、その直後にエンゼルスとの3連戦を3連勝。ブルワーズとの差を一気に5ゲームまで縮めることに成功している。
カブスが逆転する可能性が高まる理由
このまま両者の差が縮まるのか、再びブルワーズが勢いを取り戻すのか——。前者の方が可能性が高いのではないだろうか。というのも、閉幕までの両チームのスケジュールを見ると、ブルワーズはブルージェイズやフィリーズ、パドレスといった地区優勝を争う強豪との対戦が多く残っている。
対するカブスはというと、現在首位に立っているチームとの対戦はゼロで、大半が現在負け越しているチームが相手。残り対戦相手の強さを比較すれば、残り約30試合でカブスが逆転する可能性も十分に考えられるというわけだ。
カブス逆転の鍵は「打線の復活」
ただし、カブスがブルワーズを差し返すには、打線の奮起が必要不可欠だろう。今季のカブス打線は開幕から絶好調で、オールスターまでドジャースに次ぐメジャー2位の得点数を誇っていた。しかし、オールスターを境に多くの主力打者が調子を落とし、オールスター後は得点数がメジャー26位。つまり下から5番目まで順位を大きく下げている。
不振にあえぐカブスの各打者だが、中でも別人のように突如打てなくなったのが鈴木誠也だ。鈴木はオールスター時点で、92試合に出場し、打率.263、25本塁打、77打点という素晴らしい成績を残していた。本塁打の数は前半戦だけでシーズン自己ベストを更新しており、打点王も視野に入る打棒を見せていた。
オールスターに落選した際には、「打点王を争っている鈴木がナゼ?」「あまりにも失礼な出来事だ」など日米で辛辣な見出しも躍ったのは記憶に新しい。
鈴木はオールスター休みで英気を養い、後半戦も中軸の一人としてチームを牽引してくれる——。多くのカブスファンはきっとそう信じていただろう。しかし、オールスター後は打撃が大きく低迷。打率はなんと1割台(.181)で、2本塁打、10打点という大スランプに陥っている。
後半戦の長打率はリーグワースト…
特に深刻なのが長打率だ。鈴木が前半戦にマークした長打率は.547。これは規定打席に達しているナ・リーグの77選手中6位という上位にランクインしていた。一時は期待された打点王も今や風前の灯火。110打点を挙げ、ナ・リーグのトップに立つカイル・シュワーバーには、すでに23打点差をつけられている。オールスター時点では、鈴木がシュワーバーを8打点上回っていたが、あっという間に抜き去られてしまった。
さらに同じ日本人選手の大谷翔平も鈴木の直後で逆転をうかがっている。オールスター時点では鈴木がつけていた「17」の打点差は「3」にまで縮まっている。
鈴木が打点を挙げた試合は8連勝中
このように後半戦に入り、打撃が低迷中の鈴木だが、チームからの信頼は揺らぐことがなさそうだ。鈴木は後半戦でも2番か3番の中軸を任されているのが何よりの証拠で、さらに鈴木の打点がチームを勢いづかせる点も前半戦と何ら変わっていない。後半戦に入ってから鈴木が打点を挙げた試合は7試合あるが、カブスはそのすべてで勝利を収めている。オールスター前の試合から数えると目下8連勝中。ムードメーカーの一面もある選手だけに、“鈴木が打点を挙げればチームが勝つ”というオールスター直前からの不敗神話は、今後も続いていくことに期待したい。
カブスは今季もうブルワーズとの直接対決がないため、逆転優勝するためには勝ち続けるしかない。間違いなく鈴木のバットがカブスの命運を握っている。
文/八木遊(やぎ・ゆう)
【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。