現地8日(日本時間9日)に行われたドジャース対ロッキーズは、ドジャースが4-3で勝利。1番・指名打者で出場した大谷翔平が4打数無安打に終わる中、先発した佐々木朗希は6回4安打3失点とクオリティースタートを記録し、チームの3連戦勝ち越しに貢献した。

3点リードを失っても崩れず示した粘り強さ

佐々木朗希、2被弾以上で「ドジャース5戦5勝」の珍現象…“打...の画像はこちら >>
 6回3失点という結果だけを見れば、快投と呼ぶには物足りない。3点の援護を受けながら早々に追いつかれ、ドジャースが楽に勝てたはずの試合を、自ら難しくした面もあった。

 立ち上がりは申し分なかった。初回に投じた6球にボール球はなく、いいテンポで三者凡退に抑えた。その流れを受けたドジャース打線がすかさず3点を先制する理想的な形で初回の攻防を終えた。

 ところが、試合はすぐに振り出しに戻る。佐々木は2回に2本のソロ本塁打を浴びると、3回には四球をきっかけに犠飛を許し、3点のリードをわずか2イニングで吐き出した。

 この日の佐々木は、そこで崩れなかった。4回には無死二、三塁という絶体絶命のピンチを背負ったが、2者連続三振と右飛で無失点。5~6回は走者を出さず、最後は9人の打者を連続で退けた。

 ロバーツ監督も4回の投球について「戦うか逃げるかの極限のモードに入っていた」と評価。追いつかれた後に踏みとどまれたことが、この日の佐々木にとって最大の収穫だったのかもしれない。

「2被弾以上で5戦5勝」という不思議なデータ

 ここで、実に奇妙な数字が浮かび上がる。

 今季、佐々木が2本以上の本塁打を浴びた試合で、ドジャースは5戦5勝。
反対に、被本塁打が1本だけだった試合は7戦7敗で、被弾なしの試合では3勝1敗となっている。

 もちろん、「2本以上打たれれば勝てる」という話ではない。被本塁打ゼロが投手にとっての理想形であり、この日も2回の2発がなければ、ドジャースはもっと楽に試合を進められただろう。

 そもそも、チームの勝敗は先発投手だけで決まらない。佐々木が大量失点した後に打線が逆転した試合も含まれており、「2被弾以上」と「5戦5勝」に直接的な因果関係があるとは言いにくい。

勝敗を分けるカギは「ストライク率」

 とはいえ、この摩訶不思議なデータから見えてくるものもある。佐々木が本塁打を浴びた試合の中には、四球を恐れてストライクゾーンから逃げるのではなく、自分の球で打者に向かっていった登板も少なくない。

 その傾向を表しているのが、試合ごとのストライク率である。

 ロッキーズ戦では78球中56球がストライクで、ストライク率は71.8%に上った。今季、佐々木のストライク率が70%以上だった試合で、ドジャースは4戦4勝となっている。60%台では4勝3敗、60%未満では5戦全敗と、わかりやすい傾向が残っている。

 この数字だけで勝敗を佐々木一人に結びつけることはできないが、ストライクを先行させられた日は投球のテンポが良くなり、余計な走者を背負う場面も減る。少なくとも、ゾーン内で勝負できているかどうかは、試合を作るうえで重要な指標になっているのではないだろうか。


 この日の初回は、その象徴だった。6球すべてストライクで相手の攻撃を終わらせると、直後に味方が3点を先制した。先発投手のテンポだけで得点が生まれるわけではないが、野手が守備から攻撃へ気持ち良く移れる流れは、決して無視できない。

「被弾を恐れず攻める姿勢」が今後の課題に

 一方、佐々木が苦しむ日のパターンもわかりやすい。ボールが先行して走者をため、カウントを取りにいった球を痛打される。どれだけ球威があっても、四球で自ら球数を増やせば、長いイニングを任されるのは難しくなる。

 ロッキーズ戦の2被弾は、間違いなく修正すべき課題である。それでも、全体ではストライクを先行させ、四球は1つだけ。3点差を追いつかれた直後のピンチをしのぎ、6回まで投げ切った点には前向きな変化が見えた。

 一発を浴びても構わないという意味ではない。最も望ましいのは、ストライクゾーンで勝負しながら、本塁打も許さない投球に違いない。

 一発を警戒するあまりゾーンが狭くなり、四球を重ねて早い回で降板するよりは、自分の球を信じて打者と勝負する方が再現性は高い。佐々木が目指すべきは「被弾か四球か」の二者択一ではなく、攻める姿勢を保ったまま甘い球を減らすことだろう。


後半戦へ求められる真の進化

 今季は前半戦の折り返し地点で16試合に先発し、3勝5敗、防御率は5.33。昨季は故障離脱もあり、レギュラーシーズンでは10試合、36回1/3にとどまり、1勝1敗、防御率4.46だった。

 登板数と投球回を伸ばし、先発ローテーションの一角として投げ続けている点は明確な前進といえる。その一方で、防御率は昨季を上回り、ここ7登板は白星からも遠ざかっている。メジャー屈指の素材に寄せられる期待を考えれば、前半戦の数字には物足りなさが残るのも事実だろう。

 佐々木自身も試合後、「数字で見たら満足いくものはもちろん1つもない」と厳しく振り返った。一方で、先発ローテーションに穴をあけず投げてきたことや、シーズン途中から直球の球速が安定してきたことには手応えを示している。

 後半戦で求められるのは、単に被弾を恐れて慎重になることではない。ロッキーズ戦で示した高いストライク率を維持しながら、甘く入る球を減らし、被本塁打ゼロの登板を増やしていく必要がある。

「2被弾以上で5戦5勝」という珍記録は、あくまで途中経過にすぎない。最終的には、この数字が話題にならなくなるほど、ストライクゾーンで押し込み、なおかつ一発も許さない登板を増やしたいところだろう。

 成績自体はまだ満足できる水準にはないが、この日の6回3失点には、傷を負っても試合を壊さない粘りがあった。
その経験を「被弾なしの快投」へ変えられるかどうかが、佐々木の後半戦を占うことになりそうだ。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
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