コンビニのトイレ利用をめぐっては、商品を購入せずにトイレのみを利用する客や、ひどく汚す客、酒に酔って長居する客の存在などが問題となっており、利用有料化の議論も出ている。
また、ローソンが持続可能な「トイレ開放」を掲げるなどコンビニ各社間でも対応・姿勢の温度差がみられる。今回張り紙に書かれた内容に関するコンビニチェーン本部の見解も交えて、コンビニトイレの運営のあり方について考察してみたい。
1日100万人が利用…コンビニトイレの現状は?
ローソンの公表によれば、同社の全国の店舗だけでコンビニのトイレは1日あたり約100万人に利用されているという。その運用はコンビニ店舗にとって悩ましい問題であり、トラブルも少なくない。昨年10月には山形県鶴岡市のコンビニエンスストアで、男性が正当な理由なく女性用トイレに侵入したとして逮捕される事件が発生。2023年10月には、東京都内のローソン店舗でトイレ利用ができない時間帯であることを告げられた客がレジ内に押し入り、従業員に暴言をはいたうえで下半身の衣類を脱ぎ、床にしゃがむなどして警察が出動するトラブルが発生。19年には埼玉県の店舗のトイレで、女性が女児を出産してそのまま置き去るという事件が発生。
このほか、酒に酔った客が長時間占有して汚物などでひどい汚れを残したり、観光地の店舗ではトイレの前に行列ができたり、利用者がトイレにゴミを詰まらせるといったトラブルは枚挙にいとまがない。
「トイレの掃除や備品補充、水道代、修理代にかかる費用はすべて店舗が負担しなければならず、何かトラブルが発生するたび対応に時間を取られ、膨大にある通常業務の進行に支障が生じることになる。ただでさえコンビニは従業員の確保が難しく人手不足が深刻だが、トイレが使えないことでお客さんから強い口調で責められたり、何度もトイレ掃除をさせられることが原因で店員がやめてしまうこともある。コンビニは公共施設ではないので、コンビニの利用を許可することで大きな損失を被る義理はなく、チェーンとして一律でお客さんの利用を禁止するというのも一つの選択肢ではないか」(元大手コンビニチェーン社員)
社会インフラの自負。買い物なしでも歓迎?
ちなみに「住宅街より繁華街の店舗のほうがトイレ使用にまつわる問題は悩ましい」(同)とのことだが、コンビニチェーン各社の方針はまちまちだ。積極的な取り組み姿勢を示しているのがローソンだ。同社は1997年に「トイレ開放宣言」を発表し、国内コンビニチェーンとしては初めてトイレを開放。2022年からは「コンビニのトイレについてお客さまに考えていただく機会につなげたい」(同社公式サイトより)という目的で、一部の店舗で「アートトイレ」を展開。福祉施設のアーティストのデザインや一般公募で募ったデザインを採用している。導入した店舗では、利用者のマナーの向上により店舗の清掃・メンテナンスの回数が減るといった効果が出ているという。
同社は1月2日付「ENCOUNT」記事の取材に対し「病気などで外出時にトイレの不安を感じる方が多くいらっしゃるので、いつでも使えるトイレは社会インフラとして必要です」「お買い物いただくことがありきと考えてはいません」と説明している。
ファミリーマートは13年から多目的トイレを店舗の標準レイアウトとして設置しており、2020年時点では約4000店以上の店舗に設置されている。
本部は強制できない。最終判断は店主の手に
業界最大手のセブン-イレブンもトイレの利用が可能な店舗は多い。「トイレに関しては、本部が何らかの方針を示すことはあっても、最終判断は各フランチャイズ(FC)店舗オーナーによる。そのため、同一チェーンのなかでも、『終日利用OK』『深夜帯は使用停止』『土日祝日は使用禁止』『原則として使用禁止』など混在しているのが実情。トイレ運用の費用はFCオーナーの負担であり、清掃など関連する作業量に伴う人員配置計画にも影響してくるので、本部が運用ルールを強制することはできない」(同)
張り紙が訴えた「限界」
では、冒頭で紹介した張り紙の件について、このコンビニチェーン本部はどのように認識しているのだろうか。
「当該店舗では張り紙はすでに撤去されており、トイレの使用が可能となっております」
前出・元大手コンビニチェーン社員はいう。
「レジのシステムや発注システム、営業時間などは本部との契約に基づき決められたルールに従う必要があるが、店内の陳列レイアウトやポップ、張り紙、トイレの利用などについてはFC店側に一定の裁量が任されている。今回の張り紙も店が独自の判断で掲出しているものと思われ、本部もそこまで細かい各店舗の実情を把握しているわけではない」
いずれにしても、コンビニのトイレを利用する側の人々には適切なマナーの順守が求められているといえよう。
<TEXT/山田浩二>
【山田浩二】
飲食チェーンや学習塾、小売り企業を経てIT企業でシステム開発業務に従事。現在はフリーのライターとして主に企業・ITなどのジャンルに関する取材・記事執筆を行っている。
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