2025年12月末時点の国内店舗数は171。1年間で4店舗の純減でした。ステーキレストランは競争が激化しており、「いきなり!ステーキ」は相対的なコストパフォーマンスが低下しつつあります。
大成功した「高回転・低価格」モデル
「いきなり!ステーキ」は2025年1-9月が1.4%の増収でした。原材料高を背景に値上げを続けており、2025年度の客単価は6%程度増加。客数が減少する中でも売上増を実現しました。しかし、店舗数を抑制しているために微増に留まっています。「いきなり!ステーキ」は開業当初、食い形式でステーキを提供し、高品質の肉を低価格で楽しめることをセールスポイントとしていました。ステーキ単体の原価率を70%、サラダやライスなどサイドメニューを含めて55%に抑制。立ち食いスタイルで回転率を高め、高稼働で稼ぐというビジネスモデルでした。
原価率60%から40%に。変貌した収益構造
1号店をオープンした2013年は、高級フレンチや高級イタリアンを立ち食い形式で提供する「俺のフレンチ」「俺のイタリアン」がブームを巻き起こしていました。しかし、「いきなり!ステーキ」はオペレーションを平準化することが可能。ここが画期的なポイントでした。ハレの日に食べるステーキを日常食として提供したことで新たな需要を開拓。2017年から2019年にかけて店舗を急拡大していきました。
「いきなり!ステーキ」の人気を支えていたのはコストパフォーマンスでした。これが失われていきます。
ペッパーフードサービスの2014年度の原価率は50%でした。店舗数を急拡大していた2019年度は60%近くまで上がります。しかし、2024年度は40%まで低下しました。2020年には主力業態の一つだった「ペッパーランチ」を投資ファンドに売却しています。
都心でも着実に増殖…ステーキチェーンの勢力図に変化
「いきなり!ステーキ」は2025年11月に価格改定を実施、主力の「ワイルドステーキ」150グラムは1430円から1580円になりました。度重なる値上げにより、相対的なコストパフォーマンスも低下しました。「ワイルドステーキ」150グラムに、ライス・サラダ・スープの「いきなりセット」をつけると、トータルで2000円を超えてしまいます。
一方で沖縄発祥の「やっぱりステーキ」は、主力商品の「やっぱりステーキ」150グラムが1900円で、ライス・サラダ・スープがつく上におかわりが自由。
「やっぱりステーキ」は2020年に東京に初進出し、翌年には東京で3店舗目となる「やっぱりステーキ芝大門店」をオープンするなど、関東圏で着実に出店を重ねてきました。2022年に京都、2024年に兵庫に1号店を出店し、関西圏の店舗ネットワークも強化しています。「いきなり!ステーキ」が力を失う中で、ステーキファンの受け皿となっている可能性があります。
マイレージ改悪で常連が逃げた?
ステーキに強みを持つ競合「ブロンコビリー」も「あさくま」もサラダバーがあります。「いきなり!ステーキ」のサービス力はどうしても見劣りしてしまうのです。そして何より、「いきなり!ステーキ」はリピーターを逃してしまった影響が最も大きいのではないでしょうか。
2020年12月に1500万もの会員を抱えていた「肉マイレージ」の制度を改正。ランクアップクーポンなどの特典を終了しました。これが多くのファンの失望を買います。
オーダーカット制度を導入していた「いきなり!ステーキ」は、注文の難易度が高いこともあってリピーターが売上を支えています。ファンを取り逃がすと、中期的な客数減に苦しめられるのです。
飲食店がコロナ禍から回復しつつあった2022年でも、既存店の客数は3.3%減少。2023年も2.5%というわずかな増加に留まりました。
「いきなり!ステーキ」は2024年4月にオーダーカットを廃止。オペレーション改善を図るとともに、オーダーの難易度を下げて集客の間口を広げました。
すき焼きに海鮮も…「脱ステーキ」を模索
2025年に入っても客数が回復しない「いきなり!ステーキ」ですが、これは経営陣が狙ってやっているという側面もあります。2025年7-9月はすべての月で客数が計画を上回っているためです。同期間の売上高は計画が35億1200万円に対して、実績は35億3400万円。ほぼ計画通りの結果を出しているのです。「いきなり!ステーキ」は国内よりも海外の出店を強化。
国内においては新業態の開発に余念がありません。すき焼き専門店の「すきはな」、とんかつの「かつき亭」を世に送り出し、M&Aによって手にした海鮮居酒屋事業「かいり」の新店舗も出店しています。
ペッパーフードサービスは中期経営計画において、2024年から2025年度にかけて新業態の成長モデルを確立、店舗網を拡大するとの目標を立てていました。
しかし、「いきなり!ステーキ」以外のレストラン事業の2025年7-9月の売上高は計画を下回って推移しています。利益も出ておらず、会社全体で赤字に陥らないよう繊細なかじ取りを迫られています。正念場を迎えていると言えるでしょう。
<TEXT/不破聡>
【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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