日本時間の9月10日午前2時、Appleの新製品発表がストリーミング配信された。
 AirPods ProとApple Watchのリニューアルが発表されたほか、メインストリームiPhoneの最新モデル「iPhone 17」と、上位モデル「iPhone 17 Pro」、そして新系列の「iPhone Air」もお披露目となった。
とりわけ「Air」は、外見の時点で一線を画す薄型・軽量モデルで、俄然注目を集めている。

 今回は話題の新型iPhoneを中心に、Appleの新製品を見ていきたい。

新型iPhoneが登場も、買い替えを躊躇してしまう“ふたつの...の画像はこちら >>

AirPods Proが同時通訳者に!?

 真っ白なワイヤレスイヤホンとして人気の「AirPods」シリーズには、高級機の「AirPods Pro」が存在するが、19日に発売される最新モデル「AirPods Pro 3」では新たに「ライブ翻訳」機能を搭載する。これは、異なる言語の相手と会話しているとき、自動的に自分の得意な言語に翻訳してくれるというSF的なものだ。

 現時点では英語・フランス語・ドイツ語・ポルトガル語・スペイン語に対応しているが、日本語への対応は年末の予定だというから、お手並み拝見はしばらくお預け。とはいえ、機械を通して外国人とリアルタイムに会話できるのは、素直に楽しみである。

新型iPhoneが登場も、買い替えを躊躇してしまう“ふたつの理由”。薄型・軽量で高性能だけど…
人命救助や市民の健康維持に多大な貢献を果たしているというApple Watch。生存者の体験談を集めた誇らしげなプレゼンが印象的だった
 命を救う腕時計として評判のApple Watchもアップデートし、「Series 11」となった。高血圧アラートや睡眠データの統計化機能が追加されるほか、バッテリーの保ちが良くなり、最大24時間の連続稼働が可能になった。

 毎日充電が必要なことに変わりはないが、腕時計のあるべき姿に、少しずつ近づいているように思える。

薄型とはいえ持ちにくい……

新型iPhoneが登場も、買い替えを躊躇してしまう“ふたつの理由”。薄型・軽量で高性能だけど…
カメラのセンサを正方形にするなど、細かい変更が冴えているiPhone 17
 AirPodsもApple Watchも進化を遂げているが、主役はやはり、恒例のモデルチェンジを遂げたiPhoneだろう。

 「iPhone 17」シリーズより、標準モデルのストレージ容量が256GBとなった。この点では、今年のiPhone 17は“買い時”にあたる世代だといえる(参考リンク:「64GBのiPhone」を現役で使い続けるための“ストレージ容量節約術”。月数百円払わなくてもサクサク動く)。

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高性能なCPUとカメラ、長持ちするバッテリー、そして薄型・軽量の筐体。iPhone AirはAppleの技術の結晶なのだが……
 並んで、以前より噂になっていた「iPhone Air」がラインナップに加わった。
主要部の厚さわずか5.6mmという薄さ、そして重量165gという軽さでありながら、頭脳には最高性能の「A19 PRO」チップを搭載する。画面サイズはノーマルのiPhoneよりも大きな6.5インチで、これは「Pro Max」や、以前存在した「Plus」(iPhone 16 Plusまで)に近い。

 Appleはこれを“史上最も薄いiPhone”と謳っており、昔懐かしい「iPod touch」(筐体の厚さは世代により6~7mm)と比べても薄く出来ていて、大したものだ。ただし、iPhone Airが“持ちやすいiPhone”なのかというと、そうとは言えない。横幅が74.7mmもあって、片手でホールドしたまますべての操作を行えるサイズではないのだ。

 横幅67.3mmの「iPhone SE」や、横幅64.2mmの「iPhone mini」は、片手操作が可能なことから、日本での人気が高かった。しかし前者は2022年発売の第3世代、後者は2021年のiPhone 13 miniを最後に、ニューモデルが投入されていない。これは円安と並んで、iPhoneの買い替えを躊躇する理由のひとつになっている。

人間の手は大きくならない

 かつてのスマートフォンは、片手でも操作できるように設計されていた。

 Retinaディスプレイで人気が沸騰したiPhone 4(2010年)は、横幅58.6mmで持ちやすく、仕事の合間に「なめこ」を抜くのも爽快だった。iPhone 5(2012年)では画面が縦長になり、タッチパネルの一番上に親指が届きにくくなったが、それでも大きな支障はなかった。

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『ドラクエウォーク』プレイ中に手から落下し、無惨にもバキバキな姿になってしまったiPhone 6S
 しかしiPhone 6(2014年)になると、横幅が67.0mmになり、片手での操作がツラくなり始める。丸みを帯びた筐体デザインの影響から、手のひらを滑り落ちる事故が続出し、“スマホバキバキ”という言葉が世間に広まった。


 その後もiPhoneは巨大化を進め、現行モデルにおける最小サイズは横幅71.5mmだ。対して、人間の手は大きくならないから、何か特別な工夫をする必要が生じる。そういうわけで、少なくないiPhoneユーザーがスマホの背面にリングを取り付けて、親指に長い旅をさせているが、その様子はまったくスマートではない。

 もっとも、小型にこだわるのは日本ユーザーの特徴で、他国では「スマホは両手で使うもの」と割り切っているようだ。

 というのも、日本語には便利なフリック入力があり、片手でも問題なくメッセージを送信できるが、欧米人はQWERTYキーボードを使うため、自然と両手を使うことになるし、タッチパネルが小さいと打ちにくいのだという。

 そんな事情と、他にはバッテリー容量の問題によって、日本以外の市場で小型モデルは販売不振となり、ラインナップから姿を消してしまった。まことに残念でならない。

メシかスマホでスマホは選べない

 毎度のことながら、一番気になるのは価格である。

新型iPhoneが登場も、買い替えを躊躇してしまう“ふたつの理由”。薄型・軽量で高性能だけど…
やはり価格は高止まり。いつか再び日本円が価値を取り戻せば、iPhoneを気軽に買える日が戻って来るかも!?
 iPhone 17のエントリーモデルの価格は129800円。昨年のiPhone 16のデビュー価格が124800円だったので、値上げ幅は5000円となる。このほか、iPhone Airは159800円から、iPhone 17 Proは179800円から、iPhone 17 Pro Maxは194800円からという、ゴージャスな価格設定がなされている。

 アメリカでは、iPhone 16とiPhone 17のデビュー価格がともに799ドルで、お値段据え置きだとわかる。
トランプ関税の影響で値上げされるとの事前予想もあったが、ひとまずはAppleの企業努力が勝った形だ。

新型iPhoneが登場も、買い替えを躊躇してしまう“ふたつの理由”。薄型・軽量で高性能だけど…
「軽さ」「薄さ」を求めるのであればiPhone Airは最高の端末だが、「持ちやすさ」の希望には応えられず
 とはいえ、低賃金と米価高騰に喘ぐ日本人にとっては、やはり今のiPhoneは高すぎる。2022年からのひどい円安は終わる気配を見せないし、頼みの綱だったiPhone SEも終売となってしまった。

 それでも実際のところ、新型iPhoneの“賢い買い方”はいくつかある。Apple製品の中古価格は高止まりしがちなので、あえて高価なニューモデルを買い、数年使った後で中古品として売るというテクニックは有名だし、キャリアが提供する各種ローンを使うのも手だ。どうしてもiPhone 17やiPhone Airが必要な場合、買い方を工夫してみよう。

新型iPhoneが登場も、買い替えを躊躇してしまう“ふたつの理由”。薄型・軽量で高性能だけど…
トランプ大統領のご機嫌取りに必死だとも報じられている、苦労人のティム・クックCEO。海の向こうも悪い時代のようだ
 新型iPhoneは高嶺の花……という観念がすっかり定着してしまった令和のスマホ市場だが、それでも6割の日本人は、どうにかしてiPhoneを使い続けている。やせ我慢にさえ見えるこの状況が、いったいいつまで続くのだろうか。

<TEXT/ジャンヤー宇都>

【ジャンヤー宇都】
「平成時代の子ども文化」全般を愛するフリーライター。単著に『多摩あるある』と『オタサーの姫 ~オタク過密時代の植生学~』(ともにTOブックス)ほか雑誌・MOOKなどに執筆
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