スニーカーのトレンドが、厚底と薄底の両極端に分かれています。ファッションとしてのスニーカーであれば、それは好き好きだと思いますが、歩く、走る、動くといった実際の行動を考えると、どちらがいいのでしょうか?
結論から書いてしまえば絶対的な正解はなく、その人によります。要はメリット、デメリットがはっきりしてるので、相性があります。今回は厚底シューズと薄底シューズのそれぞれの強みと、要注意点を解説します。
すでに痛みがあるなら厚底シューズ
男性であれば変形性膝関節症、いわゆる「ヒザ痛」が早い方であれば30代から、健康でも40代後半になると……まあ、おっさんになるとヒザは痛くなります。筆者も10代の時のケガから、今でも慢性的に左ヒザ痛に悩まされています。日常生活でイライラするようなら、迷わず厚底シューズを選んでください。どれか迷っているのなら、安定と実績のHOKA「クリフトン10」。幅もレギュラー、ワイド、エキストラワイドの3種類から選べるので、ほとんどの方にフィットします。今や厚底はたいていのメーカーから販売されていますが、コスパで挙げるならこちら。ウルトラマラソンにも対応しているので、ヘビーに使用しても3~4年は余裕で履けます。ナイキやアシックスなどの「いかにも運動靴」感もありません。クッションが効くのは当然として、底面積がかなり広いので、圧力も分散されます。

裸足で砂浜の上を歩き続けると、沈み込んで疲れます。しかし、そこに一枚の板をわたすとすたすた歩けるようになります。これと同じ理屈です。ソフトすぎるインソールは無意味でお金の無駄。硬いインソールを入れると足場がしっかりするので、早歩きや立ち仕事でも疲れません。
脚力アップなら薄底シューズ。誤解されがちな薄底カテゴリー

ベアフットシューズでレザースニーカーのタイプはまだまだ少ないのですが、ビジネスカジュアルでも使えるほど上品な佇まいです。底の厚みが4.5㎜と容赦なく薄い。こんなに薄いとヒザはさらに痛くなるのではと心配になりそうですが、逆です。
ベアフットシューズのデメリットというか注意点はひとつだけ。劇薬です。歩き方、体の使い方がスパルタ式に変わるため、比較的体力のある人でも数日間は筋肉痛や足裏の痛みに苦しめられるでしょう。徐々に慣らす期間が必要です。
迷ったらハイブリッドシューズで解決

底の厚みはHOKAとほぼ差がないのですが、つま先とカカトの高さにほぼ差がないので、歩く、走るには意外に体力が必要です。足裏への刺激はさすがに超薄底のベアフットシューズほどではありませんが、「ゆるやかな坂を踏みしめながら上り続けている感覚」は変わりません。アルトラ社もベアフットシューズの初心者用に推奨しているモデルで、筆者もこれの旧モデルを愛用していますが、つま先にぐっと力が入り、足裏全体で着地できるのがよくわかります。加齢とともに足裏のアーチは落ちていくものですが、いわば足裏の筋トレが勝手にできるのでその心配もありません。「足」だけではなく、「脚」で歩ける感覚がよくわかるモデルです。
ざっくり分けると、故障が多い方には守りに徹した、やや過保護の「厚底」を。もっと脚力、体力をつけたい方には攻めの「薄底」がおすすめです。両方あってももちろん大丈夫。その日の足のコンディションや歩行距離で選ぶのもアリです。
【シューフィッター佐藤靖青】
イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。