ナ・リーグ西地区は、ドジャースとパドレスによる熾烈な争いが続いている。現地8月23日にはパドレスが一度はドジャースをかわしたが、単独首位に立ったのはその1日限り。
その後はドジャースが再びリードを奪い、現時点で2.5ゲーム差をつけて首位をキープしている。

ここ数試合で得点力が大幅改善

ドジャースが「勝負弱い」理由…“総額48億円”大型契約・ロバ...の画像はこちら >>
 ドジャース打線は8月下旬ごろから湿りっぱなしだったが、ここに来てようやく盛り返しはじめている。9月に入ってからは、ムーキー・ベッツが4本塁打、大谷翔平とテオスカー・ヘルナンデスが3本塁打ずつ放つ活躍。このまま上位1~3番を打つ3人が好調を維持できれば、打線全体へ波及効果も出てくるだろう。

 昨季は大谷が9月に圧倒的な打棒を見せつけ、史上初の「50-50」を達成。チームは追いすがるパドレスを振り切ったが、地区4連覇に向けて、今季も大谷を中心とした打線の活性化は必要不可欠だ。

 一方の投手陣はどうか。シーズン半ばからドジャースのアキレス腱となっている救援陣はもはや説明不要なほど不安定だが、先発ローテーションは、故障者続出で頭数が不足していたシーズンの前半から一変、エース級の能力を備えた6人の投手がそろっている。

 9月に入ってからは終盤までノーヒット投球も何度かあり、先発陣の防御率は3.26と安定。勝負の9月後半、そしてポストシーズンへ向けて、充実した先発ローテーションがドジャースにとって最大の強みとなりそうだ。

ドジャースが勝負弱い理由は…

 そうなると、やはりカギを握るのは救援陣ということになるが、同時に指揮を執るロバーツ監督の継投策をはじめとした采配も勝敗を分けるようになっている。

 パドレスとの優勝争いが最後までもつれそうなだけに、今後は両チームともにどれだけ接戦を落とさず、白星を拾っていけるかが重要。接戦をものにするチームには“監督力”が必要ともいわれるが、今季のドジャースは勝負強さを発揮できていない。ブリュワーズやフィリーズといったナ・リーグ地区首位のチームやパドレスが1点差の試合で大きく勝ち越している中、ドジャースは22勝22敗と勝率は5割に留まる。


 ドジャースがライバル球団に比べて勝負強さを欠く理由の一つが、ロバーツ監督の采配にもある。

 たとえば現地9日のロッキーズ戦。相手先発投手が右投げのヘルマン・マルケスが先発したにもかかわらず、左打者のキム・ヘソンがスタメン落ち。ロバーツ監督に不満を示す韓国メディアもあった。

 これは“言いがかり”レベルだとしても、やはり最近のロバーツ監督の采配、特に継投策には首をひねりたくなる場面も少なくない。

山本由伸の快投と逆転負けで露呈した継投判断の是非

 先日のオリオールズ戦では、山本由伸が9回2死までノーヒット投球を披露。しかし、最後の打者に被弾を許し大記録は幻となった。

 そこまでは仕方なかったが、ロバーツ監督は即座に山本に代えてブレーク・トライネンを投入。すると剛腕右腕は4者連続で出塁を許し、最後は抑えのタナー・スコットが痛恨の逆転サヨナラ打を浴びた。

 ドジャースとすれば、まさに天国から地獄へ突き落される歴史的な逆転負けを喫したわけだが、山本の交代や、その後の継投策には多くの解説者やファンから批判が噴出した。

 果たしてあの場面でトライネンは準備万端だったのか。そのまま山本を続投させる選択肢もあった中で、結果的に3点差をひっくり返された事実は最後に響いてくる可能性もあるだろう。

ロバーツ監督は頭に血が上りやすいタイプ?

 また、ロバーツ監督の継投策には以前から批判が付きまとってきた。6月には“大量リード”して迎えた9回に野手をマウンドに上げるも、3つのアウトを取れず。
結果的に温存するはずの救援投手に負担をかけたこともあった。

 ロバーツ監督は頭に血が上りやすいタイプなのか、投手交代を急ぎ過ぎる傾向があるのはファンなら周知の事実だろう。

 また、攻撃面でも各打者の能力に依存する傾向が強く、機動力を用いることはまれ。高額サラリーの選手が多いという事情もあるが、基本的には選手任せで、打順の組み替えも限定的だ。

物議を醸し続けている「コンフォート起用問題」

 さらに今年は特定の選手に固執することも目立つ。典型的なのが打率1割台にあえぐマイケル・コンフォートをレギュラーに近い形でいまだに起用しつづけていることだろう。

 コンフォートは開幕直後から低空飛行が続き、ここまで10本塁打と自慢のパワーは本領発揮には至っていない。現時点で20本塁打近く記録しているならまだしも、ようやく二桁本塁打に達したところ。さらにOPSも.621と低迷している。

 コンフォートは1年契約なので、いつDFA(事実上の戦力外)になってもおかしくない成績だが、なぜかロバーツ監督に優遇されてきた。これはドジャースファンにとって、最も納得しがたい選手起用の一つだろう。

実績豊富なロバーツ監督に求められるもの

 ロバーツ監督は就任から今季が区切りの10年目。開幕前には4年総額3240万ドル(当時のレートで約48億円)で、2026年から29年シーズンまでの契約延長に合意している。
来季以降の年俸約12億円はもちろんメジャー30球団の監督の中でトップである(今季の800万ドル=約12億円もトップ)。

 就任から昨季までの9年間で地区優勝を8度、世界一を2度達成したロバーツ監督の手腕は称賛に値する。ただし、その土台には圧倒的な戦力があるのもまた事実。実際に、昨季は4年ぶりの世界一に輝いたものの、ナ・リーグ最優秀監督の投票ではまさかの7位という低評価に終わった。

 泣いても笑っても今季のレギュラーシーズンは残すところあと10数試合。2年連続世界一に向けて、ロバーツ監督の手腕が問われる。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。

編集部おすすめ