―[貧困東大生・布施川天馬]―

 本日、8月31日をもって8月は終了。明日から9月となるわけですが、学生にとって8月と9月は天と地の差があります。
夏休みが終わってしまうからです。
 毎日朝8時に登校する義務から解放され、部活や遊びなど、好きなことばかりで40日近くを埋め続けられる夢の期間「夏休み」。大学を出たなら、もはや叶わない1か月単位の休日期間は、昔も今も子どもたちが自分らしさを発散できる夢の期間でしょう。

 ですが、遊んでばかりじゃいられない。

「夏休みの宿題」に追われる悩みもまた、今も昔も変わりません。筆者自身も、夏休みの終わりが差し掛かったころに積みあがった宿題の山を見てはため息をついていたのを思い出します。

 ところで、世間一般では「成績優秀」「真面目」とみられがちな東大生ですが、彼らはどのように宿題と向き合っていたのでしょうか?

 今回は、「夏休みの宿題との向き合い方」を通して、東大生のリアルな姿に迫ります。

東大生に「夏休みの宿題をどう進めていたか」アンケート調査を実...の画像はこちら >>

休み前半で終わらせてしまうのは50%

 今回は、株式会社カルペ・ディエムにてアンケートモニター登録している東大生30名に対して、いくつかのアンケートを取りました。

 1つの質問は「夏休みの宿題は先に終わらせたか、8月末まで持ち越したか」。これに対して、28件の回答が集まりました。

 内訳は、「先に終わらせた」が14件、「後回しにした」が14件。意外にも、「真面目」のイメージとは裏腹に、宿題をさっさと終わらせる学生は多数派ではありません。

 理由を尋ねたところ、後で持ち越す派は「とりあえず遊びたいから、後回しにしたい」と答えました。


 対して、「先に済ませる」派のある男子学生は「まとまった期間の休みなら、なにか勉強しないといけないのだから、まず宿題から取り掛かるのは当然。もちろん、宿題が終わってからは、別の勉強に取り掛かっていました」と、ある種こちらの予想通りの「東大生」を感じさせるコメントを残してくれました。

 さらに細かく「自由研究」に絞ったところ、「先に終わらせる」派が12件、「後回しにした」派が16件と、多少延期派が優勢に。

 いくら東大生といえども、それなりの時間と体力、アイデア力を要請される自由研究課題は、なかなか取り組みにくかったのかもしれません。

 ちなみに、自由研究の種類は「工作系」が13件、「調べ学習系」が15件と、拮抗していながらもやや研究系の活動が優勢でした。

東大生でも使うあの言い訳

 そこで気になるのが「最終日まで持ち越した猛者はいたのか」。これも調査したところ、8名の東大生が「最終日まで持ち越した経験がある」と答えてくれました。

 夏休み最後の3日間から焦りだして猛烈な勢いで取り掛かるのもまた、彼らにとっては「あるある」だったそうで、思い描いていたスマートな東大生像とは違う、「リアルな中高生」の姿が見えてくるようでした。

 しかも、4名の東大生は「最終日も終わらず、そのまま登校した」とのこと。

 うち1名の女の子は、なんと「毎年最終日までやり残しがあった。むしろ、夏休みの期間中に宿題を終わらせた経験がない」そうで、いつも宿題を残したまま登校しては「家に忘れた」と答えて難を逃れていたといいます。

 毎回毎回同じ言い訳をしていたら、いい加減目を付けられそうなものですが、東大生ですら「家に忘れた」なんて定番中の定番の言い訳を使うなんて、なんだかほほえましいように感じます。

「夏休みの宿題」は社会に出る練習

 やはり先生や親の立場からすれば「宿題なんて早く終わらせなさい」といいたくなる気持ちはわかります。
とはいえ、早く終わらせなくてもいいんです。

 夏休みの宿題とは、長期休みを使ってまとまった量の課題を終わらせるために、自分でスケジュールを切って、自分で立てた計画を遂行する練習だと私は考えているからです。

 この課題で鍛えられるのは「課題量から作業量と期間を推測する力」と「自分の遂行能力を正確に把握する自己分析能力」、そして「期限までに(面倒くさい)計画を遂行しきる精神力」の3つ。

 自分で「これくらいの期間で終わる」と踏んで、その通りに遂行できるならば、いつやっても、いつ終わっても、問題ない。

 もちろん、「締め切りギリギリに出すような仕事は信用されないから、期限よりも早くスピード感をもってこなす姿勢」などが重要視されるのも確かでしょう。その点で、早くこなす子が優秀であることに変わりはない。

 ですが、宿題はクオリティの高低に左右されない成果物なのですから、「とりあえず期限までに出せばいい」でも、十分合格点ではないでしょうか。

 今年はもう遅いかもしれませんが、来年からは「宿題をしなさい」ではなく「いつから宿題をやれば、最終日までに終わるか」と一緒に計画を立ててあげると、お子さんのためになるかもしれませんね。

<文・布施川天馬>

―[貧困東大生・布施川天馬]―

【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。
(Xアカウント:@Temma_Fusegawa)
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