最近の世の中では“お客様は神様”的な考えが薄れている傾向にあるそうです。いわゆる“カスハラ”で、店員に土下座をさせたりする行為がSNSなどでは多くの非難を浴びることが少なくありません。

しかし、物事には“限度”というものがあります。今回、取材をした男性が経験した店員の態度は尋常ではなかったようです。

「コップを投げるように置かれて…」態度が悪すぎるファミレス店...の画像はこちら >>

腹ペコクルー、静まり返るファミレスへ

話を聞かせてくれたのは、テレビ番組制作会社に勤める近藤さん(仮名・35歳)です。

その日は朝4時過ぎに出発し、御殿場方面でのロケに臨んでいたとのこと。自然光を活かした撮影のために早朝から動いていたそうで、昼過ぎにはすべてのスケジュールを終え、機材を積んだ車で都内への帰路についたそうです。

「朝からほとんど何も食べてなかったんで、みんな腹ペコ状態でした。ちょうど国道沿いにファミレスが見えたので迷わずピットインです」

ランチタイムはとうに過ぎており、店内はガラガラ。近藤さん含め、計4人のスタッフたちはホッとしたようにブース席に腰を下ろし、呼び鈴を押しました。やってきたのは、20代前半と思われる男性店員。表情は硬く、やや無言気味な印象を受けたそうです。

「それでもまあ、お腹も空いてたし、早く注文を取りに来てくれたのは助かるなって最初は思ってたんです」

しかしその後の展開で、空腹の喜びは不穏な空気に一変します。

無言、無表情、無感情。「接客」とは思えない対応

スタッフたちは思い思いにメニューを注文。
しかし、よくある“注文の復唱”もなく、男性店員は無言のまま厨房に引っ込んでいきました。

「この時点ではまだ、『復唱しないタイプの店なのかな』くらいにしか思ってませんでした。でも次の行動で、一同“あれ?”って顔を見合わせたんですよ」

それは、おしぼりと水を運んできたときのこと。近藤さんの目の前で、おしぼりとお水の入ったコップをテーブルに投げるように置いたそうです。

「“ガチャーン”って、コップが割れそうなくらいの勢いで置いたんです。スタッフみんな目が点になっていました。『え?何か私たち悪いことした?』と思ったほどでした」

とはいえ、空腹には勝てません。店員の態度に戸惑いながらも、皆ひとまず食事が運ばれるのを待つことに。

やがて料理が配膳され、ようやく食べ始めた近藤さんたち。しかし、ある後輩が「醤油と塩ありますか?」と声をかけると、再び無言の応対が。

「そのときも、目も合わせず、返事もせずに黙って去って行って、無言で調味料だけポンと置いていくんですよ。もう全員、唖然としてました」

デザートを注文したときも、出てくるまでにかなりの時間がかかり、ようやく運ばれてきたかと思えば、やはり無言での提供。
さすがにそのころには、満腹というより「何なんだこの店員は」という気持ちの方が強くなっていたそうです。

「これ、通報してもいいレベルじゃない?」とクルー内で議論

「最初は“機嫌が悪いだけ”かと思ってたんです。でもね、ここまでくるとさすがに異常でしょ?他のテーブルには誰もいなかったし、時間帯的にそこまで忙しかったわけでもない」

「これクレーム入れるべき?」「いや、ちょっと怖いよね」「でもモヤモヤする」といった会話がクルーの間で飛び交ったといいます。

結局、その日はデザートも食べずに退店。気分が悪くなるほどの接客に、誰一人として満足感を得られなかったのが何よりの証拠でした。

「その場では電話しませんでした。でも、2日後くらいにやっぱり気になって、本部に電話を入れたんです。すると、対応が180度違っていて驚きました」

受付の女性スタッフは非常に丁寧で、すぐに事情を聞き取る姿勢を見せたとのこと。そして、「調査の上、改めて担当者からご連絡させていただきます」と言い、電話は終了。

この“調査結果”が、思わぬ展開を生むことになります。

まさかの訪問謝罪…明かされた“真相”

数日後、近藤さんの勤務先である番組制作会社のオフィスに、ファミレス本部の広報担当と名乗る人物が現れました。手には丁寧な謝罪文と食事券、そして例の男性スタッフからの手紙が。

「正直びっくりしました。
電話だけで済むと思ってたので、まさか直に来るとは」

謝罪内容はきわめて誠実で、スタッフの態度についても真摯に受け止めているという旨が書かれていたそうです。そして後日、店員本人からの謝罪文も郵送で届きました。

「その手紙には、『その日、家族が突然倒れてしまい、動揺した気持ちのまま出勤してしまった』と書いてありました。もちろん、それで接客態度を正当化するわけにはいかないけれど、理由を知ると少し気持ちも変わりましたね」

あのとき感じた「何か心ここにあらず」という印象は、単なる態度の悪さではなく、実際に私情が影響していた可能性があったのです。

「でもね、それでもやっぱり、接客ってプロの仕事じゃないですか。事情があるならあるで、せめて他のスタッフに代わってもらうなり、やりようはあったと思うんです。こっちには何も伝わらないわけですから」

<TEXT/八木正規>

【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
編集部おすすめ