間違えてサメの背中に乗り、水中格闘はまさかの結末!
今から4年前の8月、伊藤正太さんは地元の海で恐怖の出来事に遭遇した。お盆休み、中部地方の島にある故郷に帰省した伊藤さんは、幼い頃から親しんできた素潜りで魚を獲ろうと銛を片手に海へ。
透き通った海水と白い砂浜が広がる美しい景色とは裏腹に過疎化が進み、人影はほとんどない。そんな“貸し切り状態”の海で、幼い頃のように岩場から大の字でザブンと飛び込んだ瞬間……異変に気づいた。

サメも驚いたのだろう。激しくのたうち回りながら泳ぎだし、伊藤さんは海に投げ出された。その直後、サメは怒りをあらわにしたかのように猛スピードで彼に向かって突進してきたという。
「『食われる』と覚悟しました」
しかし、泳ぎに自信のあった伊藤さんは、とっさに体を旋回させ、サメの尾びれ側に回り込んだ。その尾びれがお腹を直撃し、痛みと恐怖にひるんだが、そのときに相手の正体がはっきりした。
襲いくるサメに銛で応戦。格闘の末に……
それはヨシキリザメだった。サメの中でも泳ぐ速度が50㎞/hと速く、体長は最大4m。人間への攻撃例も多く、過去には日本近海での死亡事故も報告されている。実際にこのクラスのサメに右足首を食いちぎられた幼なじみの記憶が脳裏をよぎった。
サメと間合いをとりながら追撃に備えていた伊藤さんは、距離が縮まった瞬間に「いける」と判断し、渾身の力でサメの右側の胴に銛を突き刺した。
暴れるサメに振り回されたが、5分間に及ぶ水中格闘の末、弱り始めたのを見て、伊藤さんは銛を刺したままのサメを引っ張りながら少しずつ岸へと泳ぎ進んだ。
足がつくほどの浅瀬にたどり着いたところで銛を引き抜くと、サメは力なく泳ぎ去り、翌日には近くの浜辺に打ち上げられていたという。
「周囲に助けてくれる人もいなかったので、本気で『死ぬかも』と思いました。でも、幼い頃から慣れ親しんだ海だったからこそ、冷静に動けたのかもしれません」
サメにとっても災難でしかないが、いざ遭遇すればそこにあるのは、命のやり取りのみ。地の利と勇気で命拾いした伊藤さんであった。
取材・文/週刊SPA!編集部、イラスト/子原こう
―[[危険動物と遭遇]のリアル]―