同僚と上司のパワハラで精神が不安定に
安永さんは現在、会社員時代を過ごした東海地方を離れ、妻や3人の子どもたちと長野県で暮らしている。2024年12月にFIREを達成したときに7500万円だった資産は、8000万円に増額。投資をメインに自身が教わったオンラインの資産運用スクールの運営を手伝いながら、悠々自適な生活を送っている。だが、「学生時代は終身雇用に憧れて就職活動に励んでいた」と振り返る。
「父が大手企業に勤めていたこともあり、幼い頃からいい大学を出て大手企業に就職し、定年まで働くことが正しいと考えていたんです。それで2008年に大学を卒業後、大手自動車メーカーに就職し、順調にキャリアを積み重ねてきました」
順風満帆だった安永さんのサラリーマン生活に暗雲が立ち込めたのは、入社して10年目の年だった。
「2018年に異動した部署の3歳年上の同僚や上司とうまくいかず、人間関係に悩むようになって……。同僚からは、仕事の出来が悪いと叱責され、頭を叩かれるなどの暴力も受けるようになりました。
同僚のパワハラは次第にエスカレートしていき、有休取得日の朝6時から夜24時まで電話で何度も怒鳴り散らされたこともあります。休日やお盆休みなどの休暇中にも同僚からの電話は鳴りやまず、家にいても心の休まらない日々が続きましたね」
夫婦合わせて、約500万円を自己投資
上司に相談したものの、問題は解決するどころか悪化してしまう。「上司からは、『お前のパフォーマンスが悪いせいだ』と会議室で責められました。椅子を蹴って怒る上司に萎縮してしまい、いつしか『パワハラを受けたのは自分の仕事のパフォーマンスが低いたせいだ』と思い込んでしまって、当時の私は社内の相談窓口に訴えることもしなかったんです」
その結果、パワハラは同僚が会社を退職した2023年の夏まで続くことに。
「最初はMBA取得を考えました。約40万円を投資して9か月間単科で学びましたが、自分がやりたいこととは違っていたので断念しました。次に自分の内面を鍛えるべきだと考え、妻と一緒に自己啓発セミナーにも通いました。自己投資には、妻と合わせて500万円くらいは使ったと思います」
新たな出会いがサラリーマンを辞める転機に

「ここで仲間のサポートを得ながら、自分の内面と徹底的に向き合い続けた結果、会社員としてこれ以上の成長を目指すのは苦しいと判断しました。当時、世帯年収は1000万円以上あったので、、定年まで働くのではなく、FIREを目標に資産形成を行おうと考えました」
安永さんは、投資経験がある母親の勧めで、入社すると同時に会社の持株会に加入。それから投資に興味を持ったそうだ。
「入社から2014年までの6年間に自社の株価が3倍くらいになったので、一部を原資にして日本個別株の運用をスタートしました。パフォーマンスだけ見れば、持株を持っていたほうがよかったですが……20代のうちに投資の経験が積めたことが財産になりました。
投資のさまざまな失敗経験も経て、FIREを達成するためには投資のプロに学ぶべきだと思い、2023年1月にいまもお世話になっているオンラインの資産運用スクールに入りました」
自己投資と出会いがあったからこそFIREを実現できた
入学当時の安永さんの資産は3000万円ほど。そこから約2年間で資産を7500万円に増やし、FIREを達成した。短時間で目標を実現できた秘訣とは?「一番の要因は、退職金を元手にポートフォリオのリスク資産の比率を上げたことですが、円安の力を借りて会社の持株がものすごく上がったことも追い風になりました。
自分1人では、怖くて大金を運用することはできなかったと思います。実際に数千万、数億円単位の資産を運用している講師、仲間がいたからこそ、正しい知識を身に付けて、投資がうまくなることができましたし、短期間でFIREを達成できました。
大切なことは実損失ではなく、機会損失の回避に着眼して投資をすること。自己投資に使ったお金は決して小さくありませんが、自己投資を行わなければ、今の快適な生活を勝ち取っていませんでした」
【黒田知道】