名門・鹿島で守護神として君臨
早川は神奈川県相模原市出身の27歳。小学生年代から横浜F・マリノスの育成組織でプレーし、桐蔭学園高校、明治大学を経て2021年に鹿島でプロキャリアをスタートした。2022年途中、23歳の若さで名門の正GKの座を掴むと、その後現在に至るまで不動の守護神として君臨。2025シーズンには鹿島の9年ぶり9度目のJ1制覇に貢献し、見事最優秀選手賞にも輝いた逸材だ。現在の日本代表では、セリエA・パルマでプレーする鈴木彩艶に次ぐ立ち位置だが、虎視眈々と出場の機会を伺っている。早川の最大の特徴は安定感抜群のシュートストップだ。対シュートの局面で必要なすべての技術を高水準で装備し、決定機阻止はもちろん、ムラのないプレーでチームに安定感をもたらす。そんな高水準のプレーを可能にさせているのが、「①的確な予測」とそれに伴う「②質の高い準備」だ。
cm単位の微調整が生むビッグセーブ
GKのプレーを評する際、「反応が早い」という表現が頻繁に使われる。確かに、鋭いシュートに対してコンマ1秒でも早く反応しボールにアプローチするのは重要な能力だ。だが、この「反応が早い」という言葉は、しばしば「反射神経が良い」ことと混同されがちだ。2つの言葉の意味は、似ているようで実は微妙に異なる。実際に、早川の反射神経は素晴らしい。しかし、相手のシュートに対して毎回打たれてから反応していたのでは、あれだけの反応速度と安定感は生まれない。そこで鍵となるのが、上記した「予測」と「準備」である。
失点を減らすために、GKが最初にすべきことは的確なコーチングだ。マイボール時からボールを奪われたシチュエーションを想定して味方のDFラインに声をかけ、バランスを整える。相手がボールを持って自陣に進行してきた際も、毎秒変わる状況に合わせて味方の位置を調整。DFの視野外の相手選手の動き等も把握しながら修正点を瞬時に伝え、まずは極力シュートを打たせないよう、そしてより早い段階でピンチの芽を摘めるよう働きかける。また、DFラインの裏に送り込んできたボールに対してはGK自らペナルティエリア外まで飛び出してクリアするなど、できる限りグローブを汚さずにプレーできればベストだ。
とは言え、90分間のうちに自陣ゴール前に進入され、シュートを打たれてしまう場面も当然何度かは生まれてくる。勝敗の分かれ目にもなり得るその瞬間こそが、早川の見せ場だ。
基本的にサッカーのGKは、ゴールの中心とボールを結んだ直線上にポジションを取る。真ん中に立つことで、左右どちらに飛んできたシュートにも均等にアプローチすることができるからだ。
また、相手シューターの体勢や味方DFの寄せ方、角度、利き脚か否か、ゴールまでの距離等によっても最適なポジションは微妙に変わる。刻一刻と変化するゴール前の状況を読み取り、最終的にシュートを打たれる場所とタイミングを予測し、頭の中でより解像度の高いイメージを作りながら、常にベストなポジションを取る。そして安定した構えから瞬間的にプレジャンプ(初動をより早くするための予備動作的小ジャンプ。テニスプレイヤーなども使用する)を入れ、打たれる瞬間、左右両足に均等に体重が乗るように着地。ほんの一瞬静止したところから、ボールの着弾地点へ最短でアプローチする。指先でギリギリ軌道を変えるようなビッグセーブも、ポジションがわずか数cmでもズレてしまっていては生まれない。この「予測」と「準備」の精度が抜群だからこそ、早川はJ1でも屈指のシュートストッパーとして君臨しているのだ。
上記の内容を踏まえて彼のセーブ集をご覧いただければ、その質の高さを改めて感じていただけるだろう。下記の動画の2:25から始まる川崎フロンターレ戦でのセーブなどは、まさしくcm単位の細かいポジション修正があったからこそ生まれたビッグプレーだった。
最後の最後まで“基準”を上げ、自身初のW杯本大会へ
キャリア初となるW杯本大会に向けた調整も順調だ。「ゲーム形式はもちろん、シュート練習にしてもそうですけど、やっぱりみんな1つ1つの質が高いです。打つ直前まで駆け引きをしながら、GKが止めにくいタイミング、コースを狙ってくるので。しっかりそのイメージに合わせるのはもちろんですけど、打たれる瞬間の自分の姿勢や立ち位置の微調整だったり、プレジャンプのタイミングやセービングのフォームまで、本当に細部までこだわって質を上げています。充実感はかなりあるので、“上の基準”に合わせながら自分の基準もさらに上げていきたいです」
先月31日(日)に国立競技場で行われたアイスランド代表との試合では、後半38分に鈴木と代わってピッチに立った。スコアレスでの途中出場というGKにとってはかなり難しい局面での投入だったが、「練習から緊張感を持って取り組めているので、いつも通りプレーできました」と手応えを口にした。
「途中出場は人生初でしたけど、本大会でもそういう場面が来るかもしれないので。外から試合を見ながらゲームの状況、流れを読んで入ることが大事になると思うので、良いシミュレーションになりました。GK3人での競争はもちろんある中で、互いに良い関係性を持ちながら切磋琢磨できているので、いつ出番が来てもいいように準備していきたいと思います」
世界の強豪と鎬を削るW杯は総力戦だ。特に今大会は参加チーム数・試合数が増えたことで、より多くの選手に出番が回ってくる可能性も高い。確かな成長を続けている早川の存在は、鈴木彩艶が君臨する中でもチームに確かな安心感をもたらしてくれるはずだ。
夢見ていたW杯の舞台へ。
取材・文/福田 悠 撮影/藤田真郷
【福田悠】
フリーライターとして雑誌、Webメディアに寄稿。サッカー、フットサル、芸能を中心に執筆する傍ら、MC業もこなす。2020年からABEMA Fリーグ中継(フットサル)の実況も務め、毎シーズン50試合以上を担当。2022年からはJ3·SC相模原のスタジアムMCも務めている。自身もフットサルの現役競技者で、東京都フットサルリーグ1部DREAM futsal parkでゴレイロとしてプレー(@yu_fukuda1129)
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