カラスから3回の襲撃
危険なのは熊や猪といった巨獣だけではない。街中や観光先で出くわす“身近な小型動物”も、時に命を脅かす存在となる。「草花を撮影しようと早朝の都内公園を歩いていたときです。やけにカラスが多く、頭上を旋回しながら威嚇してきたんです」
そう話すのは、カメラマンの田代正樹さん。
カラス繁殖期の4~7月頃は子供を守るために警戒心が高まり、攻撃的になる。そして、田代さんが公衆トイレに向かったときだった。
「突然、背後にバッサバッサと翼の音が聞こえ、耳の後ろあたりに羽の風圧を感じた瞬間、後頭部を脚でがっと蹴られた。不意打ちだったので思わず『ぎゃっ』と声を上げてしまいました」
羽を広げると1mにはなろうかという黒々としたハシブトガラスだった。背後から急襲するのが特徴で、軽傷でも流血に至る場合も多い。

「うっかり巣に近づいてしまい、親ガラスから不審者認定されたのだと思います。狙われている間は恐怖と絶望感でパニックになりました」
また、田代さんは小柄なため「要は体格で舐められたんですね」という。
タイの野良犬に追われリアルに“死”を覚悟

夜、宿に戻るメイン通りから外れたソイ(※タイ語で小道の意)で異様な唸り声に包まれた。気づくと20~30匹の野良犬、いわゆる「ソイ・ドッグ」に囲まれていた。
「昼間も宿周辺に数匹はいましたが、夜中は大群に……。目が闇の中でギラついていて、本当に死を覚悟しました」
狂犬病の致死率はほぼ100%とされるが、高橋さんらは予防ワクチンを打ってなく、狂犬病にかかった犬に噛まれれば命を失う可能性があった。
「逃げるぞ!」
高橋さんらが元いた大通りのほうに駆け出した瞬間、群れから2、3匹が前へ飛び出し、後方から群れが続いた。
暗闇で方向感覚が狂い、舗装のされていない道と恐怖感で足がもつれそうになりながらも、大通りへ飛び出すと、犬たちはそれ以上追いかけてこなくなった。群れは背後5m近くまで迫っていたという。
「犬たちは昼間は暑くてグッタリしていたので、油断していました」
後に振り返れば、群れが形成される兆しはあった。犬たちは夕暮れに頭をもたげ、ソイへ集まり始めるのだ。
「その時点でルートを変えるべきだった。人間の判断なんて、とっさには間に合わないんです」と高橋さんは語る。
遅効性の毒を持つ蛇、ヤマカガシには要注意

だが漢方専門家で、薬として普段から蛇を扱うA氏は、次のように話す。
「マムシは動きが鈍く、穴の中で生活しているので思ったほど被害が少ないのです。ハブも毒があり自ら襲ってきますが、血清で治療可能。実際にはマムシ以上に注意すべき蛇がいます」
それが日本固有種のヤマカガシだ。
「北海道と小笠原諸島以外の全国に分布しており体長は60~120㎝程度に及びます。小さなカエルやオタマジャクシを食べるだけの蛇に見えるが、実は強烈な毒を秘めており、“痛みが遅れてやってくる”タイプであるため、気づいたときには手遅れになることもあります」
噛まれても大して痛くないのが怖い!
噛まれてしまった場合、どのような状態になるのか。「牙が奥歯にあるので、がっちり噛まれたときに毒が入る。しかも牙が細いため、噛まれた瞬間は痛みが少ない。しかし、30分ほどたってから全身に異変が広がる。血管を破壊するタンパク質毒なので、気づいたときには歯ぐきから出血し、意識を失います。サンダルで山道を歩いていて踏んでしまい、最悪命を落とすケースもあります」(A氏)
山に行く人間は、絶対覚えておきたい蛇の顔だ。
取材・文/週刊SPA!編集部、イラスト/子原こう
―[[危険動物と遭遇]のリアル]―