結局はバンコクである。ちょっとした日本の成功者の多くがかつてはシンガポールに、その後ドバイにと拠点を移していったが、多くがまたバンコクに戻ってきた。
税制がどうのいっても、なんだかんだ人間臭いバンコクがやっぱり居心地がいい。
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 タイの首都バンコク中心地は東京や大阪に負けないくらい、飲食店やショッピングスポット、観光地、ナイト・エンターテインメントが充実し、高層ビルがじゃんじゃん建つ大都会だ。ビル群はオフィスビルが多かったが、最近はタワーマンション単体、複合型などさまざまが建っている。特にタワマンは東京並みに乱立し、同時に同じくらい高額ではある。

バンコクタワマン投資は今が買い時?「利回り6%保証」の甘い話に潜む罠と成功のための出口戦略
タワマンもホテルもとにかく上へ上へ伸びている
 タイ人富裕層はとんでもない資産と使いきれないほどの収入を得ている。それらをタワマン投資でさらに増やす。しかし購入層が彼らだけでは成り立たないこともあり、バンコク不動産の顧客は外国人投資家・富裕層も対象となっている。

 すでにかなり高値になっているバンコクのタワマンはいまだ投資に向くのだろうか。

高騰時に立ち上がったプロジェクトが続々完成中


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高級物件はホテルのような造りで、高額家賃でも店子はみつけやすい
 素人目ではバンコク・タワマン価格は不思議な値動きをしているように感じる。パンデミック以前、つまり2019年までの数年間は中国人を中心にした外国人がバンコクの不動産を買い漁り、中古でも価格が上昇し続けていたことは当然の値動きだったとは思う。

 しかし、ウイルス蔓延阻止の鎖国が2022年6月ごろに終了したときには、もう以前のタイではなくなっていた。中国人渡航者が激減したのだ。あるジャーナリストによれば「そもそもタイ観光は中国政府が推進していたためで、パンデミック以降その推しをやめたからタイへの中国人渡航が減った」という。


 タワマンは今日建てようと計画して明日完成とはいかない。19年以前に計画されて建設がはじまり、中国人が来なくなった23~25年の今になって続々と完成している状況にある。とにかく豪華で高級で、日本のように「低層マンションもいいよね」というトレンドもほぼなく、何十階建てという文字どおり「タワマン」が造られていく。

 価格帯もおそろしく高額だ。郊外に行けば1室60平米前後で1000万円以下もあるにはある。都心の高級物件はタイ・バーツ建てで億超え、日本円換算では円安の今5億円も驚く設定ではない。2028年竣工予定のポルシェデザインのタワマンは発表当時で72億円超。日本人居住者も多いトンローというエリアにできたラグジュアリー・マンションのペントハウスは700平米を誇るにしても30億円を超える。

 タイは今、隣国カンボジアとの国境紛争が起こっており(執筆時は一応停戦中ではあるが)、同時に諸事情が重なり経済的に見通しのよくない状況が続く。それなのに豪華タワマンが需要を超えて供給されている。タイのメディア報道では2024年末時点でバンコクの未販売住宅在庫は約23.5万戸という。

 間の悪いことに、25年3月下旬に隣国ミャンマーで発生した地震がバンコクでも観測された。
中国ゼネコンの建設中ビルが倒壊したり、日本とは違って耐震設計ではないことから多くのビルの壁にひびが入った。これによってバンコク不動産のバブル崩壊が懸念されたものの、あまり値下がっていない。
というのは、タイ・デベロッパーは強気姿勢で、「うちはこの値段で売る」と決めた価格を死守する傾向にあるためだ。タイ・メディアのレポートでは一部プロジェクトで提示価格から5~10%の値引きがあるということだが、強気には変わりがない。

 また、筆者知人は都内に保有する1室の売却を考えていたが、ちょうど先の地震が起こってしまう。ところが知人の住む都心地域全体の相場は下がるどころか数十%も上昇した。相場が下がると見込んだ需要が拡大してか、逆に値上がりしているという。実際、新築相場も高騰時に計画されていることもあって、21~25年の過去5年間で10~17%程度は不動産価格が上がっている状況だ。

 結局のところ、バンコクのタワマンは現時点で買いなのかどうか。

不動産のプロに訊いたバンコク不動産投資でやっていいこと・悪いこと


 バンコクやタイ東部のリゾート地パタヤなどで不動産売買に長く携わっている西尾靖氏に話を伺った。西尾氏は日本でサラリーマン大家になり脱サラ。2009年にASEANの不動産視察で魅力を感じ、そのまま海外不動産エージェントになった。海外不動産販売実績は実に1000ユニット以上となる。


「タイの不動産投資は、基本的に海外とか日本とか関係なく、『安く買って、高く売る』なんですよ。これがまず第一条件」

 西尾氏は「不動産投資はとにかく安く買って、運用を考え、最後にどう売るかです」という。バンコク不動産投資も賃貸に出して利益を得る「インカムゲイン」と、不動産を売却して差額で利益を得る「キャピタルゲイン」が中心になる。安く買って、家賃収入でキャッシュインしていれば、原価が下がっていくことと同じ。

 西尾氏は「まず安く買い、ランニングしている間に『出口』をどうするか決めればいい。この出口を考えて買っていない人が意外と多くて」という。スタート時点で失敗をする外国人投資家は少なくないようだ。

 外国人がタイの不動産を購入する場合、土地そのものは購入できないので分譲タワマンを買うことになる。それも日本などからの外貨送金でキャッシュ一括が原則だ。ローンが組めないので、安い物件だとしてもそれなりの額を一気に支払うというリスクが伴う。

「不動産は『個』と『環境』です。個は建物のクオリティであったり、部屋の内装、管理状態。
それがすごく重要です」

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駅近物件は同じスペックでも他地域より15~30%も高値がつくという
 個が最高でもそれが離島にあったり、砂漠のど真ん中だったら意味がない。つまり、「不動産は環境も買うものです」という。たとえば、駅近で日本人向けサービスが多い地域、パタヤのビーチフロントなどだ。西尾氏の経験では「ビーチの目のまえの物件は、どこの国に行っても価値があまり下がらない」。結局この2つを照らしあわせ、その物件が相応な価値があるかどうかを判断し、安いのかどうか、買いなのかどうか、その出口をどうするかを考えることがバンコク不動産投資の基本なのだ。

「不動産は買ったら活用方法は3つしかない。『売る』『貸す』『住む』しかない。もし絶対負けない不動産投資というなら、自分が住めばいいのです。自分が住みたいと思う物件を買うのがベストだと思います」

 西尾氏曰く「自分が住みたいものは最悪自分が住めばいい。自分が住みたい物件はきっと借りたい人、買いたい人もいます」。それが西尾氏の持論である。

本当にあった日本人の不動産詐欺被害

バンコクタワマン投資は今が買い時?「利回り6%保証」の甘い話に潜む罠と成功のための出口戦略
タイ式長屋でも都心は数千万円はくだらない
 バンコクの不動産投資が難しいのは価格だけではない。ほかにもいろいろな要因がある。
それは日本でも同じで、適当に買うのではなくしっかりとした勉強が必要だ。

 たとえばインカムゲインがどれくらいになるのか。タイ・メディアの記事ではバンコクでの賃貸収益は平均利回り4~6%といったところ。西尾氏も「ざっくり、バンコクの利回りは5%が全般的になっていると思う」という。

「デベロッパーがプレビルドの段階(着工まえから分譲販売すること)で利回り6%を3年間保証と宣伝することもあります。こういうのは、利回りつけないと売れない物件だ、ということを認識したほうがいいです」

 と西尾氏。実際にそれで成功する投資もあるが、結局は甘い話には気をつけろということ。

「パンデミック以前から日本でバンコクの物件販売会をしていることもあります。日本の銀座とかでね。先ほどのビーチフロントじゃないですが、いい物件はそこまでしなくても客が来ますよ。例外はありますが、わざわざ海外で販売会をしている物件もまた、そこまでコストをかけないと売れない物件ということを認識したほうがいいです」

 ともいう。先述のようにタイの不動産購入は外国人の場合、基本的に一括キャッシュなのでリスクがある。
「株などのようにドル・コスト平均法で買っていくわけにはいかない。プレビルドなら完成まで積み立て的に払うこともできますが、完成したときにディベロッパーがいった利回りが出るか。実際、フタを開けたらそうじゃないことが、まあ私の経験上ほとんどで。だから、安く買うことをとにかく勧めるのです」

 そんなタイ不動産売買の経験豊かな西尾氏だが、過去に失敗したこともある。

「タイで最大に失敗した例は、2012年に販売をはじめたアユタヤの問題があった物件売買ですね」

 アユタヤで起こった、日本のTVニュースにもなったような事件で、簡単にいえば日本人向けに販売した物件が登記されずにいたという詐欺まがい事件だ。この事件を書いている日本人のブログを参照にすると、1ユニット195万~245万バーツ(当時600万~750万円くらい)で販売されたようだ。完成したものの購入した人の名義で部屋は登記されず、管理会社はのらりくらりと説明をするだけだったという。

「問題になったのが2017年だったはず。それを私は売ってしまったんです。40件くらい。縁というものは不思議なもので、そのプロジェクトの最後の代表者が私です。このプロジェクトに関わった人の中で、私みたいにタイの不動産や法律に知見があり、関係各所への人脈も持っていて、解決できる可能性がありそうな人がおそらくいなかったので、腹をくくって引き受けました。私がバトンを引き受けた時点での投資家は369人いましたが、その方たちの多くを出口までうまく案内をしたというところで終わったんですけどね。最悪の失敗でした」

 プロでも騙されるような詐欺まがい案件はタイではたくさんある。筆者の知人(タイ人)はゲストハウスをはじめるためにパタヤで物件を購入することにした。銀行でのローン審査もおわり頭金を振りこんだが、担当者がそのままその金を持って逃げた。銀行に返してもらうように頼んだが、銀行側は「担当者個人とそちらの問題で、当行は無関係」とされてしまった。

裏技で購入することもできるけれど…「タイ人女性の名義で買って根こそぎ奪われる」


 執筆時点では円安だけでなくタイ・バーツも高騰していて、2025年11月ごろは1万円が2100バーツほどだったところ、26年2月にはついに2000バーツを割りこんだ。少額の両替ならインパクトは些細だが、1000万バーツの物件を購入となると、その差は240万円近くにもなる。

 日本ではパンデミック前後くらいに“億り人”と呼ばれる人が急増した。その中には仮想通貨の特性を活かし、海外で不動産投資を考えている人も少なくないようだ。国によっては実際に仮想通貨でスーパーカーや不動産を購入できるというが、さすがにタイではダイレクトに仮想通貨を使った不動産売買は聞いたことがない。

 他方で、世界中に闇業者が存在しているという噂をあるジャーナリストから聞いた。海外在住のやはり仮想通貨投資をしている筆者知人も似た話を飲み屋でしていた。タイでも仮想通貨などの売買が流行していて、筆者の周囲にもタイ人や欧米人で短期売買を糧にしている人が少なくない。普通はタイ政府の認可を受けた取引所で売買するが、バンコクにもそういった地下的な業者がおり、仮想通貨を秘密裏に現金化してくれるのだという。日本にある仮想通貨口座から送金となれば、少なくとも日本の法令に引っかかる可能性が高いので別の国を経由したりするらしいが、いずれにしてもリスキーでしかない。

 タイ分譲マンションは外国人名義で購入できることは先述のとおりだが、1物件の全戸数の49%までしか外国人に販売できないという規制がある。そのため、先のように未販売のあまった戸数が多数あっても、全数を外国人が購入できるわけではない。そもそもタイの富裕層には強固なネットワークがあり、プレビルドの段階で本当にいい物件は先にタイ人富裕層間で売買がおわっており、優れた物件を一番安いタイミングで外国人が購入するのは難しい。

 しかし抜け道もあって、法人設立をすることでタイ法人≒タイ人とみなされ、我々外国人でもいい物件を押さえるという技もあるにはある。その後、法人税などいろいろ諸経費がかかってくるので、そのあたりと損益をしっかり計算しないと割に合わないかもしれないが。

 悪手としてやってはいけないのは、タイ人名義で購入することだ。タイ人配偶者であればまだ話は異なるが、よくあるのが男性が懇意にするタイ人女性の名義で買うこと。これで根こそぎ奪われることは昔からよくある話である。

 タイ人は日本人が思っている以上にクレバーな人が多い。特に女性は魅力的な人も多く、同じ言語を有するタイ人男性でさえ騙されることが頻繁。タイ人名義のほうが簡単に買えるとはいえ、必ず自分の名義で買うようにしたい。

結局のところタイの不動産投資はしないほうがいい?

バンコクタワマン投資は今が買い時?「利回り6%保証」の甘い話に潜む罠と成功のための出口戦略
都心とはいえ、方向によってはビル群が少なく、空が広く見える
 タイの大手メディアの記事では、中国人富裕層がパンデミック以前よりも少なくなったとはいえ、2025年第1四半期における外国人コンドミニアム売買市場は依然として中国人購入者が牽引しているという。

 また、外国人購入の約54%が300万バーツ以下(約1500万円以下)の物件に集中し、31~60平米の1~2ベッドルームが主流で売れているようだ。おそらくバンコク郊外の物件で、賃貸というよりは自身が住むためのものと考えられる。賃貸としても、むしろ郊外や新興エリアなら利回り6~7%に達するケースもあるそうだ。

 このトレンドはタイ政府の各種緩和措置も関係していると見られる。700万バーツ以下の物件を対象に住宅取得関連手数料の利率が大幅に下げられ、2025年4月~26年6月末までの措置として、所有権移転手数料は2%から0.01%に、抵当権設定手数料を1%から0.01%となった。これにより最大で20万バーツ超(約100万円超)のコスト削減ができるので、投資家には大きな利益につながる。

 いずれにしても、不動産投資は西尾氏のいうように「安く買うことが重要」になる。といっても、これが一番難しい。

「日本にいては海外不動産の相場や適正価格の判断がつかないでしょう。そして、いくらあってどうしたいか、その不動産を将来的にどうしたいか、5年後なのか10年後に売りたいのか、もしくはずっと保有するのか。それを購入前に考える必要があります」

 と西尾氏はいう。これまで多く犠牲を払い、失敗もしてここまで来た人物だ。

「ビジネスですから売らなきゃいけないのはあります。でも、目のまえにいるお客さんに無理に買わせて5年後、10年後に恨まれるほうが嫌です。買うまでより、買ったあとのつきあいのほうがずっと長いですからね」

 自分と同じ失敗をさせたくないというのが西尾氏のポリシーのひとつだ。目のまえの物件に勢いで飛びついてほしくないので、多くの投資家には甘いことだけを話したりしない。

 当然、不動産投資は必ず「儲かる」わけではない。適当に買っても普通に損をする。バンコク不動産に限らず、もしも外国の不動産投資に挑むのなら、スタート時点で日本での投資以上にしっかりと“出口”を考えること。それが最低条件なのだ。

<取材・文・撮影/髙田胤臣>

【髙田胤臣】
髙田胤臣(たかだたねおみ)。タイ在住ライター。初訪タイ98年、移住2002年9月~。著書に彩図社「裏の歩き方」シリーズ、晶文社「亜細亜熱帯怪談」「タイ飯、沼」、光文社新書「だからタイはおもしろい」などのほか、電子書籍をAmazon kindleより自己出版。YouTube「バンコク・シーンsince1998│髙田胤臣」でも動画を公開中
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