それは「のんびりおばあちゃん日記」というアカウント。おばあちゃん(93歳)の日常を孫(26歳)が発信。彼女のなんでもない日常は、多くのファンに癒やしを与えている。
孫は配信や介護に苦労はあるのか。激動の時代を生きぬいた彼女が、若者に伝えたいメッセージは何なのか。お二人に話を聞いた。
大変な人に「一瞬でもほっとできる時間を届けたい」
孫:1年前に母から「おばあちゃんとの日常をTikTokに載せてみたら?」と言われたことがきっかけでした。当時の僕はSNSは何もやっていなくて、TikTokなんて未知の世界だったんです。でも、母は僕たちのやり取りをよく見ていて「癒やされる人がいるかもしれないよ」と。
——おばあちゃんにはどのように説明したのですか。
孫:「動画を撮って、知らない人に見られるかもしれないよ」と話したら「少し恥ずかしいけど大丈夫だよ」と返事をもらって。両親と祖母と住んでいたので、すぐに撮り始めました。
——実際に撮影を始めて、苦労はありましたか。
孫:NGテイクはあまりなくて、撮影そのものの苦労はあまりなかったです。ただ日常を切り取っているだけで、あまり気負わずにスタートしたので。だから、ここまでたくさんの人に見られると思っていませんでした。知り合いから「これってそうじゃない?」と連絡がきて、びっくりしましたね。仕事で疲れていても、配信しなきゃいけないときがあることは大変ですが……。
——お孫さんは、普段は何をされているのでしょう?
孫:ドラッグストアで、夕方から夜のシフトで働いています。「毎日癒やされています」というコメントがモチベーションになって、配信を続けられていますね。
仕事や勉強だったり、人それぞれ大変なことがあるけど、一瞬でもほっとできる時間を届けたいと思っています。
「やらせでしょ」というアンチコメントも
孫:開始直後は好意的なコメントばかりでした。でも、登録者数が1万人を超えた頃から、不思議な言動をする祖母に「やらせでしょ」「言わせてるでしょ」というコメントがくるようになって……。それらに別の方が反応して、コメント欄でケンカが起きたことがありました。
——日常生活を発信していますが、どこまで見せる、という線引きはどう考えていますか?
「癒やされる」と思ってもらえるものを発信する、ということが基準です。「これは面白いけど、癒やされはしないな。家族で見たら面白いけど、世間では違うな」というものは発信しません。
たとえば、祖母の入れ歯を取った姿って、かわいいんです。はむはむ、という感じでしゃべってて(笑)。でも、入れ歯をしていない姿を他人が見たら、どう思うだろう? そもそも祖母の気持ちはどうなの? と思い、載せていません。
——ご高齢ですと、撮影中のハプニングなどもありそうです。
孫:おやつを食べている動画をよく撮るのですが、年齢的にむせちゃうんです。そういうときはストップしています。あとは、祖母が面白いワードを言ったときに、カメラがまわっていないと「しまった!今の撮りたかった!」と(笑)。
——衝突することはありますか?
孫:祖母は外に出るのが好きじゃないから、病院に行くときは嫌そうな顔をするんです。
おばあちゃん:やさしいわけじゃないんだけどね~(笑)。
認知症が進んでも「かわいい」笑顔
——とはいえ、介護ストレスを感じることもあるのではないですか。孫:僕だけでやってたら大変だったでしょうね。ただ、両親と一緒に介護をしているので、ひとりで背負っているわけじゃない。それぞれ時間を調節して、誰かが家にいるようにしています。
母方の祖母なのですが、父も積極的にみています。「この時間はいれるけど、いた方がいい?」と聞いてくれたり、お風呂やトイレに「そろそろ時間だよね」と、連れて行ってくれたり。父がいないときは、母と協力してお風呂に入れています。
——「介護で旅行に行けない」などの不満もよく聞きますが……。
孫:コロナ前は家族でよく旅行に行っていたのですが、コロナのタイミングで旅行にも行けなくなりました。
でも、90歳を過ぎてから、認知は本当に進んできました。僕の存在はわかるけど、たまに名前を忘れることがあるみたいです。「僕の名前わかる?」と聞いて「わかんないね~」と返されても、あまりにニコニコしているから「かなしい」よりも「かわいい」が勝っちゃう(笑)。
——お孫さんは26歳ということで、家にいるよりも友だちと出かけたい気持ちが勝ちませんか?
孫:友だちと年末や夏に遊んだりはするけど、コロナやインフルエンザが怖くて、「おばあちゃんにうつしたらどうしよう」と。祖母といるのが楽しいので、ストレスもないですね。
戦争を経験して「今は何でも喜べるし、何でもおいしく食べられる」
孫:戦争を経験しているからでしょうね。あの頃は東京に住んでいたらしくて「戦争が本当に大変だった」という話を、昔はよくしてくれました。サイレンが鳴ると逃げるしかなくて、防空壕に入ってもミサイルが降ってきてすごい怖かった、と。
だから今は何でも喜べるし、何でもおいしく食べられる、とも聞いています。
——余生をどう過ごして欲しいと思っていますか。
孫:とにかく笑っていてさえいてくれれば、それでいいです。過去に、祖母が風邪をひいて入院したことがありました。
——まるで介護のプロの方みたいですね。
孫:実際に介護の仕事をしている方からも、声かけや接し方を褒めてもらうことがあります。祖母への対応はこれであってるのかな? といつも不安なので、自信がつきますね。僕は自己肯定感が低い方だから、特に嬉しいのかも(笑)。
一方で「私の家は大変です」というコメントも多くいただきます。
——そういう方たちには、どんなことを伝えたいですか。
孫:周りを頼ってほしい。家族以外でも市役所やケアマネジャーさんなど、助けてくれる人はたくさんいるので。
祖母も週1回はデイサービスに通っています。
おばあちゃんが昔から言い続ける「無理しないでね」
——将来ご自身が年を取ったとき、どうなりたいと思いますか?孫:祖母のように、家族に囲まれて穏やかに過ごしたいです。祖母が今こうして周りに愛されているのも、昔からの行いがよかったからでしょうね。僕も感謝しながら、人生を送りたいです。
——おばあちゃんから、若い人に伝えたいことはありますか?
おばあちゃん:なかなか難しくって、ないね~。
孫:昔から僕に何回もかけてくれてる言葉があるんです。それがたぶん今も、若い人に伝えたいことなんじゃないかな。「無理しないでね」って。
TikTok:@nonbiriobaachannikki
Instagram:@nonbiriobaachannikki
<取材・文/綾部まと>
【綾部まと】
ライター、作家。主に金融や恋愛について執筆。メガバンク法人営業・経済メディアで働いた経験から、金融女子の観点で記事を寄稿。趣味はサウナ。X(旧Twitter):@yel_ranunculus、note:@happymother
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