気づけば欲しくなり、信じてしまい、怒らされている──。スマホがレコメンドし、流れてくるおすすめコンテンツが、私たちの価値観を少しずつ変容させていく。

例えば炎上系人物のイメージを書き換えるAIパロディ、子供の価値観を左右するインフルエンサー、興味を先回りして偏りを強める関連動画、そして“買わされる”レコメンド機能ーー専門家が警鐘を鳴らす、私たちが知らぬ間に陥っている4つの洗脳リスクを解き明かす。

【洗脳リスク①】過去の問題行動もなかったことに!?「AIパロディコンテンツ」

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近年、炎上や暴露、過激な発言によって注目を集めてきた人物が、AI生成のパロディ動画やパロディコンテンツによって、異なる人物像として再提示されるケースが増えている。カルトや陰謀論について詳しいライターの黒猫ドラネコ氏はこう指摘する。

「代表的な例として挙げられるのが、立花孝志、へずまりゅうといった強い言葉や対立的な振る舞いによって露出を拡大してきた人々。過去の大量の映像・発言が素材となり、AIによって再編集され、短尺動画として流通しています。その過程で、問題発言や炎上の文脈は切り離され、完全にパロディに振り切ったAI動画や、『わかりやすい正論』『共感を誘う一言』『たまに見せる善行』といった断片のみが抽出され、定期的にバズっています」

一見すると無害なエンタメに見えるこれらのコンテンツは、結果として人物評価そのものを書き換える力を持つ。この現象を支えているのが、心理学で言う単純接触効果だ。

「人は、同じ対象を繰り返し目にすると、内容の是非とは関係なく親近感や信頼感を抱きやすくなります。露出が増えることで人物像が“見慣れたもの”になり、結果として、過去の問題行動や発言が相対的に軽く扱われるようになる。すると評価は180度変化し、根拠もない『実は良い人なのではないか』という印象が形成される危険性があります」

【洗脳リスク②】18歳以下に強くインストール!「子供向けインフルエンサー」

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他人の人生を推しすぎると、自分の目標がなくなる恐れが
現在、子供たちの価値観形成において、インフルエンサーの影響力は想像以上に大きい。法廷臨床心理学博士の遠藤貴則氏は「特に影響を受けやすいのが、7歳から14歳の時期だ」と語る。

「この年代は『理想像』を外部から強く吸収する発達段階にあり、現在その役割を担っているのがYouTuberやTikTokerです。問題は、その影響がエンタメにとどまらない点にあります。近年、10代が精神疾患やメンタル不調について情報を得る主要な窓口がTikTokになっているという調査があり、バズっている情報のうち、半数以上が誤情報で、1~2割は明確に有害な内容だと言われています。
子供はそれでも信じてしまう。なぜなら、それを語っているのが“自分にとっての理想像”だからです」

さらに14歳以降、18歳頃までは「友達の価値観」が強くインストールされる時期に入る。

「孤独になったとき、その“友達”は誰になるのか。同じ推しを応援しているコメント欄の人たちに代替されます。顔も知らない、年齢もわからない相手との共感が、疑似的な共同体になっていくんです」

インフルエンサー、アルゴリズム、コメント欄。それらが組み合わさることで、子供たちは知らず知らずのうちに誤情報や有害コンテツ内部の同調圧力の中で育っていくことになる。

【洗脳リスク③】興味を完全把握された「価値観の偏った関連動画」

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ヒロイズムを刺激され、他人のトラブルをSNSで攻撃する
ITジャーナリストの高橋暁子氏によると、“見続けてしまう系”ループ動画は、価値観が偏る入り口になりやすいという。

「アルゴリズムは年齢や性別、生活状況まで含めてユーザーの嗜好を細かく分析します。中高生女子なら『推し活』『キャラグッズ』、男性なら『自己啓発』『投資』、主婦なら『美容』『節約』、シニアなら『健康』『医療』といった具合に、ハマりやすいジャンルはかなり明確に分かれています」

興味深いのは、家族の中でも“見ている世界”がまったく違う点だ。同じ家に暮らしていても、父のスマホには投資や陰謀論的な動画、母には美容や健康法、娘には推しやキャラクター動画ばかりが流れる。

「それぞれが“自分の好みど真ん中”の動画しか見なくなると、アルゴリズムはさらに精度を上げ、関連動画を延々と供給します。気づけば、異なる意見や別ジャンルの情報がほとんど入ってこない状態に」

さらに厄介なのは、同じ属性の人ほど似たレコメンド環境に置かれることだ。

「同じような属性の人たちには似たような動画がレコメンドされるため、現実世界での会話も似通ってきます。
そのため、かなり偏った意見でも『周りも同じことを言っている=これが普通』と錯覚しやすくなるのです。デジタルの枠を超えて洗脳が進むことになります」

【洗脳リスク④】いつの間にか“買わされる”!?「先回りレコメンド機能」

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興味がなかった商品も、いろんな人が紹介すると欲しくなる
ネットの商品広告やECサイトを見ていると、気になっている商品を検索する前から先回りしてレコメンドされることがある。「スマホが自分の会話を聞いているようだ」と恐怖を覚えるほどだが、前出の高橋氏は「実際に盗聴しているのではなく、ビッグデータの精度が高すぎるのが原因」と解説する。

「GoogleやAmazonなどのプラットフォーム企業は、ユーザーの検索履歴、閲覧履歴、位置情報、アプリ使用履歴、購入履歴などの大量の行動データを持っています。過去に自分自身が関連する情報を検索していたり、位置情報の近くにいる人が検索していたりすることが原因となり、趣味嗜好と合致した情報が出てくるのです」

ビッグデータとAIによる分析が的確すぎるあまり、先回りされているような感覚を覚えるというわけだ。

「便利な機能である一方、消費欲求を先回りされてしまうので、たいして欲しくなかったものでも『そういえばこれが欲しかったんだ』と錯覚させられてしまうことがある。生活必需品以外で特定の分野への支出や行動、例えばイベント参加やグッズ購入などが増加している場合、デジタル洗脳が加速していると考えられます」

多くの情報に触れる環境で本当に欲しい物を見極めるのは難しい。いつの間にやら〝買わされていた〞ネットショッピングにはご注意!

【ライター 黒猫ドラネコ氏】
スピリチュアルビジネス、偽医学・疑似科学、反ワクチン・陰謀論、デマや怪しいものを常にウォッチ。X:@kurodoraneko15
スマホの“おすすめ”が、知らぬ間に我々を洗脳する…ハマりがちな4つのパターン
ライターの黒猫ドラネコ氏
【法廷臨床心理学博士 遠藤貴則氏】
ビジネスサイエンスジャパン取締役。ニューロマーケティング(脳科学マーケティング)トレーナー、法廷・犯罪心理の専門家
スマホの“おすすめ”が、知らぬ間に我々を洗脳する…ハマりがちな4つのパターン
法廷臨床心理学博士の遠藤貴則氏
【ITジャーナリスト 高橋暁子氏】
成蹊大学客員教授。専門はSNS、情報リテラシー教育など。インターネット関連の事件やトラブル、ICT教育事情に詳しい
スマホの“おすすめ”が、知らぬ間に我々を洗脳する…ハマりがちな4つのパターン
ITジャーナリストの高橋暁子氏
※2026年2月24日・3月3日合併号より

取材・文/週刊SPA!編集部 イラスト/サダ

―[[デジタル洗脳]の恐怖]―
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