地方では、高齢の親世帯とその子世帯がすぐ近くで暮らす「近居」が珍しくない。近くで暮らすことで、例えば体調の悪いときにお互いを頼ることができたり、忙しいときに助け合えたりする。
同居でストレスを感じるよりは、ずっと理想に近い生活ができるのではないか、と想像する人もいるだろう。
ただ現実は、そううまくいくことばかりではない。世代が違えば価値観も異なる。息子や嫁の立場から、腹の立つこともあるだろうが、姑たちもまた、その関係性に悩むことがあるのだという。

地方あるある“近居”のリアル、嫁姑の微妙な関係性とは?「LI...の画像はこちら >>
親と子、嫁と姑、“ばあば”と孫……。地方ならではの微妙な距離感、関係性の難しさとは?

今回は昭和世代の女性たちに、姑の立場から見た近居の暮らしのリアルを聞いてみた。

嫁とは1週間、口をきかないことも

 

「長男一家とは同じ敷地内に家があって、毎日のように顔を合わせてます。孫は年中うちの居間で過ごしていてね。うちにおもちゃやら学校のものやら何やらいろんなものを持ち込んできて、すぐ部屋が散らかるので困ったもんです」(Aさん・70代女性)

限りなく同居に近いような暮らしをしているらしいAさん。境界線のあいまいな暮らしにうんざりしているかのような口ぶりだが、むしろ表情はどこか嬉しそうに見える。

「ご飯もよく一緒に食べます。この前なんか、嫁さんがいないときに大きい孫たちが友達を呼んで、うちで焼肉パーティーをしてね。なんで私に黙ってやるんだって言って、嫁さん怒っちゃって1週間口きいてくれなかった、まったく! アッハッハッハ」

Aさんは、やはり嬉しそうだ。
本人に言うと怒られそうだが、嫁とのやりとりを楽しんでいるのではないかと思う。楽しめる性格、というところが大きそうだ。

「そのあと嫁さんのお父さんが足をケガして大変そうだったから、鍋いっぱい大根煮てあげたら、お父さん美味しくって汁まで飲んでたよって、1週間ぶりに嫁さん話しかけてきたんだよねえ、まったく」

胃袋を掴むのが上手なところはさすが。怒っているようで嫁の父親にも優しいAさんだった。とはいえ、ストレスがたまるのだという。

「私も腹の立つことは山ほどあるんだけど、喧嘩になっちゃうからガマンしてます。どうしても言いたいときは息子に伝えるよ。これでも“ばあば”は遠慮してるんです。あとは友達と会ったときにしゃべって発散、発散!」

女性はおしゃべりで発散できる場があれば強い。息子、そして孫も、“かすがい”になっているようだ。

「孫が直接、LINEくれて『駅まで車で迎えに来て!』なんていうこともよくあります。大変だなと思っても可愛いからね。
嬉しくて迎えに行っちゃいますね」

“お義母さん”って書かれるとひどいなって思う

しかしながら、誰もがAさんのようにハッキリと嫁に意見を伝えられるわけではない。

「Aさんのところは、話を聞いてると言いたいこと言いあって仲良さそうでいいなあって羨ましい。わたしはお嫁さんにも息子にも遠慮しちゃうんです。息子はお嫁さんの側についてるって感じだから」(Bさん・70代女性)

息子に話を聞いてほしいと思いつつも遠慮してしまうBさん、嫁とももう少し距離を縮めたいけれど、嫌われたくないし嫌いたくない、微妙な心持ちだそう。

「この前はお嫁さんがコロナになっちゃって、買い出しに行ったり掃除したり、孫の面倒もせっせと見ました。洗濯物も山盛りでね。疲れたけど手伝ってあげられてよかったって思ってます。ただ……」

おとなしそうなBさんが顔をしかめた。

「治ってからお礼のLINEをくれたんですけど『お義母さん』って書いてあったんですよ。あれは、悲しいというか、ちょっとひどいなって思いました。実のお母さんに送るメッセージに書くならわかるんだけど、わたし宛に書く?って」

確かに、わざわざ変換しないと「お義母さん」とは出てこない。きっと深い意味はなかったのだろうが、Bさんにとっては残念なことだった。直接やめてほしいと伝えることはできなかったそうだが、後日送られてきたメッセージでは「お母さん」表記に変わっていて、ほっとしたそうだ。


「そのあと実は、わたしもコロナにかかってしまいました。孫にうつしたくないから、看病とか来なくていいって言ったんですけど、お嫁さんがゼリー飲料とかいろいろ買って持ってきてくれたんです。嬉しかったですね」

姑の世代であっても、言いたいことが言えず遠慮している人がいる。話を聞いていると、この先、Bさんとお嫁さんはもう少し距離を縮められるのではないか、という気がした。ただ、遠慮と気遣いの境目がどこにあるのか、共通認識を持つのはなかなか難しいところかもしれない。

“これだけやってあげたんだから”って思うとダメ

地方あるある“近居”のリアル、嫁姑の微妙な関係性とは?「LINEで“お義母さん”って書かれると悲しい」 
祖父母に向かって走る孫2人
せっかく近くにいるのだから、孫の成長をしっかり見届けたい。そんな気持ちをきっかけに、ある意味、戦略的に生活スタイルを編み出した人もいる。

「息子一家はうちの隣に家を建てて住んでいます。孫が小さいときから。隣とはいえ、完全に生活は分かれているので、行き来をする理由をつくらないと、孫にもなかなか会わないままどんどん育っちゃう。それは寂しいと思って」(Cさん・70代女性)

Cさんは毎週末、昼食を作って息子一家を“ばあば”の家に呼ぶことで、気軽に行き来できる機会を作った。

「毎週、お昼ごはんを用意するのは大変といえば大変でしたけど、一緒に過ごせる時間が増えて嬉しかったですよ。
昼間忙しくて予定が合わないときは、朝ごはんをうちで出しました」

すごい! 嫁の立場だったらどんなに助かるだろうか。とはいえ、感謝が飛び交ってすべてが理想通り、とはいかないらしい。

「もちろん、嫁さんに対して思うこと、指摘したいときもありますけど、直接は言わないです。そういうときは息子に言うようにしています。間に入ってくれて助かっています」

ここでも、長男がうまく間に入って調整役になっているようだ。孫たちのお世話も頼まれたことはなるべくやってきたという。公共交通機関の少ない地方では、自家用車での送り迎えを“ばあば”が担っていることもよくある。

「頼りにされる、甘えてもらえるって嬉しいですよ。でもね。これだけやってあげたんだから、こっちも何かしてもらえるはずという気持ちでいると、腹が立つと思う。やったことに対して、喜んでくれたらそれだけでよかったな、って思ってやってますよ」

胸を張って笑顔を見せるCさん。最後には、見返りを求めず自分のできることをするのだという“人間関係の極意”のような言葉を伝えてくれた。
頼るときは頼って、遠慮はしすぎないで、見返りは求めず、お礼はきちんと伝える。ちょっとしたことが不満のもとになるので、身内といえども気遣いを忘れてはいけないのは、お互い様である。

今回、話を聞かせてもらった70代の女性たちは息子を大いに頼りにしているようで、「嫁との間に入ってもらうと助かる」と口を揃えた。母親にとっては、息子が家庭を持とうが、30代になろうが40代になろうが、ずっと大事な“息子”である。世代で価値観が違うのはしょうがない、と割り切って、近居の暮らしに“かすがい”として役割を果たせばきっと、株が上がるに違いない。

<取材・文/平野ジュンココ>

【平野ジュンココ】
山梨県在住のライター。インタビューが好き。歌を人生の支えとしている。
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