こんにちは、シューフィッターの佐藤靖青(旧・こまつ)です。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。

「高いブランド靴なら安心」「軽ければ子供も歩きやすい」「どうせすぐ成長するから大きめを」

子供の靴を選ぶとき、こんな基準で選んでいませんか?

実はこの3つ、どれもおすすめできません。場合によっては、1万円を超える有名ブランドの子供靴より、数千円の靴の方がはるかに実用的なこともあります。

まもなく8月。夏休みに入り、新学期に向けて子供の靴を買い替える家庭も多いでしょう。今回はシューフィッターの立場から、「子供に履かせたくない靴」と、その見分け方を解説します。

NG子供靴①大人スニーカーの「ミニチュア版」

「1万円超でもおすすめできない」シューフィッター目線で“子供...の画像はこちら >>
ナイキやアディダスの直営店やセレクトショップによくあるパターン。

ナイキ「エアジョーダン1」など、大人に人気のスニーカーのミニチュア版は、子供靴でも1万円以上することもありますが、「走れる靴」ではありません。厳密には「ファッションシューズ」としてはアリですが、実用性がない、といった方が正確です。

大人用のシルエットを崩さないように無理やり各パーツを縮小していますが、共通して致命的なのが履き口の狭さ。ここが窮屈で、脱ぎ履きしづらかったり、足を入れたときに圧迫感が出たりするモデルがあります。もちろん面ファスナーなどに改変されているなら良いのですが、サイズはちょうどいいのになぜか子供が履くのをいやがる場合、ベロが足首に刺さっていることがよくあります。キズにもならず、赤くもならないので気づきにくいのですが、神経を圧迫してしびれている可能性があるのです。

逆におなじ大人スニーカーの「ミニチュア版」でも、完全に子供の足の成長を考えているモデルがこちら。


「1万円超でもおすすめできない」シューフィッター目線で“子供に履かせたくない靴”3選
ナイキ「フリーライド」。写真は公式HPより
「1万円超でもおすすめできない」シューフィッター目線で“子供に履かせたくない靴”3選
足裏やつま先が自由に曲がる。写真は公式HPより
ナイキ「フリーライド」です。足裏、とくにつま先側が自由に曲がるので、子供が走ったり遊んだりするときの足の動きを邪魔しにくい設計。もしフリーライドと子供用のジョーダンが一緒に並んでいたら、足首周りの広さをぜひ見比べてみてください。大人の指一本分くらいはちがうはずです。「見せる靴」と「使える靴」はちがいます。高い靴=いい靴ではないのは子供靴の世界でも同じです。

NG子供靴②異常に軽すぎる靴


「1万円超でもおすすめできない」シューフィッター目線で“子供に履かせたくない靴”3選
某メーカーの子供靴の裏。滑り止めがないので転びやすい
手に持った瞬間、「えっ」とびっくりするような靴も要注意です。たとえ有名なメーカー品であっても、靴底の裏の滑り止めをすべて端折っているケースがよくあります。

某メーカーの子供靴は一見、凸凹があって滑りづらそうに見えても、ミッドソールというクッション材がむき出しなので、濡れた路面では転びやすい。砂に覆われている学校のグラウンドでも滑るでしょう。メーカーとしては、①材料費のカット、②軽い=売れる、③ショップで試し履き程度ではバレないので、悪魔的においしい設計なのですが、親がストップをかけてください。滑り止めがない分すり減るのも異常に早いので、ワンシーズンで履けなくなるケースも多々あります。

「1万円超でもおすすめできない」シューフィッター目線で“子供に履かせたくない靴”3選
こちらが正解。アシックス「レーザービーム」。上下の写真は同じ店で許可を得て撮影したもの
一方、アシックスの「レーザービーム」は、良心的価格(※実売価格は3000~6000円程度)のわりに手抜きは一切ありません。


同じ店の同じ棚に、この2足が並んでいるのです。価格もほとんど変わらないどころか、アシックスの方が千円ほど安かったのですが、消費者にとっては罠でしかありません。裏をひっくり返しても「まっしろ」な靴は要注意です。

NG子供靴③「すぐ成長するから」と大きすぎる靴

子供の足は本当にすぐ大きくなりますよね。私にも子供がいますが、小学生のときは最低1年に1回、成長期まっさかりの時には1年に2回買い替えていたときがありました。ワラジの世の中ならどんなに良かったのに……と、複雑な心境だったのをよく覚えています。とはいえ、先取りして大きすぎる靴を選ぶのは、いいことが何もありません。まず、思った以上に早く壊れます(実体験です)。どれだけバンドをきつく締めても、子供の運動量では結局足が中で遊んでしまい、つまずく、引きずるの繰り返しで、半年も持ちませんでした。

とはいえ、「適正サイズ」もわかりづらいのが子供靴。ベストはインソールを抜いて、子供の足をのせて「人差し指一本分」の余裕があるのを目視で確認することです。

「1万円超でもおすすめできない」シューフィッター目線で“子供に履かせたくない靴”3選
筆者私物
かかと側はきちんと端にあわせて、子供の指先は伸ばして確認してください。
この方法なら測定器がなくても、メーカーによってサイズ感がバラバラでもかなり有効です。

……ということは、インソールが抜けない靴はNGとも言えます。

値段に関係なく、本当に子供の足を考えているメーカーの靴は、ひとしくインソールが抜けるようになっています。接着されているメーカーは避けた方がベター。いくら靴の上からさわろうが、AI搭載のマシーンで計ろうが、目視には勝てません。靴を試すときに緊張したりふざけて指先をぎゅっと縮めてしまうお子さんは珍しくありません。

夏休みは、子供の靴を見直す絶好のタイミングです。新学期が始まる前に、一度お子さんの靴を手に取ってみてください。

「有名ブランドだから」「軽いから」「すぐ大きくなるから大きめを」。どれも親心からの選択でしょうが、子供にとって本当にいい靴とは限りません。

まずは今履いている靴のインソールを抜いて、足をのせてみる。それだけでも十分です。
高い靴より、子供の足に合っていて、思いっきり走れる靴。それが一番の「いい靴」です。

<文/佐藤靖青>

【シューフィッター佐藤靖青】
イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます『シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)@毎日靴ブログ』。著書『予約の取れないシューフィッターが教える正しい靴の選びかた』
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