街を歩けば、ロン毛や金髪、マンバンに至るまで――。今や派手な髪形は若者よりも“おじさん世代”に目立つ。
個性的な髪形にする中年男性が増えている意外な背景とは?

抑圧から解放された中年が続々と謎ヘアに

ロン毛、金髪…若者よりも中年に“派手な髪形”が増えているワケ...の画像はこちら >>
 若者の冒険心の象徴だった奇抜な髪形が、今や中年男性の頭上で急増。派手な髪に、加齢した容貌が組み合わさることで、より個性が際立つ。

 だが、芝浦工大デザイン工学部教授の原田曜平氏は「むしろ中年だからこそ個性派ヘアにする理由がある」と力説。

「30代後半から60代前半は、人口ボリュームが大きい世代。競争社会の中で育ち、周囲に埋もれないよう『目立ってなんぼ』の価値観が強い。逆にZ世代のほうが、SNSの陰口を恐れ、横並びの無難なスタイルを好む傾向です」

 さらにこの世代は、理不尽や上下関係を浴びるように経験してきた世代でもある。

「そんな彼らも年齢を重ねて権限や立場を得て、自分を出せるようになった。そこに現代の『多様性を認めよう』という風潮が加わり、抑圧から解放された個性派ヘアのおじさんが増えていったのです」

 中でもミドル世代によく見られる謎髪形が記事末尾の①~⑥。観相学の導師でもある理容師の大平法正氏はその分類を次のように語る。

「例えば金髪ショートは薄毛を目立たなくするための“アンチエイジング型”。また、教祖スタイルのように経営者やクリエイティブ職の人が、戦略的に自身のパブリックイメージに寄せた髪形にするパターンもありますね」

個性派ヘアにはそれぞれの事情も

ロン毛、金髪…若者よりも中年に“派手な髪形”が増えているワケ。「脱・小汚いおじさん」のために足掻く男性の胸中
鈴木政宗さん(仮名)60歳(自営業)。短髪黒髪時代
 例えば、自営業の鈴木政宗さん(仮名・60歳)は②の男気ロン毛を実践。まさに中年を迎えた40歳を機に「髪を伸ばそう」と決意した。

「昔からバイク乗りだったので、有名なバイク映画の『イージー・ライダー』に登場する俳優のように、ワイルドなロン毛に憧れまして。会社を立ち上げたときに、『自由にしてやるぞ!』という意気込みもありました」

 また、中高年特有の白髪問題にも明るい髪色が好都合だという。


「年を取ると、白髪染め特有の真っ黒な髪は、中年の年輪を重ねた顔には馴染みません。でも金髪なら、多少パサついてても“味”になる。さらにロン毛にすることで、白髪が交ざっても“渋いワイルド感”に昇華されるんです」

イメージ戦略にも有用

 一方、都内でカメラマンとして活動する中里たかしさん(仮名・47歳)は、2年前に髪を後ろで束ねる「マンバンヘア」にイメージチェンジ。その前は無難な髪形だったというが……。

「中年が手入れもしないまま撮影の現場に行くと、『小汚いおっさん』と思われ、最低限の敬意すら払われなくなる(笑)。今の髪は、雑に結んでも“整えてる感”が出るので、見栄えがいいんですよ」

 ただ、この髪形にしたのは利便性だけではない。

「カメラマンって、著名でない限りクライアントの指示通りに撮れる人が評価される世界。僕もそのタイプで、ずっと仕事が続いてきた。でも、“アーティスト扱いされたい”っていう自意識もあるんです。“髪形くらい芸術家っぽく”したいなって」

 謎髪形にはイメージ戦略だけでなく、ミドル世代特有の悩みも体現しているようだ。

街で増える「謎ヘアおじさん」6パターン

①マンバンヘア

ロン毛、金髪…若者よりも中年に“派手な髪形”が増えているワケ。「脱・小汚いおじさん」のために足掻く男性の胸中
絶壁後頭部にボリューム感。髪が後ろに引っ張られリフトアップ
側頭部を刈り上げ、頭頂部の髪を伸ばして後ろでお団子にまとめた髪形。「日本人に多い後頭部の絶壁をカバー。芸術家のような『ただ者ではない感』も演出できます」(大平氏)

②男気ロン毛

ロン毛、金髪…若者よりも中年に“派手な髪形”が増えているワケ。「脱・小汚いおじさん」のために足掻く男性の胸中
輪郭をカバーし、たるみ隠しにも
肩までの長髪に明るい髪色。
「若者のロン毛は中性的ですが、中年はワイルド路線が多い。海外の俳優など目指すスタイルがある人もいれば、惰性で伸ばす人も」(大平氏)

③金髪ショート

ロン毛、金髪…若者よりも中年に“派手な髪形”が増えているワケ。「脱・小汚いおじさん」のために足掻く男性の胸中
薄毛・白髪が目立たない
ショートをあえて金髪に染めたスタイル。「頭頂部の薄毛や白髪が目立ちにくいのもメリット。ただ、頻繁にメンテナンスをする必要があり、余裕のある大人向け」(大平氏)

④教祖ヘア

ロン毛、金髪…若者よりも中年に“派手な髪形”が増えているワケ。「脱・小汚いおじさん」のために足掻く男性の胸中
圧倒的毛量&ひげ量で小顔効果
黒髪を基調とした長髪+ひげスタイル。「イエス・キリストを彷彿させ、言葉に説得力が生まれやすいためインフルエンサー向きのヘア。小顔効果という意外なメリットも」(大平氏)

⑤ファンシーツーブロック

ロン毛、金髪…若者よりも中年に“派手な髪形”が増えているワケ。「脱・小汚いおじさん」のために足掻く男性の胸中
毛量が多い人もスッキリ見える
ツーブロックに刈り上げて、残った髪をピンクやブルーなどのビビットな色に染めたスタイル。都市部で稀に見られる髪形。「年齢を重ねても挑戦している姿勢を示す機能も」(大平氏)

⑥ツーブロパーマ

ロン毛、金髪…若者よりも中年に“派手な髪形”が増えているワケ。「脱・小汚いおじさん」のために足掻く男性の胸中
濡れ髪で大人の色気を醸し出す
側頭部を刈り上げ、残った上部の髪にパーマをかけたスタイル。個性派ヘアの中でも、ここ数年のトレンドで年齢を問わず量産。「顔立ちに自信のある人がやりがちで、経営者にも多い」(大平氏)

【芝浦工大デザイン工学部教授・原田曜平氏】
マーケティングアナリスト。若者研究の第一人者として知られる。近著に『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』

【理容師・大平法正氏】
日本一出世するビジネスマンが多い理容室ZANGIRI代表。
政治家髪型評論家の顔を持つ

取材・文・撮影/週刊SPA!編集部 イラスト/bambeam

―[急増![謎ヘアおじさん]の生態]―
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