インバウンド需要に沸いている日本。観光地はもちろん、大きな都市ではどこに行っても外国人の姿が目に入ってきますが、日本に住み、インフレ&物価高の影響を大きく受けている日本人からすると「日本の何がそんなに良いのか?」と疑問に思ってしまいますよね。

そこで、すこし日本にゆかりのある外国人に「日本の印象」を聞くことで、我々が忘れかけていた日本の素晴らしさに改めて気づくことができるかもしれません。

「日本はプレミアムブランド」アメリカ人の55歳男性が語る“世...の画像はこちら >>
ニューヨーク州生まれでニュージャージー州育ち。ウィスコンシン州立大学を卒業したあと、日本でサラリーマンの経験をもつスティーブさん(55歳)。現在はテキサス州で日本食レストランを2軒経営しながら、76万人以上の登録者数をもつ有名なYouTuberです。

初来日は1991年ごろ。大学時代に知り合った埼玉県岡部出身の日本人留学生宅にホームステイしたのが、日本好きになったきっかけだとか。そこで田舎暮らしや農作業を体験し、その後、日本語弁論大会への出場を機に再来日して就職しました。今までに住んだ場所は、千葉県浦安市、東京都世田谷で、訪問した場所は北海道以外ほぼ全国。

2025年に初著書を日本語で出版したスティーブさんは、大の日本車好きで知られています。今回はそんなスティーブさんに、日本の印象を伺いました。

箸とお風呂…日本のホームステイ先では驚きの連続

「日本はプレミアムブランド」アメリカ人の55歳男性が語る“世界から見た日本の魅力”
1990年代の夏、ホームステイ先の養鶏場にて(写真提供:YouTubeチャンネル「スティーブ的視点 Steve's POV」)
今では独自の視点で、日本の魅力をYouTubeで配信するスティーブさん。しかし初めての日本生活は、文化の違いに驚くことが多かったといいます。

「最初に苦労したのは、そうめんですね」

夏のある日にホームステイ先で、そうめんをごちそうになったときのエピソードを語ってくれました。


「箸は使えるつもりだったんですが、そうめんがツルツル滑って全然つかめないんです。『一本も口に入らないぞ』と、ちょっとイライラしました。でも負けず嫌いなので、『絶対に箸で食べてやる』と思ってがんばりました」

そしてもうひとつ、スティーブさんが滞在先の家庭で驚いたのが、日本の風呂文化でした。

「同じお湯を家族で共有するという習慣です。アメリカではあまりないので最初は戸惑いました。でも『体を洗ってから入るんだよ』と教えてもらって、なるほどと思いました」

アメリカではシャワーが一般的で、たまに湯船に浸かることがあっても、基本的にはひとりで使います。その後のお湯は流してしまうということが多いのです。

「スマイル0円」に感動…日本の食と接客の魅力

スティーブさんにとって食の楽しさも、日本で強く印象に残ったことのひとつだそうです。

「寿司ももちろん好きですが、屋台の食べ物が面白かったですね。他にはお好み焼きや焼きそば、肉まん、コンビニの食べ物もおいしい。お好み焼きは『日本のピザみたいなもの』と説明されました。日本は値段に関係なく、料理の見た目がきれいなんです。盛り付けにもすごくこだわりがあると感じました」

鉄板を囲みながら、友人たちに焼き方を教えてもらい、笑い合いながら食べた時間も、日本の食文化を知る楽しい思い出になったそうです。


「日本はプレミアムブランド」アメリカ人の55歳男性が語る“世界から見た日本の魅力”
埼玉県で過ごした、気の合う仲間たちとの思い出のひととき(写真提供:YouTubeチャンネル「スティーブ的視点 Steve's POV」)
日本のファーストフード店に入ったときには、スティーブさんの目をくぎ付けにしたメニューがあったとか。

「マクドナルドのメニューのいちばん下に『スマイル0円』と書いてあったんです。チップ文化がないのに、お客さんに笑顔で接するという考え方が素晴らしいと思いました。その経験は、今の仕事にも生きています」

アメリカでは丁寧な接客に対してチップを渡す文化があるため、笑顔や丁寧なサービスが“無料”で提供されるという発想は、スティーブさんにとって新鮮に感じられたようです。

「日本はプレミアムブランド」アメリカ人の55歳男性が語る“世界から見た日本の魅力”
スティーブさんが経営する「Hoshi Ranch」(日本xテキサスBBQ屋)の壁には、昔から集めていた古い日本の看板が飾られている(写真提供:YouTubeチャンネル「スティーブ的視点 Steve's POV」)
この経験はアメリカ本国に帰ってからも忘れられず、現在彼の経営するテキサス州のレストラン2軒でも「スマイル0ドル」という気持ちを大事にしているそうです。

「なぜ誰も話さない?」会議で感じた日本の“黙る文化”

日本でサラリーマンとして働き始めたときは、別の文化の違いにも直面したといいます。

「日本でいちばん難しかったのは、やっぱり“黙る文化”でした。私はおしゃべりが好きで、思ったことはすぐ言うタイプです。でも日本の職場では、若い社員が会議であまり発言しないことが多かったんです。最初は『どうして誰も何も言わないんだろう』と不思議でした」

スティーブさんが働いていた会社には、日本の年功序列や上下関係の文化があり、会議で積極的に意見を言うと、先輩から注意されたこともあったとか。

「『今はまだ発言しなくていい』と言われたこともありました。アメリカでは若くても意見を言うのが普通なので、最初は戸惑いましたね。先輩を立てるとか、自分を一歩下げるとか、そういう考え方はアメリカではあまりありません。
日本では敬語の使い方ひとつにも、その文化が表れていると感じました」

スティーブさんは日本で働くうちに、その価値観の意味もすこしずつ理解できるようになったといいます。

「相手を尊重する気持ちや、礼儀を大切にする文化は、日本の強みだと思います。若い人でも仕事に真剣で、つまらない仕事でも手を抜かない。そういう姿勢はとても印象的でした」

「日本はプレミアムブランド」外国人が見た日本の価値

「日本はプレミアムブランド」アメリカ人の55歳男性が語る“世界から見た日本の魅力”
「Hoshi Ranch」(日本xテキサスBBQ屋)で行われた車のイベントには、多くの日本車好きが集まった(写真提供:YouTubeチャンネル「スティーブ的視点 Steve's POV」)
長年日本とかかわってきたスティーブさんは、日本について「日本は、世界から見ればプレミアムブランドの国です」と表現します。礼儀正しさや丁寧な接客、ものづくりへのこだわりなど、日本では当たり前とされる価値が、海外から見ると特別な魅力に映るそうです。

「日本人はもっと自分の国に誇りをもっていいと思います。日本は安売りする国ではありません。車でも家電でも、“Made in Japan”は世界で信頼されていますから。日本を尊重する外国人は、日本を愛する日本人を見ると、もっとこの国が好きになります」

日本で当たり前とされている文化や振る舞いは、海外から見ると大きな魅力として映ることも少なくありません。30年以上日本とかかわってきた彼の言葉には、そんな実感が込められているようでした。

<取材・文/トロリオ牧(海外書き人クラブ/ユタ州在住ライター)>

【トロリオ牧(海外書き人クラブ)】
2001年渡米、ユタ州ウチナー民間大使。アメリカでウェイトレスや保育士などの様々な職種を経験した後、アメリカ政府の仕事に就く。
政府職員として17年間務めるがパンデミックをきっかけに「いつ死んでも後悔しない人生」を意識するようになり2023年辞職。RVキャンプやオフローディングを楽しむのが最高の癒しじかん。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員
編集部おすすめ