メガソーラーが招く“増災”
’50年までにカーボンニュートラル実現を目指す日本政府。温室効果ガスを実質ゼロにするために推し進める再生可能エネルギー事業だが、その裏側には深刻な課題が潜む。山梨大学名誉教授の鈴木猛康氏はこう警鐘を鳴らす。
「一番怖いのは、行きすぎた国土開発やエネルギー施策が大規模な自然災害を引き起こす“増災”のリスクが日本全国に広がっていることです。各自治体はメガソーラー開発に関する規制条例を整備していますが、事例が少ないために法の穴を事業者に狙われて対策が間に合わない。林地開発許可は一度出ると取り消されることがほぼないのが現状。森林伐採や土地改変によって地下水が枯渇したという報告事例も少なくありません」
水資源を維持する森林の働きが破壊されれば、農業や漁業など我々の暮らし全般に直結する。さらに、メガソーラー開発は地球温暖化にも影響を与えていると指摘する。
「森林は二酸化炭素を吸収すると光合成をして、葉から水蒸気を蒸散することにより気温を下げています。一方、太陽光パネルは表面温度が70~80℃に達し、開発面積が大きいとヒートアイランド現象を起こします。また、上昇気流により積乱雲が発生して集中豪雨を引き起こします。麓では土砂災害が発生し、都市の水害に繫がる危険もあります」
適切な活用を目指し「目を光らせて」

「長野県飯田市では、市民や地元企業が出資して公共施設や学校に太陽光パネルを設置。売電収益を地域の環境教育や省エネ活動に再投資している。ほかにも、岐阜県の石徹白地区では小型の水力発電の装置を用水路に入れて、町のほとんどの電力を賄っています」
再エネ開発は今後も広がりそうだが、どう向き合うべきか。「増災が起こらないように考える“事前減災”の意識が重要」と鈴木氏は力説する。
「近隣周辺で不審な開発を見つけたら、地方自治体に報告して『市民が目を光らせている』という意思表示をすることが大切。そういったリスクコミュニケーションの体制ができていれば、事業者も好き勝手には開発できません」
あなたの故郷が、いつ太陽光パネルだらけになるかわからない。手遅れになる前に、声を上げるべきだ。
【山梨大学名誉教授・鈴木猛康氏】
特定非営利活動法人・防災推進機構の理事長を務める地域防災のスペシャリスト。著書に『国土・環境破壊の危機』(理工図書)など
取材・文・撮影/週刊SPA!編集部
―[[メガソーラーが壊す日本]の惨状]―